表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
71/197

存亡の危機

 屈服した騎士団長さんに、今回の作戦に参加してもらう第一騎士団の半数の騎士を集めてもらいました。


 第二騎士団と第三騎士団は日常の業務があり、協力してもらうにはローテーションの変更など煩雑な手続きが必要となります。

 その点第一騎士団ならば全員が王城に詰めているので、一日借りるだけなら比較的手続きは楽です。


 もっとも第二と第三はモラルに問題があるので、情報漏洩の可能性を考えると第一しか頼めないのですがね。


 騎士団本部の会議室に集めて作戦を説明すると、やはり反対の声が上がりました。


「そんな卑怯な手段、使う必要はありません」


「我ら騎士団だけで掃討作戦を行うべきです!」


 予想はしていましたが、見事に考えなしな意見が飛び出ました。


「つまり、騎士団は王妃様が認可された作戦に従えないという事ですね?」


「い、いえ、作戦は良いのですが、獣人を囮に使う必要はないと言いたいのです」


 王族の決定に従わないのかと問えば一瞬狼狽えましが、持論を曲げずに主張してきました。


「そうですか。それならば、スラムに居座る獣人の情報を出して頂戴」


「あ、情報はまだ……」


 あるはずがありません。しかし、はっきりと無いとも言えないでしょう。

 無いと言えば、それを得るための囮の必要性を認めざるを得なくなり、あると嘘をつくと何故情報があるのに獣人を野放しにするのかと追及されます。


「情報は無いようですね。居場所の情報もなく、獣人の一掃が可能なのですか?可能というならば、具体的な方法を提示して下さいな」


「それは、我ら騎士団が本気になれば直ぐに調べはつく!」


 一人の騎士が焦って叫びました。でもね、それは墓穴を掘っただけよ。


「そうなのですね。つまり、騎士団は取り締まるべき獣人をわざと逃がしていたのね。国の命に逆らい獣人を逃がすという事は、国に対して叛意があると解釈して宜しいかしら?」


 言い逃れするつもりが、騎士団に叛意があると取られ叫んだ騎士は青くなりました。

「彼は言葉が足りなかったのです。我ら第一騎士団が本気を出せばという事なのです」


「治安維持は第二騎士団の務め。我々第一騎士団には手が出せなかったのです」


 別の騎士がフォローを入れました。組織の縦割りを理由にしますか。


「第二騎士団は無能という事ですね。そして、それを知りながら騎士団長はそれを放置していたと」


 ならば第二騎士団と総責任者である騎士団長さんの無能説をぶちまけます。

 根拠は騎士の発言なので、否定は出来ないでしょうね。


「ヒラの騎士ですらわかる事を放置し、獣人を放置した騎士団長の責は重いわね。それとも、騎士団長はヒラ騎士以下の無能者なのかしら?」


 騎士全員のこめかみに青筋が浮きました。相当お怒りのようです。


 通常、無能者が騎士団長の位に就くことはありません。

 例外は、コネや権力でその地位を手にいれた場合です。


 つまり、先程の私の言葉は「あんた達の団長は、コネや権力で地位を得た卑怯者だ」と言ったに等しいのです。


「い、言わせておけば!決闘だ!」


 堪忍袋の緒が切れたのか、一人の騎士が立ち上がり剣を抜きました。

 私は無言で扇をその騎士に向け、右腕を氷の矢で射抜きました。


「何をする!」


「辺境伯令嬢といえど、只では済みませんぞ!」


 立ち上がり、口々に罵る騎士たち。言葉は通じそうに無いですし、実力行使といきましょう。


 扇を広げ一振りすると、室内を冷気が満たしていきます。それと同時に床に氷が広がり、騎士たちの足を拘束しました。


「黙っていただけないかしら?耳障りだわ」


 念のため氷の玉を二つ両脇に浮かべ、いつでも射撃出来る体勢を整えます。


「まず、あなたたちは大きな勘違いをしているわ。この作戦は私とマゼランの私兵、囮が居れば遂行出来るのよ」


 人では私兵で確保出来るし、私の魔法を使えば一網打尽にする事は難しくありません。


「それでも騎士団に話を持ってきたのは、騎士団の面子を考えたからよ。治安を守る騎士団が何もせず、辺境を守る私達が王都の治安を回復させたらどうなるかしら?」


 スラムの一掃を他者の手で達成された第二騎士団は、存在意義を問われるでしょうね。


「王領草原の魔物討伐を怠けていた第三騎士団に引き続き、第二騎士団まで治安維持を怠っていたとなったら、騎士団は存続出来るかしら?」


 残る第一騎士団は、王族の警護が任務だから目立った活動はしていない。

 平民から見れば、それは無いも同然です。


「あなた達が騎士団を潰したいと言うならばそれで良いでしょう。無能な逆賊の謗りを受けながら、騎士の誇りとやらを貫きなさいな」


 脳筋にも分かりやすく言ってあげたら、先程までの勢いは完全に無くなりました。


 もうちょっと政治的な感覚を身につけて欲しいと言うのは贅沢でしょうか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