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21-2話 メスガキVS童貞脳内会議敗北録


「ねぇ、バスタオル取ってくれない??」

 

「風呂場にあるだろ?? 俺はちゃんと用意したぞ。 もっとしっかり探してみろよ」

 

「はぁー、馬鹿ね。 そんな事は知ってるわ。 その上で1枚じゃ足りないから言ってるのよ」


「何でだよ、普通に足りるだろ?? 

 むしろ俺としては洗濯物が増えるから出したく無いんだけど」

 

「うわぁ、小さい男ね。 良い?? 私が持って来てって言ってるんだからさっさと持って来るの!! 

 洗濯物を増やしたくないなら貴方が私が使ったバスタオル使えばそれで良いじゃない!! わかったら早くしてよね」

 

「……わかったよ。 今持ってくから浴室から出て来るんじゃねぇーぞ」

 

 ったく何だよ、お風呂に入りたいって言うからわざわざ掃除までして準備してやったのに文句ばっかり言いやがってさ。 

 大体ここは俺の家にだぞ?? はぁー、ちょっと可愛いからって偉そうにしやがって……まぁちょっとではないけど。

 

 不満を感じながらもお風呂場へと向かい、俺は少女に言われた通りに2枚目のバスタオルを目のつく所へと置いた。

 

 うわぁ、下着も脱ぎっぱなしかよ。 本当に子供だな、後でしっかり注意しなきゃな。

 

 少女が脱ぎ捨てた服を洗濯カゴに投げ入れ、さっきまで座っていた場所へと戻る。

 

「おい、バスタオル置いておいたからな。 あっ、出る時はちゃんと身体拭いてからにしろよ?? 床を濡れされるのは嫌だからな」

 

「もうわかってるわよ!! 子供扱いしないでよね、私はあんた何かよりずっと大人なんだから!!」

 

 はん、よく言うぜ、どこからどう見たって子供の身体つきじゃねぇーか。

 

 はぁー、それにしても本当に家まで付いて来るとはな。 

 しかも第一声に風呂に入れろなんて言うもんだから驚いたぜ。 まぁ、俺をからかってた訳じゃないって分かっただけで良しとするか。 

 さてと、じゃああの子がお風呂から出たらさっき言ってた良い事ってのを体験させて貰うのを待つとするっ……ん?? 

 

 

 座りながらコーヒーを飲んでいた俺の手が信じられないくらい震えている事に気付く。

 

 

 ……あれ、何やってんだ、俺??

 

 

 冷静に今の状況を思い返すと同時に俺の額と背中に大量の汗が滲み始める。

 

 

 ……おい、もしかして俺って相当やばい事してしまっているじゃないか?? 

 

 


 い、いやいや!! よく考えろ!! 俺が今日やってしまった事を客観的に見つめ直すんだ!! 

 そうすれば俺が悪くないのは証明される筈だろ??

 誰にでも分かってもらえる為にも詳しい経緯は省略して事実だけを考えろ、俺は何もしちゃいないさ!!

 


 えっーと……まず出会いはベンチでの膝枕だ、その後に初対面の年下の女の子を煽る形で部屋に連れ込んで、今はお風呂に入らせてる。 

 あっ、着替えが無いって言ったから俺の服も貸してあげる予定だったな。

 

 それからお風呂が終われば、約束通りに良い事ってのをして貰おうとしてて………うん、駄目だ、どう考えても俺が悪いわ。 

 

 


 くそっ!! そもそも中学生の少女を家に連れ込んだ時点で勝ち目なんて無かったわ!! 誰がどう見ても石を投げられるのは俺の方じゃん!!

 


 ……やべぇー、マジでどうするんだこの状況。 

 普段からのお約束で言えば、あの子がお風呂から上がってきた瞬間に両親が怒鳴り込んでくる最悪のパターンだぞ!! 

 そしたら俺は社会的に終わる!! 親父やお袋、それに青蜜達も加わってフルボッコにされるぞ!! 

 

 そうなったら社会的どころか生命の危機だぞ……な、なんとかして助かる道を今から考えないと!!

 


 ぐっしょりと濡れた頬を拭い、俺は目を閉じて集中した。

 

 

 

 

 お、おい!! どうするんだよ、この状況!! 

 元を辿ればお前らが大人の余裕を見せつけろとか意味わかんない事を言ったせいだぞ!!

 

 

 ……。

 

 

 いや、シカトしてんじゃねぇー!! 俺の脳内に住んでんだからこう言う時にも相談に乗れよ!! 

 

 

 ……。

 

 

 えっ?? マジで何もないの?? 何か良い案あるよね?? アニメで見る脳内会議ってさ、そんな直ぐに本体見捨てたりしないもんね??



