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第十三話

本当はまだアンブレラ氏の視点の予定だったのですが、冗長になるのでカットしました。

その為、カットされた文章の一部を前話に追加しています。

正直、とてもやりづらいですね。妹相手ならどこまでなら大丈夫か勝手がわかるのですが、アンブレラさんを怪我させるわけにもいきませんし……。

隣の部屋まで吹き飛んでいったアンブレラさんの様子を見に行きます。我ながら綺麗に叩き飛ばせたと思うので

大丈夫だと思いますが、念の為怪我がないか確認すべきですね。

もし女の人を怪我させたなんて皆に知られたら怒られてしまいます。


「大丈夫か?――ああ、物を壊すのは気にしなくていい。俺は大工も趣味だからな」


アンブレラさんが立ち上がりました。良かった、見たところ怪我は無さそうです。

ちなみに、村で建物を作ったりしたお陰で、日曜大工も私の趣味だったりしますので、入り口も含めて、ドアを壊した件でアンブレラさんが萎縮してしまわないようフォローは忘れません。


「フン、残念ね。アンタが好きな物弄り、これが終わったら二度と出来ないわよ」


どういう事でしょう?もしかして私が嫌になるくらい家をこれから壊すのでしょうか。

私はアンブレラさんの為だったら家がボロボロになる位別に構いませんが、シドラさんに怒られそうで怖いですね。


怒っているシドラさんの姿を想像していたら、アンブレラさんが抜剣して私の首を狙ってきます。


「見えてるんだよ」


今の私は魔王の役割を演じているので余裕そうにしていますが、結構必死です。

なにせアンブレラさんが使ってるのは真剣ですから……うっかり当たったら流石に怪我をしてしまいますね。


続けて抜剣された剣を掴もうとしたら、腹を蹴られそうだったので脚で防いで距離を取ります。

アンブレラさんと妹の戦い方の違いに戸惑っていたら、すっかりアンブレラさんも私相手に手慣れてきてしまいました。

ずっと最初のようにやってくれていたのならアンブレラさん自身の勢いのみを利用する事が出来て安全だったのですが、今では軽くしか振ってくれないので私の力も使うしかありません。


「これが天上戦争(ラグナロク)……」


ランタンを持ったグラディエルちゃんが部屋へと入ってきます。明るくしてくれるのは嬉しいですが、ちょっと危ないので離れていて下さいね。


アンブレラさんが突っ込んできます。次はどのような剣捌きを見せてくれるのでしょうか。

――剣の間合いに入ったのですが、特に何もしてきませんね?かといって、私の間合いにも入りませんし……。

少し踏み込んで私の間合いに彼女を入れてみますが、特に反応はありません。後ろにステップして、また仕切り直します。

アンブレラさんが少し笑った気がしました。そんなに私の動きが面白かったですか?


「ザペル……わかったわ、アンタ自分から攻めるの苦手でしょう?さっきのは何か理由があって出来たみたいだけど、今は受ける事しか出来ないわね?」


流石はアンブレラさんです。すこし立ち会っただけで私の戦い方を理解しています。そこまで見てもらえたのかと思うと嬉しいですね。

私は今までのごっこ遊びは攻撃を受けてばかりでした、相手は女性なので、間違っても攻めて怪我をさせてはいけませんからね。徒手で戦うのもそれが理由です。


正直、先程のアンブレラさんを突き飛ばした一撃もあまりやりたくなかったです。でも、玄関ホールは割れると危ない壺とかがあったので戦い易い場所に移動する必要があったんですよね……。

