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29話 メスガキ敗北編


 

 ……って、今は後悔なんてしてる場合じゃなかったわ!! 

 2人とも今にも動き出しそうな雰囲気だし、先ずはなんとか落ち着かせないと!!


 

 リアとメロの殺気で我に帰った俺はこれから自分が何をするべきかを急いで考える。


 

 と、とりあえず話し合いに持っていこう!! 

 そうだよ、仮にメロが本物の魔王だったとしても何も殺す合いする必要はないじゃないか!! 

 メロがこの世界を滅ぼそうとしてる事だって本当かどうか分からないんだしな!!

 

 

「な、なぁ。 2人とも一旦落ち着いて俺の話を聞いてくれないか?? 

 例え俺達が敵同士だったとしてもいきなり殺し合いをするなんてナンセンスだろ??」

 

 俺は出来るだけ声を落ち着かせて2人へ話しかけた。

 

「……まぁ、お兄ちゃんがそう言うなら私は別に良いわよ。 

 こんな奴その気になればいつでもやっつけられるから!!」

 

 リアを指差しメロは挑発する様な笑みを浮かべてそう言い放つ。

 


 よ、良かった。 態度はどうあれメロが納得してくれるなら話は早いな。 

 リアなら俺の話を聞いてくれるだろうし、あいつも本心ではこんな事したくはないだろうからな。

 


 良しっ、そうと決まれば早速っ。


 

「……残念じゃがまどかよ、それは無理な相談じゃな。 

 この後に及んで話し合いなどに意味ないのぅ、我は今ここで確実にこの娘を殺すつもりじゃからな」

 

「「なっ!!」」

 

 リアから出た思わね言葉に俺とメロは同時に声を出した。

 

「な、何言ってるんだよリア!!」

 

「何って……我からしたらまどかこそ何を言っておるのじゃ?? 

 此奴は地球を滅ぼしに来たんじゃぞ?? ならばもう戦いは避けられないではないか。 

 それともなんじゃ?? まどかにはこの娘を殺す以外に世界を救う妙案でもあるのか??」

 

「そ、それはっ……まだわからない。

 だけど殺し合いなんてっ」

 

「ふふっ、もう良いわ、そこを退いてお兄ちゃん。 確かにその女の言うと通りだもん。 私はこの星を壊しに来た、そしてそれを諦める事なんてしないわ、何があってもね。 

 ね?? お互い妥協点がないの、そうなったらもうっ」

 

 俺の言葉を遮ったメロは、再び視線をリアへと向ける。

 

 その黄色い瞳にはもう俺の姿は移っていなかった。

 


 う、嘘だろ?? リアの奴、本当にメロを殺すつもりなのか?? 

 いや、もしかしたら逆の可能性だってある……メロがリアを殺す結果だって。

 

 思わず想像してしまう最悪の展開に、俺の足は勝手に後退してしまう。

 


 そしてその瞬間を待っていたかの様にメロはリアに向かって駆け寄って行った。

 

 

「殺すっ!!」

 

 

 リアの前に辿り着くと同時にメロはその腕を大きく振りかぶり、その拳をリアへ向ける。

 

 

 ダ、ダメだ!! やっぱりこんなの絶対にダメだ!! 動け!! 動け俺の足!! 

 でも魔王の全力パンチなんて受けたら最悪俺が死ぬ事になるかも知れない……い、いや、そんな小さい事を今は考えてる場合じゃねぇーだろ!!


 後退りしてしまった足をなんとか前に出し、俺は急いでメロの前へと立ち塞がった。

 


「なっ!!」

 

「お、お兄ちゃん!!」

 

 

 2人とも想像していなかった展開なのか、リアとメロの驚いた声が俺の耳に響く。

 

 そして同時にメロの渾身の拳が俺の脇腹に到達する。

 

「うぐぅ……」

 

「な、なんで出てきたのよ!! 私の本気のパンチをお兄ちゃんが受け止めれるわけないじゃない!! 

 ……死の呪いを掛けてるのよ?? あと数秒で死んじゃうんだよ??」

 

 俺の目の前でメロが泣きそうな顔を浮かべて話す。

 

「……しょうがねぇだろ、身体が勝手に動いちまったんだから。 クソっ、後は任せたぜ3人とも。 

 頼むから殺し合いなんて馬鹿な事しないでくれよ」

 

「まどかさんっ!!」


「ダーリン!!」



 あぁ、俺の人生ももう直ぐ終わりか。 

 

 まぁ最後の方は少しは格好良い所を見せる事が出来たのかもな。

 

 俺はその場に倒れて、ゆっくりと目を瞑った。

 

 

 

 



 

 

 ……あれ?? 結構時間経ったよね?? おかしくない?? なんで俺死んでないの?? 

 

 場が静寂に包まれてから明らかに1分以上経過した後、いつまでも失われない自分の意識に俺は困惑し始めていた。

 


 えっーと?? 何これ?? 立ち上がっても良いのかな?? それともまだ時間が来てないだけ?? 

 立ち上がった瞬間に死ぬとかってやつ??

 やだよ、そんなのめちゃくちゃ恥ずかしいじゃん!!

