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ポンコツなおっさんに今更ながら異世界に召喚されてしまった。  作者: みんみ
ポンコツなおっさんに召喚されてしまった。
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10話 聖女の怒り



「でも、やっぱり素直に打ち明けて良かったです!! 他人を騙すのは心が痛みますから。 今回は本当にすいませんでした!! では、王よ! 私はこれで失礼します!!」


 そそくさと立ち上がり、涙目のおっさんの隣をキャリオンさんはお辞儀をしながらゆっくり歩いて部屋の扉へ向かった。


 いや、他人を騙す事に心を痛める奴のやる事じゃないだろ!

 そもそも最初から騙す気満々じゃねぇーか!!


 「お、おっさん! このまま帰していいのか?? 俺にぶつけたあの怒りをキャリオンさんにも!!」


 あぁ駄目だ。 完全に目が虚だ……おそらく現実逃避してるんだろう。

 俺の声も、おっさんには届いて無さそうだ。



 流石に腹が立ってきた。 それに今回の件は俺も被害者になる、文句を言う権利はあるだろう。


 一度深呼吸を挟み、意を決して俺はキャリオンさんを見る。

 おっさんの為にもこのまま帰す訳には

行かなかった。



「ちょっとまっ」


「待ちなさい!!」


 えー、また? これ本当に俺の話すタイミングが悪いの??

 もしかしてみんなわざとやってない??


 俺の言葉を掻き消して怒鳴ったのは、さっきまで死んだ魚の目をしていた青蜜だった。


「な、なんでしょうか??」


「キャリオンさん、貴方が偽物だってのはとりあえず今は忘れてあげるわ。

 その代わり、今まであのおっさんから貰ったお金、全部ここに置いていって貰えるかしら?」


「はぁ? あ、あれは私が稼いだお金よ!! なんで今更返さなきゃいけないのかしら?? 

 それに貴方には関係無いじゃない! この国の法律だって知らないのに!!」


「えぇ、知りませんよ。 それが何か?? 勘違いしないでね、キャリオンさん。 私は別に法に乗っ取って貴方に迫ってるわけじゃないのよ? 言ったでしょう?  貴方が偽物だと忘れてあげる代わりに置いて行けって。 

 法律とかルールとかどうでも良いのよ、それともどうしますか? 

 貴方が偽物って事を私に覚えさせておきますか? もしそうするのなら私も貴方に騙された被害者って事になりますね……私はあのおっさんと違って容赦しませんがそれでよろしいですか??」


 ドスの聞いた声を部屋に響かせ青蜜はキャリオンさんに近付きながら捲したてる。

 

 「よ、容赦しないって言ったって別に貴方に何が出来るって言うのよ!

 それにこ、ここで私を殺したら、貴方だってただじゃ済まされないわよ!! この国では殺人は重罪なのだから!!」


「おやおや、おかしな事を言いますね。 私は一体誰に捌かれるのでしょうか?? その時の罪状はなんでしょうか? 異世界人を殺害した罪でしょうか??」


「そ、それはっ!!」


 キャリオンさんも必死に抵抗していたが、焼け石に水だった。 


 確かに青蜜の言う通りだ。 ここでキャリオンさんに危害を加えても、元の世界に戻れば誰にも追求なんてできないのだから。


 まぁ実際に青蜜がキャリオンさんを殺す事なんてしないだろうけど青蜜の威圧感も加わって脅しには十分過ぎる効果があるだろう。


 ……本当に殺したりしないよね??

 異世界で人を殺しちゃいました、なんてタイトル嫌だぞ。


「さて、どうしますか? 私としてはどちらでも良いのですが??」


「ひっ!! は、払います!! 今までの報酬の全てを返しますから、許してください! どうか命だけは!!」


 足を震わせ、歯を軋らせてキャリオンさんは青蜜に許しを乞う。


「そう。 案外素直なのね、それなら私も忘れてあげるわ、じゃあ今から一緒に取りにいきましょう?? 貴方の部屋は確か直ぐ近くだったものね」


「……は、はい」


 颯爽とキャリオンさんの前を青蜜は歩き始めた。


 か、格好良い。


 今までずっと怖くて、嫌味な奴だと思っていたが、その瞬間の青蜜の姿はとても凛々しいものだった。


 ついさっき聞かされた事実に、きっと青蜜だって心の整理が出来てないのに、あのおっさんの為にここまで出来るとはな。 多分俺があのまま話していても、上手くあしらわれて終わりだっただろう。


 ……あいつにファンクラブが出来る理由が少し分かった気がする。



「あっ! 言い忘れてたけどこれはあくまで私個人の分で、あいつら二人の分は知らないわよ?? 

 キャリオンさんあいつらの恨みをかって殺されなきゃいいわね」


「そ、そんな!! ど、どうしたら許して貰えるのでしょうか??」


 あれ? なんか流れ変わった??


「んー、あいつらの事はクラスメイトの私がよく知ってるけどお金で許す様な人達じゃないわよ?? 諦めた方が良いかもね」


 さっき俺の事なんて全然知らないって……。


「こ、困ります!! 私はまだそれなりに若いですし、やりたい事も沢山あるのです! なんとかしてください! お願いします!!」


「そうねぇ……なら私が守ってあげるってはどうかしら? それなら貴方も安心でしょ? 料金は貴方の全財産の8割で良いわ!」


 う、嘘だろ?? 


「8割ですって!! そんなの無理です! さっきも言いましたが、私に子供が居るんです!! そんなにお金を取られたら生きていけまっ」


「あら? 貴方本当に子供なんて居たの? それも嘘かと思ってだけど?

 まぁ良いわ。 じゃあ今からその子連れてきて貰えるかしら?? そしたら3割値引きしてあげるわ」


「うぅ、あ、それはその」


「嘘なら今のうちに言っといた方が良いわよ?? 後でわかった時は8割と言わずに全財産貰うから」


「……は、8割で良いです。 すいませんでした」


 ……あいつ、本当に高校生か?? 

 無茶苦茶じゃねぇーか。 前言撤回だ、やっぱ怖いわ青蜜さんは。


「決まりね。 ゆい、私ちょっと席外すわね!! おっさんの事頼んだわよ!」


「あっ! はい!! わかりました、あかねちゃんもお気をつけて!!」


「あっそれからまどかちゃん、あんたさ……結構男らしい所あるじゃん」


 青蜜はそう言い残しキャリオンさんを連れて部屋から出ていった。



 お、男らしいか……。


 初めて言われた青蜜からの褒め言葉に俺はとても喜んでしまった。


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