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愛人の正体

「その、冷血姫様、今回の件は王妃様には……」


 顔に汗を滝のように流しながらこちらを伺う子爵様。私が王妃様に気に入られているのは、有名な話です。

 街の兵士が敵対種族である獣人を街に引き入れていたなんて知られたら、家が傾く可能性もあるわよね。


「そんな事よりも、その門衛の家を捜索する方が先では?」


「はっ、そうです!おい、兵士を集めろ!私が陣頭指揮をとる!」


 門衛と兎獣人さんをうちで拘束したままガサ入れに同行しました。

 二階建ての一軒家に兵士が殺到して行きます。時をおかずに女性や子供が引き出されて来ました。


「これが愛人と子供ですか」


 家から出てきた人達の半数以上、三人の女性と五人の子供が獣人でした。


「はっ、これの愛人?冗談じゃないわ。私達はこれの妻や子供を人質に潜伏していただけよ。」


 ワラルー獣人の女性が吐き捨てるように言いました。


「おい、本当か?本当なのか?」


 門衛さんは一瞬驚愕を露にし、俯いて子爵の問いに返事をしません。


「子爵様、脅されていようと、手引きをしたのは事実。とりあえず捕縛すべきかと」


「そうですな。おい、全員牢屋に連れていけ!」


 口を出した私を、先程のワラルー獣人のお姉さんが凄い形相で睨んできます。


「子爵様、最近獣人の入荷が少なくて魔法の練習を満足に出来ていないのです。あれらを譲ってもらう訳にはいきませんか?商品の出所を話したりはしませんよ。商取引のマナーですからね」


「おお、王国の守護神たる冷血姫様が練習を満足に出来ていないのは問題ですな。喜んでお譲りいたしますとも!」


 要約すれば、「王家に黙ってるから、ある全員頂戴」「オッケー!」です。


「出来れば、牢内で食事を与えて貰えませんか?的は活きが良い方が練習になりますから」


「了解しました。食事を与え、手荒に扱わぬよう厳重に申し付けます。ただ、取り調べはさせていただきます」


「それは必要ですね。私も同席させて貰えませんか?」


 きつく取り調べをして怪我を、なんて事を防ぎたいですからね。


 兵士の詰め所にある牢屋で、子爵と私が同席し事情聴取が始まりました。


 切っ掛けは、街の外に門衛さん一家が遊びに出た時。馬車でピクニックに出たそうです。


門衛さんの息子が泣き声を聞き声の方に行ってみると、ワラルー獣人のお姉さんが倒れていて、横で幼いワラルー獣人の子供が泣いていたそうです。


 門衛さんは敵対種族である獣人の手助けをするつもりはなかったようですが、息子さんが助けてあげてとお願いしました。 可愛い息子の願いに負け、馬車に乗せ連れ帰って看病したのが始まり。


 ワラルー獣人のお姉さんは栄養失調と疲労だったらしく、程なく元気になりました。彼女は食べ物を妹にほとんど食べさせていたそうです。

 お姉さんが動けるようになった時には、門衛さんの息子とワラルー獣人の妹さんはかなり仲良くなっていました。

 奥さんも賛成したので門衛さんはワラルー獣人のお姉さんに滞在を勧め、同居する事に。


 その後、物資調達の為に街に潜入し追われていた獣人さんと、奴隷として捕まり逃げ出した獣人さんを保護してこの人数となったそうです。


「つまり、愛人と偽って獣人を匿っていた。隠し里に必要な塩等の補給にも手を貸していたのね」

「獣畜生のくせに、恩義を感じて庇ったのか。まあ、無駄に終わったがな」


 脅していたというのは、ワラルーお姉さんが門衛さんを庇ってついた嘘。義理堅い獣人らしいエピソードです。


「大体の事はわかりましたね。他に共犯も居ないようですし、後は里を潰せば獣人の脅威は無くなりますね」


「そうですな、冷血姫様には感謝してもしきれません。何卒宜しくお願い致します」


 深々と頭を下げる子爵をあとに、今度こそ街を出ます。


「ふう、気付いて良かったわ。これであの人達もパナマに連れて行けるわ」


「そうですね。しかしユーリ様、よくあの兎獣人に気付きましたね。私達でも気付けなかったのに」


 獣人であるミリーより、人間の私の方が感覚が鈍いですからね。でも、事がモフモフになれば話は別です。


「私のモフモフレーダーは特別よ。あんなにモフりがいがありそうなモフモフを見逃すなんて、まずあり得ないわ」


「ブレないですねぇ。ユーリ様のモフり愛は、どれだけなんですか?」


「教えてあげるわよ、体に直接ね」


 その後、馬車の中でミリーの悲鳴が響き渡りました。

 目的地に着いた私の肌はツルツルのテカテカで、ミリーが酷く窶れていたのは秘密です。

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