15話 甘んじて受け入れる甘え。
「あー、良く寝たな」
次の日、俺が目を覚ましたのは11時過ぎだった。
昨日は夕方にかなり寝ちゃってからまた寝れるか心配だったけど関係なかったな。
それに時間を気にせず寝れるってそれだけで幸せだわ、昨日までの悲しい気持ちが嘘みたいにスッキリしてるもん。
ベットから身体を起こして、一先ず服を着替える。
「さてと……何しようかな」
朝のルーティーンを済ませこれからの予定を考える為に俺はコーヒを入れて椅子へと座った。
……うん、何もする事無いよな。
よくよく考えたらさ、もう昨日で目的は達成されたんだもな。
これ以上日本にいる必要なんてないよな。
「かと言って、あっちの世界に戻った所で出来る事なんてないけど」
……あれ?? もしかして俺達の役目って終わったんじゃないか??
リアが魔力を取り戻すまでの時間稼ぎが終了したんだし、俺達も日本に帰ってきたんだ。
後は適当におっさんとリアがなんとかするだろし……まぁ、一様確認だけでもしてみるか。
考えれば考える程、これ以上出来る事が見つけられなかった俺は、とりあえずリアの元へ行く事にした。
「……何やってるんだ青蜜??」
俺が部屋の扉を開けると目の前には青蜜がしゃがみこんでいた。
「あっ、まどかちゃん……いや、別に何でも無いの!!
ただちょっと心配で様子を、いや違うわ!! 心配なんかしてないの!! ただ元気かなぁーって様子を見みきただけでっ!!」
手をバタバタと振って、誰が見てもテンパっているのがわかる様子で青蜜は続けて言った。
「さっきまで結衣やルカも一緒に居たんだけど2人は丁度リアを呼びに下に行った所だったのよ!!」
なんでこんなに焦ってるんだこいつ??
それに結衣ちゃんやルカも居たって事は何か俺に用でもあったのか??
「べ、別に私は朝からずっとここに居た訳じゃないのよ??
申し訳なくて寝れなかったからたまたま最初に来てただけなの!! そ、そうよ!! つまり暇だったの!! 暇だから蟻を観察してたの!!
それで偶然まどかちゃんの部屋の前に蟻がいっぱい居たからそのっ!!」
蟻って……青蜜、俺達もう高校生だぞ。 いくらなんでも言い訳が下手すぎだぞ。
それに所々本音が漏れてるし……まぁそのお陰で青蜜達の気持ちがわかったから俺にとっては良かったけど。
「それでね、まどかちゃん……本当に、本当にごめっ」
「なるほどな!! 蟻の研究中だったのか、まぁ特に用がないなら俺達も一緒にリアの所に行かないか??
結衣ちゃん達が呼びに行ってるなら都合も良いしな」
いつも遮られてばかりだけど今回は俺が青蜜の言葉を遮る。
……その方が照れ臭くなくて良いからな。
「えっ?? た、確かにそうよね!!
うん!! じゃあ一緒に行きましょう!!」
俺の提案に青蜜は嬉しそうに数回頷くと、そのままゆっくりと歩き出した。
服のお尻部分が少し汚れてるのはきっと地面に座っていたからなんだろう。
いつもこのくらい素直なら可愛いのにな。
……まぁ今回の事はこれで水に流すとするか、おっさんの言う通り青蜜も必死だっただけだろうしな。
「どうしたの?? リアの所に行くんでしょ??」
「あぁ、行くよ」
振り返って首を傾げる青蜜にそう返して、俺は部屋から出て行った。
「あっ!! まどかさん!! 良かった、あのままずっと部屋から出てきてくれないんじゃないかと心配したんですよ!!」
リアの部屋の前に着くと、俺の顔を見た結衣ちゃんは涙声でそう叫ぶ。
「ば、馬鹿ね!! ダーリンがそんな打たれ弱い訳ないじゃない!!
私は最初から信じてたわよ?? ダーリンなら必ず立ち上がってくれるって!!」
「そんな事言ってさっきまでルカさんだって泣きそうだったじゃないですか」
「なっ、泣きそうになってなんかいないわよ!!」
「ははっ、2人とも心配してくれてたんだな。 ありがとう」
言い争う2人に割って入り俺は感謝を告げた。
「怒ってないんですか??」
「怒ってないさ」
「身体は大丈夫なのダーリン??」
「元気いっぱいだよ。 不調な所を探す方が難しいくらいかな」
「「良かった!!」」
俺との会話に結衣ちゃんとルカは安心したように胸を撫で下ろす。
うんうん、やっぱみんな優しいな。
あんな激しい戦闘した後なのに、なんもしてない俺の心配してくれるなんてな。
日本に帰ってきて色々あったけど、終わりよければすべて良しだよね。
………なんかめっちゃ恥ずかしいんだけど。
え?? 何?? なんでみんなこんな優しくしてくれんの??
ごめん!! その優しさめっちゃ痛いから!! 心に突き刺さるんだけど!!
しかもなんか俺も格好良く受け答えしちゃったけどさ!!
俺なんもしてないからね?? 仲間に入れて貰えなくて不貞腐れてただけ!!
何これ?? 女の子に気を使われるのってこんなに恥ずかしいの??
穴があったら掘り進んでもうそこで暮らしたいわ!!
「まどかちゃん?? 大丈夫?? 顔が赤いわよ??」
「……大丈夫だよ」
「本当に?? もしかしてやっぱりまだ怒ってる?? って当然よね、そのくらい酷い事を私はしちゃったんだもの」
「オコッテナイヨ」
「嘘よ……片言になってるじゃない」
いや、片言は別に良いだろ。
……まぁでも、これ以上無駄に心配かけたら余計に俺にダメージがくるな。
うん、もうここは開き直って被害者意識を貫き通した方が良いな。
それに良く考えたらこれって別に悪い状況じゃないしな。
良し!! 折角だからみんなに甘えよう!!
い、今ならちょっと無茶なお願いしても叶えてくれる気がするし。
「あー、なんだ……そんなに許して欲しいなら俺の好きな所を大声で叫んでっ」
「うるさいわい!! なんなんじゃ!! 揃いも揃って我の部屋の前で大声で叫びおって!!
こちとら昨日の戦闘で疲れてるんじゃぞ!!」
俺が願いを言い切るより前にリアはイラついた表情で部屋から飛び出してきた。




