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出会い2

「油断しやがって…ざまぁみろってんだ」


キリヒトの左腕がミシミシと再生し、首を落とした右腕は元通りくっつく。

両腕で這い上がり、天使の死体を確認しようとする。

キリヒトがやっとの思いで這い上がると、首のない体が落ちた頭を拾っていた。


「今のはいい攻撃だ。再生能力といい、存外やるじゃないか」


手に持たれたまま、首が笑顔で話す。


「不死身かテメェ…!」


這いつくばっているキリヒトの両手の指が再び刃物のような形状に変化する。


「お互い様だと思うがね。それに、もう身構えなくても結構だ」


手に持った頭を動かし、キリヒトの目線の高さに合わせる。


「立派に私の体を傷つけてくれたからな。合格だ」


キリヒトは突然、自分が元通り立っていることに気付いた。

さらに、雨も止んでいる。


「な!体が…!」


辺りを見回すと、クレーターも、折れた木ですら元通りになっていた。

天使が腕を上げて頭を胴体に戻すと、ドチュ、と音を立てて元通り体にくっつく。

さらに首の動きを確かめるように二、三度動かす。


「協力してくれ。我々の戦争に」


怒るキリヒトの顔にヒビが入る。


「イヤだね。テメェ何様のつもりだ。素直に言うこと聞くとでも思ってんのか?」


「お前が今のような体になったこと原因が関係しているとしてもか?」


顔にさらにヒビが入り、キリヒトの目が黄色く変化する。


「赤眼の男に復讐を果たさせてやる。私と共に来い」


キリヒトは、どこまで見通しているのかと不気味に感じながらも口を開いた。


「…嘘だったら、テメェの仲間も含めて皆殺しにしてやる」


目を閉じて、再び開いた時にはキリヒトの顔は元に戻っていた。


「協力してやるよ」


ナシャエルは満足そうに頷いた。


「それで…あー、テメェはこれから俺をどうするつもりだ?」


キリヒトが自分の体をあらためながら尋ねる。


「私の名はナシャエルだ。まずは我々の本拠地に来てもらう。それと…」


ナシャエルは丘の下に広がるスラムを指さした。


「ここにはしばらく戻ることはないが、構わないか?」


そう言われて、キリヒトは今まで自分がいたスラムを見下ろした。


「別に、ここにいる理由は…」


少しだけ、キリヒトの顔にためらいが浮かぶ。

だが、すぐにそれは消えた。


「いいさ、行こう」


「そうか」


キリヒトが頷くと、ナシャエルはローブから一枚の布を取り出し何かを呟き始めた。


「何だその布?」


首をひねるキリヒトの質問には答えず、布を大きく広げてお互いを包み込んだ。


「わっ!…!」


二人を包み込んだ布はグルグルの回転し、少しずつ小さくなって最後には消滅した。

後にはただ、以前と変わらない景色だけが広がっていた。



バサバサと何もない空間から布が現れ、先程とは逆に布の中から二人が姿を現す。


「何だこれ…」


キリヒトの目の前には大きな町と城が広がっていた。

だが、そこで生活しているのは人ではなかった。


「おやおやナシャエルさん!おかえりですかな?」


人が座れそうなボールが、ピョンピョンとはねながら話しかけ、二人の横を通り過ぎる。


「天使殿は忙しいんだ、余計なことを話すんじゃないよ!」


その後ろを喋るコマがまわりながら追いかけていく。


「いや、いいさ。君たちも頑張ってくれ」


ボールとコマにひらひらと手を振り、ナシャエルがキリヒトの方を向く。


「ここが私達の本拠地、ヌイドー王国だ」


「物質種族…しかもこれだけの数が集まる場所があるとは」


キリヒトが驚きを隠せない表情でそう呟く。


「見るのは初めてか?」


「S.L.ウォールに来るのは大抵が死体か、死にかけてるヤツだったからな」


物質種族。この世界に生きる、人間以外の知性を持った生命体である。

その姿形は様々で、『生きているモノ』と呼ぶべきその特異な姿と生態から一般的には激しく

