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延期の理由

 元の部屋に帰ると、見事などんちゃん騒ぎとなっていました。

テーブルに広がる料理の数々に、床に転がる酒瓶。いつからここは宴会場になった?


「リューイ様だけずるいれすよ、わらしらっれユーリ様を撫で撫でしらいろにー」


 セティーが、酒が入っているであろうコップを片手にワラルー獣人さん相手に管を巻いてます。


「俺ら、存在する意味無いよなー」


「どんな敵だって、ユーリ様に近付く前に凍りつくもんなぁ」


 騎士の二人はダウン系ですね。二人のいる一角の空気が凄く重いです。


 ミリーは、無言でひたすら杯を空にしています。彼女だけで何本の酒瓶を空にしたのでしょう?


「里長、これは?」


「持ち出せない食料をどうしようかという話になりましての。いっそ使ってしまおうという結論になり、なし崩しに宴会となりましたんじゃ」


 理性は保っているようですが、里長も顔が赤い事から結構呑んでいると思われます。


「ユーリちゃん、これはチャンスよ。潰れた獣人達をモフり放題出来るわ!」


「リューイ様、グッドアイデアです!」


 リューイ様もモフ仲間のようです。世界の管理をする方公認ですから、思う存分モフりまくりましょう。


 天国はここにありました。そこかしこに酔い潰れた獣人さんが転がり、耳をモフり放題です。

 二人でモフモフ祭りを開催しました。馬鹿ヒロインのせいで受けたストレス、残らず解消したので満足です。


「みんな、そんな状態で無理しなくても……」


「リューイ様をお見送りするのに、寝込んでなどいられません」


 出立するというリューイさんを見送るべく里の獣人さんが勢揃いしたのですが、大人連中の大半は青い顔をしています。

 うちの四人も例外ではなく、立っているのがやっとの状態。


「そこまでして呑みたいものかしら?」


「私も好んでは呑まなかったから分からないわ」


 打ち上げで呑む機会は多かったのですが、若い女性が飲みすぎたりしたら後が怖いです。 目が覚めたら知らない天井が目に入り、隣には共演者やスタッフが……なんて事になったら、下手したら女優生命が終わります。


「それじゃあユーリちゃん、後を頼むわ。獣人だけに肩入れ出来ないから、居場所の情報とか教えられないのが心苦しいけど……」


「存在が知られている里は情報が入っていますから。出来るだけの獣人さんをパナマに逃がします」


 心情的には獣人に肩入れしたいのでしょう。その分及ばずながら、全力で逃亡の手助けをさせてもらいます。


「私はジブラルタル西の森やカテガット北西の山の麓を上空から視察する予定よ。また会いましょうね」


 リューイ様の体が光を放ち、眩しさに目を手で覆ってしまいました。

 光が薄れるとそこにリューイ様の姿はなく、上空に大きなドラゴンが舞っていました。


 純白のドラゴンは里の周囲を一周すると、ジブラルタル領の方向に飛び去ります。


「ジブラルタル領とカテガット領ね。獣人の情報は無かったけど、そこに隠れ里があると」


 リューイ様、情報ありがとうございます。


「ユーリ様、私達も出立の準備を……」


「ミリー、パナマへの移動は明日にするわ」


 準備を促したミリーの言葉を遮ります。


「皆があんな状態じゃ、国境警備の兵に虐待したと嫌疑を掛けられるわ」


「それは私達が先に移動して説明すれば……」


「その後国境から街まで歩くのよ?大人があの状態で歩けるの?」


 治癒魔法では外傷しか治せないので、二日酔いは治せません。


「街に直接移動というのも却下よ。街には獣人だけじゃなく、人間の行商人も居るでしょう?私が獣人を逃がしている事が露見してしまうわ」


 結局、今日は休息をとり明日の朝に移動する事に決まりました。


「ユーリ様、申し訳ないですじゃ」


「他に予定がある訳ではないですから、お気になさらずに。私も今日一日モフれるので嬉しいですから」


 恐縮する獣人の皆さんの心的負担を軽減するため、子供達をモフれるメリットがあると言っておきます。


「ユーリ様、もしかしてそれが目的で出る日を延ばしたのでは?」


「そ、そんな事ある筈ないわ。セティー、ご主人様を信じなさい!」


「ユーリ様、泳ぎまくった目でそれを言われても、説得力がありません!」


 こうして大人連中は一日休んで体調を調え、私は子供達と遊びながらモフモフを堪能するのでした。

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