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副収入の正体

「子爵様、本日お伺いしたのは、この領内に居座る獣人の情報を頂きたいからですわ」


「奴等の……冷血姫様が加勢していただけると?」


 子爵の顔に安堵の色が浮かびました。私には実績がありますからね。


「ええ。微力ですが、お力添えを出来ればと思いまして」


 子爵は喜んで、自発的に情報をくれました。

 この領内の獣人さんは、深い森の中に里を作り暮らしているそうです。


 騎士団で攻めても、まともな道もない森の中では組織だった攻撃は出来ません。

 森は獣人のホームグランドであり、行軍中にゲリラ的な攻撃を受け消耗。撤退するしかなくなるそうです。


「それなら魔法で対処出来そうです。殲滅に行くとしましょう」


 この三年間で、魔法の腕は更に上がりました。森の中で訓練していたので、森の中も苦になりません。


 子爵から現地への騎士に渡す書状を受け取り、子爵邸を辞しました。

 馬車に乗り、獣人の里がある最寄りの村に移動しようとしたのですが。


「ちょっと馬車を停めてちょうだい」


 門へと向かう途中、モフモフレーダーが反応しました。道の端を歩くローブ姿の小柄な人影です。

 馬車を降り、セティーとミリーを従えてその人に近付きます。


「そこのあなた、ちょっと……セティー、ミリー!」


 話しかけた瞬間、脱兎の如く駆け出した人影。二人に指示を出し捕縛してもらいました。

 素早さは中々のものでしたが、ハンターである狼獣人二人から逃げおおせるには少々実力が足りなかったようです。


「離して!私が何をやったって言うのよ!」


「何故逃げたのかしら?何もしていないなら逃げる必要は無いわよね」


 両手をセティーに捕まれた人物の声は高く、少女のようです。

 深く被っているフードを外すと、ピョコンと茶色い耳が飛び出しました。


「ネザーランドドワーフの獣人だったのね」


 脱兎の如く逃げるわけです。文字通り脱兎だったのですから。


「あなたたちも獣人でしょう、お願い、逃がして!」


 騒動を聞いて門にいた門衛が二人駆けてきました。


「なんだなんだ、何を騒いでいる!」


「街に侵入していた獣人を取り押さえただけよ」


 端的に事実を述べると、門衛の一人の顔色が変わりました。先程芸術的な土下座を披露してくれた門衛ですね。


「冷血姫様、ありがとうございました。そいつはこちらで取り調べます」


「あら、これは私が捕まえたのよ。私が使うわ」


 土下座の門衛さん、関わりがあるみたいですね。引き渡しを断ると、明らかに狼狽しました。


「し、しかし、これはベーリング領の問題ですので……」


「やけに拘るわね。これが私の手にあるとまずい事でも?」


 街に入れるはずのない獣人に、彼女が捕まり狼狽える門衛。分かりやすい事この上ないですね。


「獣人の排除は国の方針よ。それに逆らうという事は、反逆者も同然。素直に吐いた方が良くなくて?それとも、氷柱になって反省したいのかしら?」


 右手に氷の鷹を生み出し、威嚇させます。本物の鷹のように翼を広げ、視線を向けさせると門衛は観念しました。


「も、申し訳ありません!金を渡されて手引きをいたしました!」


 後方三回転で背後に跳び、着地と同時に土下座しながら白状しました。

 捻りが無い分前回より劣ると思われがちですが、前回は屈伸で今回は伸身なので難易度は上がっています。


「その門衛も拘束して子爵様の所に戻りたいのですが、問題ありますか?」


「いえ、問題ありません。冷血姫様のお手を煩わせてしまい、申し訳ありません!」


 私はこの領内で何の権限も無いので、勝手に領の兵を拘束するのは問題があります。

 なので断りを入れ、門衛を拘束して子爵邸へとんぼ返りすることになりました。


 子爵邸の門前まで来ると、馬車が戻った事に気付いた門番が慌てていました。

 二人のうち一人が屋敷の方に走って行きます。


「別れたばかりですまんが、子爵様に面会をお願いしたい」


「今、邸に使いが走っております。一体何事でしょうか?」


 街から出た筈の客人がすぐに戻ったのです。異常があったと思うのは当然ですね。


「冷血姫様、何かありましたでしょうか!」


 ベーリング子爵が息を切らせて走ってきました。馬車を降りて応対しましょう。


「子爵様、門の近くで獣人を発見し捕縛しました。そして、門衛が手引きして侵入させたと自供しました」


 馬車から降ろした獣人と門衛を見せると、子爵はこの世の終わりのような絶望した表情になりました。


 すぐに獣人さん達の保護に向かうつもりでしたが、少々この領都で仕事をする必要がありそうです。

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