弾圧されており、現在、物質種族にとっての安住の地はほとんど無い。

このDF王国はその数少ない安住の地の一つであり、大半の物質種族がここに集まっていた。

なお、王国と謳ってはいるが民主制である。


「見慣れた光景じゃねえ」


人形がスライムと話す光景を見て、キリヒトはそう言った。


「直に慣れる」


キィキィと音をたてるプラスチック製の車に手を振ってから、ナシャエルは城に向かって歩き始めた。


「だといいがな」


大股で歩く金属製の巨人を見て、キリヒトはそう呟いた。


城の中に入ったキリヒトは国王の元に案内された。


「やぁ、クマ。新しい仲間を連れてきた」


「何だ?まさかその後ろのヤツじゃないよな?」


国王は年季の入った人間大のクマのぬいぐるみだった。

随分とくたびれており、体のあちこちに縫い目があり、目に至ってはほつれてとれる寸前といった有様だ



「いや、私の後ろの人間だよ」


「ふざけるな!そいつは人間だろうが!」


机を思い切り叩くと、クマの腕がぽふん、と凹んだ。


「人間なんかを俺達の仲間にできるか!ここは物質種の国だ!」


クマが柔らかい手足を振り回して抗議する光景を、キリヒトは複雑な表情で見ている。


「私だって物質種ではない」


ナシャエルが椅子に腰掛けてそう言った。


「しかしだな…!」


「ちょっと待てよ」


机に登って、キリヒトはクマを指さした。

蹴り飛ばされた燭台が派手な音をたてて落ちる。


「俺はこんなふざけたヤツの仲間になりに来たのか?子供にすら負けそうだぞ」


「机から降りろ、小僧」


クマの表情は変わらないが、明らかに怒っていることが分かる。


「ナシャエルには負けたが、てめぇに負けたわけじゃねえ。

 協力してほしいならそっちから…」


キリヒトが喋り終わる前に、クマの指のない手がキリヒトの足に巻き付いた。

それにキリヒトが抵抗するよりはやく、クマは足を強引に引っ張り近くの椅子に叩きつけた。

椅子は粉々に砕け、破片が何本かキリヒトの頭に刺さる。

残骸に埋もれ、頭から血を流すキリヒトにクマが顔を近づける。


「俺は人間が死ぬほど嫌いなんだ。仕事付き合いならともかく、お前のような

 クソガキには容赦しないぞ」


「うるせぇよ、薄汚れたぬいぐるみヤローが」


キリヒトは掴まれた足を振りほどき、そのままクマへの攻撃に移る。

高速で放たれた蹴りをクマはあっさりといなし、反対にカウンターの拳をキリヒトに叩き込む。

柔らかい綿が詰まっているはずの腕が、鋼鉄にも匹敵する硬さでキリヒトの腹部を砕く。


「ぐっ!!」


キリヒトの口から血が吹き出す。


「俺に喧嘩を売るなんざ300年早い」


そう言って、クマは身動きがとれなくなったキリヒトを壁の端まで蹴り飛ばした。

クマは血のついた手を拭き、ナシャエルの方を向いた。


「こいつが本当に役に立つのか?」


「そう言ってやるな。S.L.ウォールでは一番の実力者だったんだ。それに…」


クマはナシャエルの向かいの椅子に腰掛けた。


「それに、何だ?」

 

「こいつはシルヴァ連邦での計画に関係しているらしい」


「何!?シルヴァの計画だと!?」


「おい、ちょっと待てよ」


キリヒトは立ち上がり、口の周りの血を拭った。


「フン、体だけは頑丈だな」


その言葉にキリヒトはクマを睨むが、すぐナシャエルの方を向いた。


「どうして俺のことをそこまで知ってるんだ?」


キリヒトも別の椅子に腰掛け、頭に刺さった椅子の破片を引き抜き始めた。


「S.L.ウォールのことはともかく、俺が生まれた場所のことまで…」


「簡単なことだ。記憶を読んだ」


信じられない、といった様子でキリヒトが黙り込む。


「天使にとってそれぐらいは造作もない。

 お前が何を見て、何をして…」


「何のために生きているか」

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