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第13ゲーム 最後は綺麗に掃除しましょうっ!(前編)

 負けられない企画がそこにある。


 伊佐名はこれまでに、様々なデスゲームを企画してきた。成功もあり、失敗もあった。ただ、次の企画は確実に成功させたい。


 遂に、研究成果をお披露目する時だから!


 今日は月に一度の定例報告。企画部のではない。技術研究部の報告会である。伊佐名が勝手に決めた会議。ただし、上司の許可はちゃんと取ってある。


 企画のために技術研究が必要なんです。絶対に成果を出させますから。八神課長をそう言いくるめて、今や完全に技術研究部を掌握していた。そんなことをして、本当にいいのだろうか。大丈夫。私物化している訳ではない。全ては会社のため。


 実際のところ、そこのメンバーも明確な目標に向かって仕事をするのが楽しくなってきたのか。以前よりも生き生きしている。


「鈴木くん、始めなさい」

「はい! 行きます!」


 今日の報告会は外で開催された。その理由は――見ていれば分かる。


 それは何の変哲もない箱状の物体だった。ティッシュ箱くらいの大きさ。D社の敷地の空きスペースに、ポツンと寂しく置かれている。


 そこへ完全防備の格好で近付く一人の若い男性。鈴木くんである。今回の命を賭けた実験にめでたく選ばれたのだ。メンバーの中で一番若いから。


 いや、安全なはず。彼らが研究を重ねて開発した通りなら、事故でも起きない限り大丈夫。そう信じたい。頑張れ、鈴木くん。


「ヒッヒッヒ……スイッチ、オン」


 マッド・サイエンティスト、もとい本田部長が装置の電源をオンにする。


 すると、鈴木くんは謎の物体から5メートルほどまで近付き、不思議な踊りを始めた。いや、データを取っているのだ。安全な場所から、他の研究員がノートPCをカタカタと必死に打っている。


 その数分後……。


「では、起動します!」

「行きなさい。骨は拾ってあげるから」

「シャレにならないですよ!!」


 遠くから見守る伊佐名たちを尻目に、彼は思い切り右手を突き出した! 謎の物体を目掛けて真っ直ぐに!


――ボンッ!


 爆発した。謎の物体が、爆発した!


 舞い上がった煙が晴れた後には、跡形もなく消え去っていた。


 まさか、鈴木くんは超能力に目覚めたのだろうか。手の平からエネルギー弾でも撃ち放ったというのか。


 無論、そんなことはない。


 これが技術研究部で開発した新たなるデスゲーム装置――!!


「よし、成功っ!」

「キーッヒッヒッヒ……命名するよォ……コイツは『指向性加速度検知遠隔起動爆弾』だァ……!」



  ***



「さて、本日やって頂くゲームは――『爆弾魔(ボマー)』!」


「皆様も一度は考えたことがあるでしょう。漫画やアニメのように、手の平から何かを()()ことはできないか。エネルギー弾とか、圧縮された空気の塊とか。この中にも、練習したことのある方がいらっしゃるかもしれません」


「その夢を――我々は遂に実現しました! こちらの映像をご覧ください」


「……どうですか。彼が手を前に突き出した瞬間! 箱が跡形もなく吹っ飛びましたね。どうぞ、ご安心を。皆様も()()さえ掴めば、すぐできるようになります」


「これまで、フィクションの中でしか存在しなかったデスゲームのジャンル――『能力戦』! 本日はこれをやって頂きます。今から皆様に能力(スキル)を与えさせて頂きます。能力名は『爆弾魔(ボマー)』。爆弾を遠隔で起動させる能力です」


「詳しく説明しますと、皆様の右手、及び左手に装着させて頂く装置。その位置・方向・角度・加速度を各種センサにより取得いたします。そして、一定方向に既定の加速度以上で動いたことを検知した瞬間、該当する爆弾が起動し、爆発する」


「原理については理解せずとも問題ありません。皆様は、高速で手を動かした先に爆弾があれば、それを爆発させる力を与えられただけです」


「このスキルを使用し、5人で命賭けのバトルして頂きます。相手を倒す方法は爆殺しか認められていませんが故に、悪しからず」


「さて、ゲーム会場を見回せば、床や壁に沢山の箱状の物体が貼り付いているでしょう。それらは()()、爆弾ではありません。この中から、()()を自分の爆弾に置き換えるか。私がプレイヤーを1人ずつ呼び出しますので、そこで決定して頂きます。もしかしたら、他のプレイヤーと被ってしまうかもしれませんね。その時はその時です」


「1人当たりの弾数は『5個』! 全員の弾数が全て尽きたら第2ラウンド! 爆弾の選択と、テスト装置による起爆練習と、会場の再設営。これらの時間を鑑みて、ゲーム開始はルール説明終了時より30分後!」


「どうぞ、与えられたスキルを大事に活用してください。では、詳しいルール説明を始めます。ちゃんと聞かなければ、強制的に転生することになりますよ」



  ***



 初めての技術を導入するデスゲーム。ならば当然のことであるが、いつもよりも見学者が多い。様々な部署の偉い方々が、ここに集まっているのだ。


 モニタールームは絶対的に安全。ただ、会場は――分からない。爆弾が次々と誘爆した日には、目も当てられない惨状となる。


 その点、研究員たちが入念に検討したから大丈夫なはず、なのだけど……。心配なのは変わりない。火事に備えて消火器も準備したし、我が社の消防隊も待機済み。


 お客様は30分の待ち時間で暇にならぬよう、今回導入した技術に関する映像を配信する。アピールもバッチリ。まぁ、最新鋭の技術とはいかないまでも……技術研究部の最初の成果としては上々だろう。


 まず絶対に面白い。そして、夢がある――!!


 あとは失敗しないように願うしかない。会場に設置した特殊なカメラと、センサさえ壊れなければ絶対に安心と豪語していたが。


「ヒッヒッヒ……与えられた我が能力(スキル)によりィ……醜く争うんだよォ……!」

「これは完全にマッド・サイエンティストの貫録」

「本田部長も喜んでいますね」

「鈴木くんもしっかり頑張りなさい。他のメンバーは装置の管理で手一杯。今日、ここへ来ているお偉いさん方に研究成果をアピールするのは、貴方にしかできない大切な役目なんだから。部長もアレだし……」

「はいっ! 頑張ります!」


 今日は見学者からの質問が多いと思われる。特に()()()に関して。しかし、根回しは抜かりない。事前に安全衛生委員会のメンバーと連絡を取り、何日も掛けて安全性を話し、説得した。指摘された問題点は全て改善済み。故に、実戦投入が遅くなってしまったのだが……。


 そして、委員会メンバーは今日この場にも同席してもらっている。心強いこと、この上なし。実際のところ、会社における立場的にも彼らは強いのだ。


 デスゲーム運営会社の安全衛生委員会っていうのも、何だか変な話ではある。デスゲームの安全性……いや、安全性は確かに必要なんだけど……。


「あっ! マスター! マスター!」


 突然、伊佐名はプレイヤーに呼び出された。


 モニターを確認すると、爆弾起動練習中のプレイヤーたちが画面に映っている。既に全員が爆弾を決定済み。ゲーム開始直前までスキルの練習をさせている最中。


 しかし、その内の一人が――床に倒れていた!!

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一般文芸デビューしました。(2020.09.01)

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