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掌握

「さて、騎士団の皆様。あなたたちには選択してもらいますわ。一つは、私に従い作戦を成功させる。もう一つは逆賊として処分される」


「我ら騎士団とお前。どちらを陛下は信用すると思うのだ!我らには長年陛下をお守りしてきた実績がある!」


 普通に考えれば、騎士団と幼児では騎士団を信じるでしょうね。


「それはご心配なく。この会話は記録用の魔道具で記録していますから」


 その辺に抜かりはありませんよ。常に記録用の魔道具を持ち歩くように心掛けていますから。


「処分の際には、家族も一緒に送りますから安心して良いですよ」


 残される家族の心配をしないよう、一緒に逝く事も説明してあげます。

 心残りがないようにフォローも万全です。


「貴様、罪のない家族にまで手をかけると言うのか!」


「家族に累が及ばないと思う方が不思議ですが?国への反逆は、一族皆死刑です。五歳児でも知っている常識では?」


 自分達が謀叛者だという自覚が無かったようですね。ここまで脳筋しかいないと、今まで組織として残っていた事に驚きです。


「俺に手を出したら、カンモン侯爵家が黙っちゃいないぞ。他の者たちも実家の貴族家が背後にいるんだ!」


 実力が及ばないとなったら、親の七光りですか。こんな者たちを纏める騎士団長さんにちょっと同情します。


「ご心配なく。その家ごと潰されるのですから。後任の心配もありませんよ。冒険者ギルドの件で功績を挙げた文官への褒賞になるでしょうから」


 新たな領地持ちになれるのです。文官達は嬉々として取り潰しの手続きをするでしょうね。

 派閥の貴族とて、罪名が反逆罪で証拠つきでは庇えないでしょう。

 下手に擁護しようものなら、加担しているから弁護するのでは?と共倒れになる可能性が大です。


 貴族の世界は足の引っ張り合い。それを解さぬ愚か者が居る家は、力を失い消えていく弱肉強食の世界です。


「さて、もう一度だけ聞きます。あなた方の決断を聞かせて下さいな」


「我々はユーリ嬢に従います。なので……」


「ええ、王族の方々には報告しないわ。作戦に必要な説明をします。ちゃんと働いて下さいね」


 これで騎士団全ての掌握は終了しました。ここまでやるつもりは無かったのですが、何故こうなったのでしょう?


「五日後の昼に道具が王都に到着します。うちの馬車ですので、素通りさせて下さい。その日から内偵を行いますが、手を出す必要はありません」


「第二騎士団に手を出さぬよう通達するべきです。その獣人が捕らえられては不味いのでは?」


 もっともらしい意見ですが、その必要は無いと思います。


「第二騎士団から情報が漏れる方が怖いわ。それに、少々道具が減った所で支障はないでしょう。どうせ終われば壊す物なのですから」


 表情一つ変えずに答えれば、騎士達は皆ドン引きしてます。散々獣人を奴隷化して潰しておきながら、何を今さらと言いたいです。


「獣人の情報が集まったら、偽の脱出計画を流させ獣人を集めます。そこにあなた方とマゼラン家の騎士が包囲し一網打尽にします。質問は?」


 無いようですね。まあ、第一騎士団の仕事はうちの馬車を素通りさせる事と最後の包囲に参加する事だけです。

 いくら脳筋でも、これくらいやり遂げるでしょう。


「捕縛する日は、情報の集まり次第となります。なのでこちらから日時を知らせますから、そるまでは日常業務をこなして下さい。では今日はこれで終わります」


 予想外に長く時間をとられました。早く帰って白虎君を抱きしめてモフモフしたいです。


「ちょっ、ユーリ様!一つお願いが……」


「何ですか?手短にお願いします」


 帰れると浮かれた所に水を差されたので、ちょっと不機嫌な声になりました。


「この魔法を解いていただければと……その、お願い致します」


 殺気も乗っていたようで、完全にビビった騎士の声は蚊のなくような小さな声でした。


「仕方ないですね。特別ですよ?」


 本当はお仕置き代わりに一日放置しようと思ったのですが、懇願され時間を食うのも嫌なので解除して帰りました。


 その日の夜、王都内某所の酒場では酔っぱらい愚痴を言い合う大人の姿がありました。


「お前、娘にどんな教育したんだよ?うちの騎士団、嬢ちゃんに頭上がらないぞ?」


「メイドが普通の教育しただけの筈なんだが……色々と規格外に育ってなぁ」


「あのまま大人になったら、簡単に国を掌握しそうで怖い……」


「王子の婚約者だし、良いんじゃね?ただ、世界すら征服しそうで怖い。王子が抑えてくれれば良いが……」


 まず不可能である。とんでもない娘を持った辺境伯と、その親友の悩みは深い。


 そんな二人の心情などお構いなしに時は過ぎる。


 王都からの獣人一掃作戦は、待ったなしで実行されるのだった。

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