せっかくアンブレラさんは迫真の演技でロールプレイしてまで遊んでいるのに、いきなり素に戻ってお願いするのも空気が読めてないので戦いの流れで移動して貰いました。

この部屋は使われていないのでカーペットが敷かれているだけで家具は殆どないですし、大部屋なのもあってアンブレラさんも存分に剣を振るう事が出来ます。


「だからどうした?別にわざわざ苦手な攻撃を仕掛ける必要もないんだ。朝までこうしてにらめっこしてても俺は良いんだぜ?何なら、朝食も用意しておいてやるよ」


自分で言っておいてなんですが、結構いい考えだと思いました。

アンブレラさんやサラちゃん、シドラさん、グラディエルちゃんと5人で食卓を囲んで談笑しながら食事が出来たら、暫く良い夢が見れそうです。


「だから――こうするのよッ!」


グラディエルちゃんの持っていたランタンを奪い取ったアンブレラさんは、そのまま剣で殴って壊してしまいます。

油で着いていた火が、ゆっくりとこの部屋に広がってしまいました。


「一体何をするんだ?」

「悔しいけど私が攻めても不利だわ、ならアンタが攻めざるを得ない状況を作れば良いと思ったのよ。どうする?このままだと焼け死ぬわよ?」

「お前も死ぬぞ?」

「負ける位ならアンタと一緒に死んだ方がマシだわ」


アンブレラさんの演技に熱が入ります。先程はアンブレラさんになら家を壊されても良いとは思っていましたが、まさか火を着けるとは思っていませんでした。

都会の人のごっこ遊びってこんなに本格的なんですか?正直もう遊びの枠は超えている気がするのですが……。

なにより、家は燃え尽きても良いのですけど、皆が危ないです。


「――もうやめにしません?これ以上は無意味ですよ」


流石に演技するのを止めて、アンブレラさんを説得します。消火してから今日は泊まって、明日朝ごはん食べてからまた遊びましょうよ。

家や命を犠牲にしてまでやる遊びに意味なんてあるんですか?


「まだアンタの勝ちだと決まったわけじゃないわ」


アンブレラさんの演技は止まりません。あの目は本気でこの遊びを完遂するという強い意思を感じますね……。

正直、見誤っていました。都会の人はこんなに遊びに本気になるなんて――これから街の人と遊ぶ時は気をつけましょう。

それにしても、最後までやるならばせめて急いで終わらせなければいけません。


「仕方ないな」


アンブレラさんの元に一気に踏み込んで真っ直ぐ掌底を放ちます。

しかし、側に居るグラディエルちゃんを巻き込まないようにするのと、アンブレラさんを怪我させないように意識してしまっているせいか、上手く身体が動きません。

あっけなく下がられて回避されてしまいました。毎回お腹の辺りを狙っているのも原因でしょうか。本当は顎を狙いたいのですが、ズレて当たったら大変ですし……。


伸び切った腕を狙って、アンブレラさんが抜剣してきます。腕を捻って剣身を掴もうとしますが、もう振り切られています。これは流石に無理ですね。

腕刀を使い無理矢理受けます。斬られないように威力を殺しましたが、嫌な音がしました。


「どうしたの?さっきと違って随分とやり辛そうじゃない」


アンブレラさん、今勇者ロール中なんですよね?何だか今の私より魔王っぽいですよ。

しかも、私の左腕が駄目になりつつあるのを見て、一気に勝負を決めてきます。


「――これで終わりよ」


アンブレラさんは踏み込むと、完全に剣の間合いから感覚の無い腕を狙って斬り下ろしてきます。全力ですね、身体を捻って無事な腕で逸らす余裕はありません。

仕方ないので腕を差し出します。剣が食い込むと、完全に力が全く入らなくなりました。切断されていないのは運が良いですね。


正直、参りました。もう私の負けです。体術使いが腕を駄目にしたら終わりでしょう。

でも、まだアンブレラさん剣を振るってくるんですよね。まだ私が戦えると思っているのでしょうか……。

もう避難する時間も無いですし、仕方ないですね――


もう一度、動かない腕の方から剣が迫ってきます。今度は首を狙っているようですね、躱せますがこれ以上は時間の無駄でしょう。

アンブレラさん、お見事です――寸止めしてくれますよね?

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