12-2話 で、わしが呼ばれたってわけ。
「い、いやいやいや!! そんな事は有り得ないだろ?? 地球自体が走馬灯を見てるなんて……ここはリアが作った星じゃないんだぞ??」
「うむ、確かに我が作った星ではないがそれは別に関係ないじゃろ??
大昔に我と同じような者が作ったのかも知れぬし、後から自我が芽生えただけかも知れんしのぅ」
「だ、だけどっ!!」
「まどかちゃん、確かにリアの言う通りよ。 今はその話は関係ないわ、大事なのは地球が走馬灯を見ていると言う事実よ」
今の状況を重く見たのか、青蜜は冷静な口調でそう言った。
「リアさん、もし地球が走馬灯を全て見終えたら一体どうなるのでしょうか??」
「……それは我にもわからんのじゃ。 じゃから我も困っておるのじゃよ、もしかしたら別に何事も無いのかも知れんしな。 じゃが、最悪の事態を考えるとするなら」
「地球が滅びるかも知れないって事か」
「うむ、あくまで最悪の事態を想像するならじゃがな」
……なんてこった、まさかここまで重い話になるとはな。
異世界に行く前ならこんな話信じ無かったかも知れないけど、今はそうは言ってられないよな。
言ってしまえば、これは地球版の星の日記って事になり得るんだもんな。
「どうにかして地球の走馬灯を止める方法は無いのか??」
「そ、それは……可能性はあるにはあるのじゃが」
「本当か?? 一体何をすれば良いんだ?? 教えてくれ、リア!! 俺に出来る事なら何でもするから!!」
地球を滅ぼす原因……考えられるのは大規模自然災害か?? それとも未知の病原菌とかか?? いや、核戦争の可能性もあるかもな。
だけど、何にせよこのまま黙って見てるなんて出来ない!! 地球は俺にとっては大事な場所なんだ!!
「勿論、私も手伝うわ!! 出来る事が限られてるとしても、地球を見殺しになんて出来ないもの!!」
「わ、私もです!! 教えてくださいリアさん!! その可能性ってやつを!!」
青蜜も結衣ちゃんも俺と同じ気持ちなのかいつもより熱の籠った声でリアに尋ねる。
「私も協力するわ。 ダーリンの故郷は、私にとっても大切な場所になるだろうから」
「ルカ……ありがとう!!」
俺はルカに頭を下げ、再びリアへと視線を戻した。
「わ、わかったのじゃ。 じゃが後悔しても知らんぞ?? 星を一つ救うと言う事はお主らにとっては大変な事なのじゃしな」
「わかってるつもりさ」
「……うむ、では我が見つけたこの星を救う一つの可能性の話をしようとするかのぅ。 まずはそうじゃな、この紙を見てくれるか??」
リアはそう言うと一枚の紙を俺へと手渡してきた。
この紙に地球を救う可能性が示されてるのか……何だか緊張してきたな。
まさかこんな大きな事になるなんてな。 どこまで出来るかわからないけど、頑張らないと!!
