16話 らんせらんせらんせ
「疲れてるって言っても、もうお昼よ??
いくらなんでも寝過ぎじゃ無いかしら??」
怒るリアに青蜜は呆れた様に答えた。
「はんっ!! お主らと違って我は頑張ったからな。 魔力を回復させるのにそれだけ時間がかかるのじゃよ!!
でっ?? 一体何の用なのじゃ??」
「別に大した用事じゃないわ。 一緒にまどかちゃんに謝りに行こうって誘おうとしただけだから」
「……はぁ?? 何故我がまどかに謝らなくてはならんのじゃ??」
「それはっ!!
ほらっ、私達まどかちゃんを仲間外れにしたじゃない??」
「仲間外れじゃと?? 何を馬鹿な事を言っておるのじゃ。
そんなの当たり前ではないか。 魔王と戦うって時に魔法も身体強化もされてない一般人を巻き込んで何かあったらどうするのじゃ。
むしろ我はまどかの身の安全を願ってこその行動だと思っておったが??」
青蜜の言葉にリアは溜息を吐き呆れながら続ける。
「大体まどかはどう思ってるのじゃ??
此奴の事じゃきっと我らの気持ちを感じ取っていてくれてるの筈だと思うがのぅ。
むしろこれで怒っておったらどんだけ面倒な男なのじゃって話じゃしな。
何も出来ない癖に文句だけは言うなぞ愚の骨頂じゃ」
「そ、そうだぜ青蜜。 俺は怒ってるなんて一言も言ってないだろ??
元々気にしてないんだって!! リアの言う通り俺に出来る事なんて無かったからな!!」
「ほ、本当なの??」
「あぁ、何回も言わせるなよ。 青蜜達が気に病むことなんて一つもないんだからさ!!」
顔色を伺う様に尋ねる青蜜に俺は最大限の笑顔で言った。
……あ、あぶねぇー!! もしリアが出て来るタイミングが遅かったら、クズ認定間違いなしだったわ!!
うん、もう調子乗るのはやめよう。 みんなが申し訳ないと思ってくれてただけで十分だもん。
「話はそれで全部か?? はぁー、全くくだらん事で起こしおって……ん?? そう言えば青っ子よ、今はお昼って言っとたな?? 何時じゃ??」
「えっ?? 11時55分よ、それがどうかしたの??」
「ふむ、まぁそれなら別に良いか」
「何がだ??」
何かに納得した様に数回頷いてるリアに俺は尋ねた。
「実はな、お主らが昨日見た映像は大体12時頃から始まるのじゃ。
つまり後20分後にこの星の記憶がここら辺で見られなければ、我らは無事に世界を救えた事になるって訳じゃ」
映像ってあの恐竜の事か?? そう言えばあれは地球の走馬灯だって話だったな……完全に忘れてたわ。
「そ、そうなのね!! だったらこのままみんなでここで待ちましょう!!」
リアの説明に青蜜は目を輝かせてそう言った。
随分と嬉しそうだな。 まぁ青蜜の夢は世界を救う事だもんな、それが叶いそうなんだし興奮する気持ちはわかる。
「そうだな、じゃあみんなでここで見届けるか。 世界が救われる瞬間をさ」
俺の言葉に青蜜と結衣ちゃん、それからリアまでも照れ臭そうに小さく頷く。
まぁ俺がリアに聞きたい事はその後でも良いからな。 ここは一先ずハッピエンドってのを目に焼き付けておくか。
「……ふふっ、私はダーリンのそう言う所が好きよ」
俺の隣でルカは小さく呟いた。
「……き、聞こえてたか??」
「当然じゃない、私はダーリンの言葉を聞き逃したりしないもの。 でも叫んだりはしないわ。 私だけが言える特権って事にしておくから」
片目を瞑り何処か意地悪っぽくルカは言った。
……うん、もうクズ男でも良いわ。 こんな可愛い仕草見れるんだったらクズ上等だろ!!
ってか、これって本当にハッピーエンドなのでは?? 青蜜や結衣ちゃん、リアやルカみたいな美少女と一緒のアパートで尚且つ学校でもモテモテなんだよ??
ハーレムエンドって言っても間違いなっ。
「殿ー!! 大変です!! 敵軍が我らの城へと進路を変えております!!」
「なんじゃと!! ええい、姑息な真似を!! 後一歩の所じゃったのにぃ!!」
「い、如何いたしますか??」
「ぐぬぬっ……撤退じゃ!! 全軍引けー!! これより城へと帰還するぞ!! なんとしても敵軍より先に城へ戻るのじゃ!!」
「はっ!!」
……ん?? 何これ??
急に目の前に現れた丁髷姿の男達に俺の思考は完全に混乱した。
えっーと……どういう事?? あれ?? これってドラマの撮影??
恐る恐る近くで倒れていた男に俺は触れる。
……うん、触れないわ。
え?? これってさ、もしかして。
「ら、乱世ね。 まどかちゃん」
隣で青蜜が死んだ魚の目でそう呟く。
「あぁ、乱世だな。 うん、間違いなく乱世だわ」
「奇遇ですね、私にも乱世に見えます」
「私には随分と文明が進化した様に見えるわ。 今回は変な生物じゃなくてちゃんとした人間になってるもの」
「わ、我は関係ないぞ。 先に言っておくが我の所為では無いからな……多分」
呼吸を整えて俺はスマホで時間を確認する、時計の針は12時1分を指していた。
この時になって俺達は初めて理解した。
昨日の夜、既にとんでもない過ちを犯してしまっていた事に。