 



「……はぁー、まどかよ。 いつまでそうしてるつもりじゃ」

 

 そんな俺の気持ちを察してかリアは呆れた口調で話す。

 

「な、何言ってるのよ!! お兄ちゃんはもう死んでるわ……貴方も見てたでしょ、私の攻撃が綺麗に決まったのを!!」

 

「うるさいのぅ。 我はお主には話しかけてないわ、そこで寝転んでる馬鹿者に聞いてるんじゃ。 

 おい、まどかよ!! 後2秒で立ち上がらねばベットの下にある本を燃やすぞ!!」

 

「お、おいおい!! ちょっと待て!! あれは結構レア物で……ってなんでリアがそんな事知ってるんだよ!! あっ」

 

 リアの言葉に俺は反射的に立ち上がってしまった。

 

 クソっ、思わず立っちゃったじゃなぇーか。 どうすんだよ、これ。 今から急に死んだらめちゃくちゃ格好悪いじゃねぇーか!!

 既に結衣ちゃんとルカの目が痛いんだぞ!! 死ぬ時くらいは格好つけても良いだろ!!



「……えっ?? ど、どうして?? なんでお兄ちゃんが??」

 


 俺の立ち上がった姿を見たメロは驚きを隠す事なく目を丸くして小さく呟く。

 


「くくくっ。 どうしてじゃと?? そんなもの当然ではないか。 お主の魔法陣をもう一度見て見るが良い」

 

「魔法陣?? ……なっ、何よこれ!!

 なんで私の魔法が発動してないのよ!!」


 メロは自分の手の平を確認した後、驚嘆の声を漏らす。

 

「あ、ありえない!! 一体どうして?? 昨日までは確かにっ」

 

「だから言ったじゃろう?? お主なんぞに我を殺す事など出来ぬとな。 

 今やお主の魔力操作はこの空間では発動できぬ、くくっ不用意に我の城に足を踏み込んだのが運の尽きじゃな。 

 昨日までは……などと悠長な事を言っておるからそうなるのじゃ。 

 我を甘く見たな小娘よ、時間を与えすぎじゃ」

 

 口角を上げどこか嬉々とした表情をリアが見せる。

 

 

 さ、さっきルカと話してた時間稼ぎってこの事だったのか!!……ってかだったら先に言ってよ。


 めちゃくちゃ恥ずかしい事してたじゃん俺……うん、突っ込まれると恥ずかしいから今は黙っとこう。

 

 

「ま、魔力操作が出来ないですって?? そんな訳ないじゃない!! 馬鹿にしないで!!」

 

 そう言うとメロは何度か聞き取れない言葉を叫び始める。

 


 だけど、その言葉の後に何かが起こる気配は全く無かった。

 

 

「う、嘘でしょ?? そんな訳ないじゃない、私は女王なのよ?? 

 それにこんな高度な魔法結界をあんな奴が作れる訳ないじゃない。 

 そうよ、おそらくこれは精神系の魔法攻撃の一種……騙されちゃダメ。 

 私が、私が負ける訳ない、絶対に負けないんだから」

 


 涙声になりながらもメロは自分を鼓舞する様に繰り返し呟いていた。

 


 

 な、なんだか可哀想になってきたな、ちょっと前の自分を見てるみたいで胸が痛いわ。 

 それにしても相変わらずのチートっぷりだな、この魔女。

 

 

「無駄じゃ。 さっきも言ったじゃろ?? お主は我に時間を与えすぎたと。 お主が淫魔だと分かった時点で我の勝ちじゃ。 

 それにしても魔王の正体が淫魔であったとはな、我としては助かったもんじゃ。 淫魔についてはお主の国に遊びに行った時に研究し尽くしたからのぅ」

 


「け、研究……遊びですって?? 嘘よ、私の国は絶対に部外者を入れたりっ……あ、貴方名前は??」

 

 完全に怯えた表情でメロは尋ねる。

 

「リア・リス……いや、お主らの国に行った時の名はリミス・リリンじゃったかのぅ??」

 

「……リ、リミス」

 

 その名を口にするとメロは腰を抜かし、その場にしゃがみ込みながらか細い声で続ける。

 


「も、もしかしてあの淫魔1000体狩りのリミス??」


 

 えっ?? 1000体狩り?? 淫魔を?? な、何してんだよリア、そんな羨まっ……いや、そんな酷い事を。 

 ってか前に他の世界のパワーバランスを崩さない様にしてたとか言ってたよね?? 1000体って!!

 めちゃくちゃ干渉してんじゃん!!


 ……この件だけは後で徹底追及しなきゃ。 

 ほら、仲間として一体どんな干渉をしたのか気になるしな。



「かかっ!! 随分と昔の事なのによく知っとるのぅ、黄身姫よ。 博識じゃな、偉いぞ」

 

 そんな俺の思いなど露知らず、リアはゆっくりとメロの元へと近付く。

 

「ひっ!! ち、近づかないで!! いや!! 来ないでっ!! 近付いたら殺してやるんだから!!」

 


 腰が抜けて立てないメロは身体を大きく逸らして、震えた声を漏らしていた。

 


「ふむ、魔法を使えぬお主がどうやって我を殺すのか逆に興味があるのぅ。 

 とっておきがあるなら出し惜しみはしない方が良いぞ?? ほれ、我を楽しませてみろ」




 ………どっちが魔王かわからなくなったなこれ。 

 


 

 心配していたリアとメロの殺し合いはお互いに一撃も入れる事なく、気が付けばまるで俺のベットの下にある薄い本の様な展開になっていた。

 

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