25-2話 いっそ殺してくれ
「先ずはそうじゃな……まどかも知っての通り、我らはあの後勇者に着いて行ったじゃろ??」
「えっ?? あぁ、一緒に魔王を倒す為にだよな」
「ふむ、その通りじゃ、どうやら本当に覚えているみたいじゃな。
道中の詳しい経緯は省いて結果から先に言う。
我らは魔王の軍勢を見つめる事に成功し、ここ1週間程は激しい戦闘状態だったのじゃ」
そ、そうだったのか……クソっ、そんなことも知らないで俺はっ!!
「つまりそいつらに青蜜はやられたのか??」
「……うむ、そうじゃな」
俺のせいだ……俺があの時、青蜜達を勇者について行かせたから。
「……先に言っておくが、お主が責任を感じる事はないぞ」
俺の気持ちを察してかリアは言葉に力を込めて続ける。
「元々勝てる見込みのある勝負じゃったのじゃ!! 青っ子がやられたのは我の油断じゃった!!
確かに魔王と呼ばれているだけあって戦力的は向こうが有利じゃったが、彼奴らの戦い方には理性が感じられなかったからな!!
その動きは直線的で馬鹿みたいに突っ込んで来るだけじゃったから、戦いとしてはかなり楽じゃった……それなのにっ」
「リアだけの所為じゃないわ。
あの時はみんな同じ事を考えてたもの……それこそブルーちゃんもね。
私達は罠に嵌まったのよ、あいつらは私達が思ってた程、馬鹿じゃなかった。
それを見抜けなかったから負けたのよ」
リアの話に今度はルカが加わる。
結衣ちゃんと同じく2人とも表情は曇っていて、今でも自分を責めている様だった。
「相手には切り札があったって事か」
リアやルカの予想を裏切り、結衣ちゃんがいる状況であの青蜜を倒したんだ。
きっと特別な何かがあったのだろう。
……この4人が負けるなんてそれくらいしか思いつかないもんな。
「いいえ、ダーリン。
向こうはただ単に戦術を変えてきただけなの。
それもとても簡単な事だったわ、あいつらは……ブルーちゃんを全力で倒す事に専念し始めたのよ」
「……えっ??」
何処かで聞いた事がある様なその話に俺は思わず声が出てしまう。
……いや、聞いた事があるんじゃなくて言った事があるだったわ。
で、でもあっちは唯のゲームって言ってたしな!!
多分の俺の勘違いだろ、大体俺が言ったのは昨日の夜だぞ??
青蜜が一晩でやられる訳ないし、そんな馬鹿みたいな話がそうそうあるとは思えないからな。
「そうよね、ダーリンが驚くのも無理にないわ。
そんな単純な事で私達がやられるなんて信じられないとも思ってるわよね……それも当然だと思う。
不甲斐なくて本当にごめんなさい!!
さっきも言ったけど私達は完全に油断してた。
2週間の間ずっと同じ様に戦ってたから昨日も敵は同じ様に攻めてくるとばっかり……」
昨日?? えっ?? これって昨日の話なの……なんか信じられない位の汗が出てきたんだが。
パンツがびしゃびしゃなんだがっ!!
「……リアさんやルカさんのせいではありません。
全部私が悪いんです!! 私が最初に配置を決めて戦いましょうなんて変な事を言ったから!!
だからあかねちゃんが1人で戦ってる時に直ぐに応援に行けなかったんです!!
私が側にいれば直ぐに助けられたのにっ!!」
「よせ、お主のせいでは無いと何度も言っておるじゃろ。
これは我ら全員の失態なのじゃ。
全勢力を青っ子1人に向ける……考えてみれば当然の戦略じゃった。
我らの中で最も崩しやすいのは青っ子であるからな。
問題はそんな簡単な事を思いつかなかった我らの愚かさじゃ。
相手は魔王軍、正々堂々なんて元より有り得なかったのじゃ。
悔しいが……我らはずっと踊らされていたのじゃ」
リアが力なくそう言うと、結衣ちゃんもルカも続きを話す事はしなかった。
全然頭に話が入って来ない……謝られる度に刃物が身体に食い込んでる気がしてるんだよね。
ち、ちょっと一回整理しようか。
うん、混乱してるだけだよな!!
場が静かになった事もあり、俺は一旦
呼吸を整えて心を落ち着かせる。
ふぅー……さてとみんなの話を整理すると、魔物軍は最初はフェアプレーだったけど昨日になっていきなり全勢力で青蜜1人を倒す事に狙いを切り替えたって事ね。
で、結果的に青蜜を昏睡状態にする事に成功して3人を撤退させたって事か。
………うん、これさ、多分俺のせいだよね。
って多分じゃねぇーわ!! 絶対俺のせいじゃん!!
絶対あのメロのゲームのせいじゃん!!
魔王軍完全に俺の言う通りに動いてるもん!! そう言えばメロも言ってたわ!!
『黒い子は火力ある』とか『青い子なら倒せそう』とか!!
それってまんま結衣ちゃんと青蜜だもんね!!
いや、正直ちょっとそれも考えたけどね!! なんかイメージカラーがみんなに似てるとは思ってたし!!
でもさ、ゲームだったじゃん!! まさか現実世界にリンクしてるなんて思わないじゃん!!
なんでこんな事に……いっそ俺なんて居ない方がマシなレベルじゃんか。
止まらない汗を手で拭いながら、俺はひたすら言い訳を考え始めていた。




