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18-1話 俺自身がざまぁになる事だ

 

「ふっ、ふふふっ、それじゃあ何??

 私は散々調子に乗った挙句、勇者をボコってた訳??」

 

 乾いた笑いを織り交ぜながら、青蜜は小さく呟く。

 

「……あ、青蜜さん??」

 

「魔王と勘違いして勇者と戦うなんて馬鹿みたい。 しかもそのせいで地球が滅亡するかも知れないなんて!!」

 

 やばいな、青蜜が今にも壊れそうだわ。 誰が見ても情緒不安定だってわかるもん。

 

「ま、まぁ過ぎた事なんだし今更どうしようもないだろ?? それよりこれからどうするか考えないとっ」

 

「どうしようまどかちゃん!! 私……私、大変な事をしちゃった」

 

 俺の言葉を遮って青蜜は大声を出す。

 

 目には今にも溢れそうな程に涙が溜まっていた。

 

「青蜜……」

 

「私、最低だわ。 浮かれちゃって馬鹿みたい。 まどかちゃんに相談してればこんな事にならなかったかも知れないのに!! 

 それに戦ってる最中にも少しだけ違和感はあったの。 見た目は優しそうな男の子だったし、最初の方は本気を出してない様にも感じたもの」

 

「そ、それは青蜜の勘違いかもしれないだろ?? 誰にだって先入観を覆す事は難しいものだからな」

 

「でも相手の人は話し合いで解決したいとずっと言ってたわ。 それなのに私は耳も貸さずに急に殴りかかったの」

 

 ………うん、それは青蜜が悪いわ。 残念だけどこれは擁護出来ないわ。 

 やってる事がチンピラだもん。 普通にこっちが魔王サイドになってるんだもん。

 

「どうしようまどかちゃん……このままじゃ地球がっ!!」

 

 いや、どうしようって言われても……こんなのもう詰んでるんじゃないの??

 今更挽回出来る方法ある?? 多分走馬灯が進んだのって勇者が青蜜達に負けたからでしょ?? 

 つまり勇者サイドも魔王の討伐諦めた可能性大って事じゃん!!

 

「ん?? お主ら全員揃って何をしているんじゃ??」 

 

 必死に頭を働かせている俺の前に、おっさんが眠たそうに目を擦りながら部屋から出てきた。

 

「む?? どうしたんじゃそんな怖い顔をして?? 全く世界が救われた翌日じゃと言うのに辛気臭いのぅ」

 

 ……な、殴りたいこの笑顔。 いや、今はおっさんに構ってる時間も勿体無いな。 何とかして勇者にやる気を出させないといけないんだからな。

 

 とは言っても、会った事も無い奴のやる気を出させる方法なんてそう簡単に見つかるもんじゃないよな。 

 そもそも勇者からしたらこっちは既に魔王の仲間って思われてても不思議じゃないんだしっ……いや、待てよ。 あるじゃないか、勇者にやる気を出させるテンプレートな方法が!!

 

「おっさん!! 今直ぐに昨日と同じ様に魔王をここに呼び出してくれ!!」

 

「はぁ?? 何を言ってるんじゃまどか殿よ。 今更そんな事をする意味など全くないじゃろ?? 確かにお主が戦闘に参加できなかった事は不運だと思うが、だからと言ってもう一度などっ」

 

「良いから早くしてくれ!!」

 

「……わ、わかったのじゃ」

 

 おっさんの言葉を遮って俺は出来るだけ大きな声で叫んだ。

 

「ど、どうしたんですかまどかさん?? 急にそんな大声で」

 

「本当じゃぞ、びっくりしたぞ」

 

 俺の叫び声で意識を取り戻したのか結衣ちゃんとリアが驚いた顔でそう言った。

 

「2人とも丁度良かった。 時間がないから手短にやって欲しい事だけ言うから心して聞いてくれ!! 

 ルカも協力してくれるか?? この作戦はみんなの協力が必要なんだ」

 

「えっ?? わ、わかったわ!!」

 

 我に戻った青蜜達に俺は急いで自分の考えを伝えた。

 

 



「……ほ、本気なのまどかちゃん??」

 

「あぁ、これが一番手っ取り早くて良い方法だと思う」

 

「で、でもこの方法じゃっ」

 

「大丈夫。 きっと上手く行く筈だから……俺を信じてくれ」

 

「ち、違うわよ!! 私はまどかちゃんの事をっ」

 

「まどか殿!! 準備が出来たぞ!! 本当に召喚魔法を発動して良いんじゃな?? 

