23話 家出少女の悩み〜いっぺん聞いてみる??〜
「なぁ、メロは日本人じゃないのか??」
「違うよー」
あっ、やっぱり違うのか。 まぁ名前からして違うもんな。
「どこの出身なんだ??」
「教えなーい」
「そ、そうか、あっ! 年齢はいくつになるんだ??」
「ひみつー」
……うん、気のせいだったわ。 前言撤回、全然俺の質問に答えてくれる気なかったみたい。
と、とは言ってもこのまま何もわからないままだと俺も困るもんな、続けるしかないか。
一旦呼吸を整えたのち、俺は再度メロへと話を振る。
「はぁー、まぁ良いや。 じゃあさっきの話だけど、メロは知り合いが居ないって言ってただろ?? あれはどう言う意味だ??」
「そのままの意味だけど??」
「いや、親は居ないのか?? 他にも友達とか彼氏とかさ」
「居るけど……でも近くには居ないの。 だから心配しないで、私の知り合いがここに辿り着く可能性なんてないから」
メロはそう答えると先程と同様に何処か悲しげな表情を浮かべていた。
……あんまり踏み込んだ話は聞かない方が良いのかもな。
多分だけどメロは家出してきたんじゃないかな??
それなら公園にいた理由も、見ず知らずの俺の家に付いて来た理由も納得は出来るもんな。
さてどうしたもんかな、家出少女をこのまま匿って置く訳にも行かないからな。
本来ならここは警察に相談した方が良いんだろうけど、メロが素直に言う事を聞いてくれるとは思えないし……とりあえず今日はこのままにするか。
明日になったら俺が1人で相談しに行こう。
メロだって今日1日頭を冷やせば帰りたいって思うかも知れないからな。
「ねぇ、急に黙ってるけど何考えてるの?? 私を襲うシュミレーションとかしてるわけ??」
「そんな訳ないだろ?? 別に何も考えてないよ」
さっきの会話で完全に理性を取り戻したからな。
「流石の俺でも家出少女に手を出さないよ、自暴自棄になる時って思春期には良くある事だからな。
ここは大人の俺が優しくしてあげるタイミングなのさ」
「ふーん……お兄さんって結構優しいのね」
……声に出てたか、まぁ今回のはそこまで悪くないから良いけど。
「ま、まぁそう言う事だからなんか困った事があるなら他にも相談しても良いぞ。
役に立つかは分かんないけど、話を聞くのは割と得意だからな」
俺が異世界で鍛えられた事と言えばこれくらいだしな。
「困った事かぁ」
そう言うとメロは顎に手を当て目を閉じる。
やっぱり悩みとかあるんだろうな、どんなに可愛い子でも悩みがあるのは青蜜と結衣ちゃんで実証済みだからな。
……いや、あいつらの悩みはまた特殊か、なんて言ったってヒーローとおっぱいだし。
少しの時間が経った後、メロは何かを思い付いたのか勢い良く目を開いた。
「実はね、今少しだけ悩んでる事があるの」
「どんな悩みなんだ??」
中学生だしやっぱ人間関係かな?? 俺も悩んでたし……まぁ俺のは自業自得なんだけど。
「それがね、このゲームがなかなかクリア出来ないのよ」
うんうん、ゲームね、かなり青春を感じる悩みっ……。
「はぁ??」
「だからこのゲームに今ちょっと手間取ってるの!! ちょっと見てくれない??」
そう言うとメロは何処からか取り出したスマホの画面を俺に向ける。
ス、スマホ持ってたのか……いや、まぁそりゃ持ってるよな。 ってか悩みがスマホゲームの攻略って。
何で家出してるのこの子??
「この4体がなかなか手強くてね。 ボスまで辿り着けないのよ、何か良い方法ないかな??」
「えっ?? あー、んー……そうだなぁ」
メロが見せてきたスマホの画面は戦略ゲームなのか、マス目状に描かれた画面に敵と思われる4体が立ちはだかっていた。
……うーん、正直言って全くわからん。 そもそも何なんだこのゲーム、見た事もないんだけど。
それにゲーム自体全然やった事ないもんな、唯一の思い出は小学校の頃に対戦ゲームでサンドバックの役割くらいをしてたくらいだからな。
「何かわかる??」
俺の言葉に期待してか、メロは目を輝かせて訪ねてくる。
いや、ルールもわからないのに解決策なんて無理だろ……でもこの目は何かしらを期待してる目だ。
ここで何も答えなきゃ男じゃないな。
よ、よし!! いつもの様に何となくそれっぽい事を言おう。
うん、情けないけどそれが俺らしい答えだしな……情けないけどな!!
「そ、そうだな。 じゃあ先ずは質問なんだけど、この4体は相当強い敵なのか??」
「そうね……中には強いのも居るわ。
特にこの黒い子は厄介ね、火力だけなら過去一番かも」
「なるほど、敵によってタイプも違うって訳か。 因みに全員を倒さないと先には進めないのか??」
「基本はそうね。 まぁ1人倒せば全員まとめて逃げ出す可能性も少しはあるけど」
「ん?? じゃあとりあえずその中の1人を全力で倒せば良いんじゃないか??」
「それはっ……そうなんけど」
「え?? 何を迷ってるんだ?? 4体同時に倒すこだわりでもあるのか??」
「そう言う訳じゃないけど、なんかフェアじゃない気がして。 1人だけを狙うのってちょっとせこくないかな??」
「そうか?? 立派な戦術だろ?? 強い奴が倒せないなら弱い奴から倒しに行く!!
ゲームってそもそもそう言うものじゃないか。 最後のボスに勝てばクリアなんだから」
「えー、そんなものなの??」
メロは不服そうに頬を膨らませる。
なんだ?? 意外に真面目なのか??
「そう言うものって事で割り切るのも大切だよ。
で、この4体の中だとどいつか一番倒せそうなんだ??」
「……この青い子とかなら」
「じゃあ、それで決まりだな。 全勢力をそいつに向けなよ、それで無理だったらまた次の手を考えれば良いだけだしな」
「わ、分かったわ。 お兄さんがそんなに言うならそうして見る!! 結果は多分明日にはわかると思うからこの話はもうおしまい!!」
そう言ってメロは少しスマホを操作した後、そのままベットに横たわった。
なんか随分とあっさりとした悩みだったな。
それに全然大した事いってない気がするけど……。
まぁ、納得してくれたならそれでも良いか。
そもそも中学生がハマってるゲームだし、よく考えたらそんなに難しい事じゃなくて当然か。
「今日はもう寝るのか??」
「うん、なんか疲れたもの」
「そうか、じゃあ俺もそろそろ寝るとするかな」
「……おやすみ」
メロからの返事を聞いた俺は、ベットから立ち上がって寝る準備を始めた。
お風呂と歯磨きをいつもと同じ様に済ませ、押し入れから使ってない冬用の布団を取り出す。
ベットの上で横たわるメロは既に寝息を立てていた。
「改めて見ると、本当に可愛いなこの子」
……って、何考えてんだ俺は、もう寝よう。
寝顔を見て一瞬我を失いかけたが、何とか気を取り直り俺は床へと寝そべった。
明日は朝から警察に行って、その後は……またあの公園に行くか。
あの恐竜にも少し愛着が湧いてきたしな。
いつも噛みつかれてるからあんまりじっくりと見た事ないけど。
頭の中である程度の予定を立てながら俺はそのまま眠りについた。




