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第三話


先程力任せに開けられたせいで、すっかり建て付けが悪くなってしまった扉を開いてアンブレラさんと一緒に戻ると、二人共少し驚いた顔をしていました。


「てっきり首だけになって戻ってくると思ってたんだがな」

「どんな魔法を使ったのかね?」


腕を組んだままクラスさんが呟きます。アサグナさんも興味深そうに私達の様子を見ていました。

そんなに不思議な事でしょうか。私は楽しい酒盛りがありますよ、クラスさんに対して怒って今帰ってしまっては勿体無いですと言っただけなのですが……。


「言っておくけれど、これからの話に興味は無いわ。勝手に進めて」


私達が居ない間に用意されたのでしょう、真新しい椅子に改めてアンブレラさんは座ると、だらしなく背もたれに寄りかかって足を組みました。

不遜な態度な事が多いアンブレラさんですが、私がしっかり頼むとちゃんと協力してくれるので、根は素直な方です。

アンブレラさんに限らず、私の仕事仲間は皆良い人なのが嬉しいですね。


「チッ……まあ良い。それで、今後の事だが――」


私も再び席に座った事を確認すると、クラスさんがまた仕事の話を始めます。

難しい話をされてしまうと、言葉が頭の中を通り抜けていってしまうような感覚に襲われますが、私なりに頑張って理解しようとしたところ、

またこのように定期的に集まって、お仕事の事とか、プライベートの事を話し合いたいということでした。私的にも、皆さんと親交を深められるのは歓迎です。


「最近またウチの商店の一つが焼かれてね。どうも犯人はクラス君が仕切ってる場所に逃げ込んでるようだが」

「あぁ?金稼ぎすぎて恨まれてるんじゃねえのか?」

「少しでも金を使える立場の者には受け入れられていると思うんだがねえ……流石に貧乏人というレベルですらない人はちょっとね。まあ、今度ウチの手の者が調査する時に、邪魔はしないでくれるかい?」

「……下手人捕まえたら顔だけ俺に見させてくれ」

「知り合いだからって手心は加えないよ?」


お話は基本クラスさんとアサグナさんを中心に進みます。アンブレラさんは目を瞑って一言も喋らず、私はよくわからないので無難に時折相槌を打つ程度ですね。


「ザペル、てめえは今何を企んでやがる。言え、何も言わずに後で何かあったらブッ殺すからな」

「そうは言われましても……」


私は時折この三人の方以外にも、街の有力者の会合にお呼ばれする時があります。

しかし、なぜ呼ばれているのか一向にわからないのです。私は最初は物を売って生活していこうと思っていたのですが、今では全く働いていません。

何をしているのか、と言われても困ってしまいます。私は普段は特に何もしていないのです。


周りから話を聞くと、私は最近都会の若者で良く言われるニート、というものに分類されるようです。本当は就職したいのですが、手に職もなく田舎者の私には仕事をする事が出来ていません。

でも、特に面白い話をしている自覚は無いのですが、よく話をしている人からお金を渡される事が多いですね。それも、びっくりする位多くてしばらく暮らしていける量なので凄く助かっています。

そういう事ならば、敢えて言うなら私はお話をすることでお金を貰う芸人みたいなものでしょうか。


「そういえば、昼頃にちょっと三蛇会の方とお話しました」


そういう事ならば、と今日ここに来る前に私の自宅にやってきた、目の前の御三方と同じくこの辺りで商売をしている方の話をする事にしました。

基本話の内容は他の方に言わないようにしているのですが、今回は口止めはされていなかったのと大した内容では無かったので話すようにします。

何も無いです。という事は簡単ですが、そうなると私だけ何もしてないみたいで気まずいですからね。


「何?」


スッ、と周りの空気の温度が下がった気がします。そう言えばあの人達ってみなさんの商売敵でしたっけ?

この街には人が多すぎて中々関係が覚えられないのが辛いですね。私が住んでた村位で丁度いいのですが……。


「この集まりの事を話したのか?」

「まさか!クラスさんから秘密にするように言われましたしね。世間話をしただけですよ」


どうも三蛇会の方は私達に仲間外れにされていると思っているらしく、一緒に仕事をしたいと常々言っていました。

本当は一緒にこの会合に参加してもらえたら良かったのですが、クラスさんが内緒にしてねとの事ですので、特に話していません。


「……コイツの事だ、嘘は言ってねえんだろう」

「勿論。なんならどんな話をしたのかも言うことが出来ますが」

「お前の口からは聞きたくねえなぁ。後でこっちで調べるさ――って、うるせえな、何だ?」


クラスさんからのお話が一段落した所で、外で多くの馬車が走る音が聞こえてきました。こんな夜中に目の前の通りがここまで騒がしくなるのは珍しいですね。

ああ、クラスさんが頼んだ親睦会の料理でも届いたのでしょうか。音からするに凄い量ですね。私達四人と外で控えてる方々で食べ切れるでしょうか……。


「クソが、三蛇会の野郎どもじゃねえかよ」

「ふうん、コレがザペルの言った事?まあ良いんじゃないかしら」


窓から通りを見たクラスさんが呟くと、それまで沈黙を守っていたアンブレラさんが立ち上がって三蛇会の方を迎える為に窓を開け放って飛び出していきます。

ここは三階なのですが……そんなに三蛇会の方と会いたかったのでしょうか。クラスさん、思わぬライバルが出現したかも知れませんよ。

それにしても……三蛇会の皆さんはそんなに仲間外れが嫌だったのですね。何処からこの件を知ったのでしょう。

ふと、クラスさんの方を見るとこっちを睨んでいました。


「喋ってないですよ?」

「うるせえ、クソ女が言った事といい、お前が一番怪しいんだよ。お前も責任もって片付けてこい」

「やれやれ、君たちと居るとこういう事ばかりで困るね……こういうのは苦手なんだが」


私は三蛇会の方々に伝えてないと再度言ったのですが、どうもクラスさんは勘違いしているみたいですね。

あの人達からクラスさんに説明してもらう事にしましょう。





ポイント評価励みになります。


作中で主人公が自分の事をニートと言っていますが、現実では働く意欲があったらニートとは言わないです。

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