 倒したとは言え相手は魔王じゃぞ!! どうなってもわしは知らんからな!!」

 

 青蜜の言葉を遮っておっさんが不満そうに叫ぶ。

 

「……青蜜、俺の事は心配しなくても大丈夫さ、慣れてるからな。 

 さてと!! おっさん!! よろしく頼む!!」

 

 俺がそう返すとおっさんは何やら聞いた事のない言葉を繰り返し、手を前に突き出す。

 

 それと同時にいつだったかリアを召喚した時と同じ様に地面から煙が吹き出すと、その中心に人影が現れる。

 


「ひっ!! もしかしてこれって昨日のっ!! ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい!!」


 煙が晴れた先には俺達と同じくらいの年齢の男が頭を抱えながら謝罪の言葉を繰り返していた。

 


 この人が勇者か……ってか想像以上に傷付いてるな。 みんなやり過ぎだろ、完全に心が折れてるじゃねぇーか。

 

 勇者とは思えないその振る舞いに心が痛くなりながらも俺はみんなへと視線を送った。 

 


 ここから先はさっき言った通りで頼んだぞ。 これが最後のチャンスになるかも知れないからな。

 

 

 俺の思いが伝わったのか、青蜜達は覚悟を決めた様に小さく頷くとそのまま男の方へとゆっくり近付いていった。

 



「……またお会い出来て光栄です。 我が主人様」

 

「いや、だから僕は魔王なんかじゃ無いんです!! 信じてくだっ……えっ??」

 

 地面に膝をつけ頭を下げながら言った青蜜の言葉に、男は戸惑いながら困惑した表情を浮かべていた。

 

 まぁそう言う反応になるよな……さてと、ここからが大変だな。

 

 俺は覚悟を決めて出来るだけ自然に青蜜達へ声を上げた。

 

「おいっ!! 一体どう言うつもりだ!! その男は俺達の敵だぞ!!」

 

「いいえ、それは違います。 むしろその逆です、この方こそ私達にとっての希望。 この星を救う勇者様なのです」

 

「あ、あかねちゃんの言う通りです!!

 昨日の戦いでわかったのです。 この方こそ私達が味方で、その……あ、貴方の方が敵だって事に!!」

 

 結衣ちゃんは相当緊張してるな、演技だってバレなきゃ良いけど。

 

「えっ?? あの、一体何がどうなっているんですか??」


 未だに混乱しているのか、特に疑う事なく目の前の男は俺達の顔を交互に見渡していた。

 

 良かった……これなら何とかなりそうだな。

 

「勇者様、先日は大変失礼を致しました。 実は私達はあの男に操られていたのです!! ですが貴方様と戦った際に、勇者様はその洗脳を解いてくださりました!! 私達を自由にしてくださったのです。 本当にありがとうございます」

 

 さすがルカだな、女優みたいな演技してるわ。

 

「そ、その通りじゃ!! お主のお陰じゃな!! なかなかやるではないか!!」

 

 うん、リアと結衣ちゃんはあんまり話さない方が良さそうだな。

 

「洗脳?? あ、あの男が??」

 

「そうです。 あの男は魔王軍の手先だったのです」

 

「……それを僕が解除したって事??」

 

「はい!! その通りです!!」

 

 青蜜の言葉に男は何かを考える様に顎へと手を当てる。

 

 ……もう一押しだな。

 

「ちっ、やっぱり勇者と接触させたのは失敗だったな。 それにしてもまさか俺の洗脳を解くとはな。 流石勇者と言った所か」

 

 うわぁ、なんか凄い恥ずかしい!! 胸の奥が痛い!! こんなの刻んだ瞬間に分かる黒歴史だわ!!

 

「……本当に僕が彼女達の洗脳を??

 全く心当たりがないけど……いや、もしかしたら自分でも気付かない内に特別な力が発動したのかも!!」

 

 男は自分に言い聞かせる様に小さく呟くと、全てを受け入れたのか立ち上がって俺を睨み付けていた。

18-2話は明日の夜更新します

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