 ……。 

 

 

 うーわ!! 何だよ、こいつら全然使えないじゃん!! 

 最悪だよ、だから嫌なんだよ童貞はっ!! 何が脳内会議だよ!! 二度と出て来るんじゃねぇーぞ!! 

 

 

 



「……いや、まぁ、そりゃそうだよね」

 


 うん、知ってたよ。 

 

 今までのも自分で考えてた事だもんな、いざって時に良い案なんて出る訳ないよな……だって全部俺なんだもん。

  

 童貞なのも俺だし、使えないのも俺だもん、責任を取るのもここにいる俺だけだもんな。


 



 ……クソっ、結局俺の一人負けじゃねぇーか。 まさか最後の最後まで最低な夏休みを送る事になるなんてさ!! 

「あぁーあ、また負けだよ!! メスガキに敗北したわ!! えぇ、認めますとも!! 心の何処かでわからせてやるって息巻いてましたよ!! だってあの子可愛かったんだもん!!」

 

 


「うわぁー、貴方正気なの?? 良くもそんな恥ずかしい事を大声で言えるわね……ま、まぁ褒め言葉として受け取ってあげても良いけど」

 


 ……こ、声に出てたか。 ってか久々過ぎて忘れてたわ、まだ生きてたんだなこのクソスキル。

 まぁもう何でも良いか、後は俺の想像通りの展開になるだろうしな。 

 

 俺は全てを諦めながら声がする方へと振り返った。

 

「……おい、なんで服来てないんだよ」

 

 お風呂上がりの火照った身体に湯気を纏いながら少女は悪びれもなく呟く。

 

「えっ?? あぁ、だって暑いじゃない」

 

「だったせめてバスタオルを巻いてっ……はっ!! やばい!!」

 

「な、何よどうしたのよ!!」

 

 俺は急いで立ち上がり、風呂場に残されたバスタオルを少女へと投げる。

 

「良いから急いでそれを巻いてろ!!」

 

 出来るだけ強めにそう言い残して玄関へと急いだ。

 

 い、いくら何でも全裸はまずい!! この子親だって全裸の娘を見るのは嫌な筈だ!!

 

 玄関に着いた俺は急いでドアの鍵を閉めた後、万が一に備えてドアチェーンをかける。

 

「こ、これで少しの時間稼ぎが出来るか」

 

「……へぇー、急に立ち上がって何をするかと思ったらまさか鍵をかけるなんてね。 

 貴方、私をどうしたのかしら??」

 

「うっ!!」

 

 後ろから響く少女とは思えない妖艶な声に俺の心臓は一気にその鼓動を早める。

 


 ど、どうしよう?? 確かに冷静になって考えるとこの行動はキモすぎるってか怖すぎたよな。 

 とはいえ正直に言った所で焼け石に水だろうしな……い、いや正直に言おう!! 

 ここまで来て嘘を重ねるのは愚の骨頂だ!! どうせ罪が軽くなる事なんてないもんな。

 


「べ、別にどうもしようとは考えてないよ。 急な話で申し訳ないが、俺は信じられない程に運が悪いんだよ。 

 神様にだって嫌われてるくらいにな。 

 だからもう直ぐここに誰かが訪ねて来ると思ったんだ、君か俺の知り合いのどちらかがね。 

 そうなったら君の裸をその人に見せる事になるだろう?? 

 それを避けたかっただけだよ」

 

 ……うん、自分でも何言ってんだか。 こんな酷い言い訳が通じるかよ。

 

「運が悪い?? 神様に嫌われてる?? ふ、ふふふっあははっ、貴方何言ってのよ。 馬鹿みたい」

 

 俺の意味不明な言い訳が余程面白かったのか、少女は身をかがめて笑い出した。

 

 まぁ、笑うよね。 俺も他人がこんな事言い出したら笑うし……でもその服装であんまり笑わないで欲しいわ。 

 そのっ、なんか色々見えそうになってるから。

 

「はぁー、おっかしい。 ふふっ、まぁでもそんなに心配しなくても大丈夫よ」

 

「何が大丈夫だよ。 良いか?? こんな所を君の知り合いに見られたら間違えなく俺はっ」

 

「私に知り合いなんていないわよ??」

 

「そうだろ?? だから見られたらっ……って」

 

 思いがけない少女の言葉に、俺はもう一度その目を見つめる。

 


「聞こえなかったの?? 私に知り合いなんて居ないわ、だからあんまり心配しない事ね。 

 わかったら早くリビングに戻りましょう。 ここは冷えるもの」

 

 

 そう言うと少女は背中を向けてゆっくりと歩き出す。

 

 


 その時の少女の特徴的な黄色い瞳は何故だか俺にはとても寂しそうに見えた。

     

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