俺は呼吸を整えてリアから貰った紙に目を通した。
「……ん?? 何これ??」
その紙には幼稚園児の落書きの様な絵が描かれていた。
「どうしたのまどかちゃん?? 私にも見せてよ」
「あっ、私も見たいです」
俺の反応を不思議に思ったのか青蜜と結衣ちゃんは肩が当たる所まで近付いて覗き込む。
「なにこの落書き?? 文字にも見えなくは無いけど」
やっぱ青蜜にもそう見えるよな……一体これの何処に地球を救う可能性が書かれてるんだ?? さっぱりわからんぞ。
「なぁ、リア。 これは一体何なんだ?? もしかして間違えてるのか??」
「失礼じゃな、間違えてなぞおらんわ。 その意味不明な文字こそ今の我が知る事の出来る唯一の手がかりなのじゃ」
「これがか??」
リアの答えに俺はもう一度手に持った紙に視線を落とす。
……うん、やっぱ何回見てもただの落書きにしか見えない。
確かに青蜜の言う通り所々文字にも見えなくは無いけど、どっちにしても意味はわかんないな。
「それで?? この落書きには一体どう言う意味があるのかしら?? 何かヒントでも描かれてるの??」
「そ、それはのぅ……すまん、我にもわからぬのじゃ」
「「「えっ??」」」
申し訳なさそうに顔を背けるリアに俺達は同時に声を出していた。
「ど、どう言う事だ?? じゃあ結局何もわかってないのか??」
「……そう言う訳でも無いのじゃよ。 その紙は我の魔力でこの星の深層心理を暴いたものでな、解読さえ出来ればヒントは得られるのじゃけれど……そのっ」
そこまで言ってリアは言葉に詰まる。
一体どうしたんだリアの奴?? なんかさっきから様子がおかしくないか?? 凄い言いにくそうにしてるし……いや、どっちかと言うと言いたくない様にも見えるな。
何でだ?? この絵を解読出来れば地球を救えるかも知れないって所まできてるのに何をそんなに嫌そうにっ……あっ。
『解読』 この言葉を頭に思い浮かべた時、俺の中の嫌な記憶が同時に浮かび上がってきた。
「も、もしかしておっさんがここにいた理由って……」
「ふふふっ、わしを呼んだか??」
俺が声を出したと同時におっさんが部屋の扉を開けてそう言った。
……うわぁ出た、もう嫌な予感しかしないわ。
「呼んでないわよ」
「ちょっ!! 冷たいではないかあかね殿!! わしは今まで部屋の前で名前が呼ばれるまで待っておったのじゃぞ??」
大きなぬいぐるみを抱えたおっさんは不満そうに答える。
「お主ら3人の意味のわからんお尻叩きの間も待っておったのに!! あかね殿と結衣殿の喘ぎ声を聞こえないふりをして待っていたわしの優しさを知っても良いと思うのじゃが!!」
「「なっ!!」」
おっさんの言葉に青蜜と結衣ちゃんは恥ずかしそうに顔を赤らめる。
……おっさんあの時からずっと部屋の前に居たのか。 さては空気が変わるまで隠れてたな、相変わらずせこいな。
「それにしても日本のゲーセンと言う場所は面白いのぅ。 今日もこんな大きなぬいぐるみを取ってこれたぞ!! どうじゃ凄いじゃろ??」
「はぁー。 これで我の気持ちも少しはわかったじゃろ??
さっきまどかの言った通りじゃ、我がこのポンコツを呼んだのはこの文字を解読出来るのが現時点ではこの阿呆しかいないと言う事じゃ」
大きな溜息を吐きリアは頭を抱えてそう言った。
なるほどな……リアが俺達に言いたく無さそうにしてた気持ちが痛い程わかったわ。
「そういう事じゃ!! それにしてもポンコツや阿呆などと呼ばれるのは心外じゃな。
まぁ前回は少しミスをしてしまったからしょうがないが……なぁに今回は安心せい!! 割と真面目に作業をしたから解読はもう終わっておる。
ふふっ、お主らには恩があるからのぅ。 柄にもなく頑張ってしまったわい」
鼻を手で掻き照れた様におっさんが言う。
その仕草に俺達は全員冷たい視線を向けていた。
いや、前回も真面目にやれよ、おっさんの国の問題だっただろ。
それにいくらおっさんが真面目にやった言っても信用出来ないんだよな……ポンコツだし。
「さてと、では早速わしが解読したこの落書きについて解説していくぞ?? 皆の衆、心して聞くが良い!!」
俺達の気持ちなんて興味無いと言わんばかりにおっさんは満面の笑みを浮かべて高らかにそう宣言した。
……うん、ごめんな、先に謝っとくわ。
地球に住む人達には申し訳ないけど、これもうダメかも知れないわ。 おっさんが絡んで事態が好転した事なんて今までなかったもん。
俺は心の中で全人類に謝りながらおっさんの話を聞く事にした。
周りのみんなは大声で笑うおっさんの顔をもう見ては居なかった。




