作戦の成否は、準備で決まる
一先ず虎の獣人さん達はセティーを付けて森の屋敷に滞在してもらいます。
作戦の前に根回しをする必要があり、日数がかかります。
その間王都の屋敷に居させる訳にいかないので、根回しが終了後来てもらう事になります。
セティーを付けた訳は、食事です。全員、調理が出来ないらしいのです。
試しに肉を焼いてもらったら、見事な炭が完成しましたよ。
と言うわけで、今回は騎士二人とミリー、私と白虎の子で王都入りします。
白虎を連れていくのは、人質だからです。道中モフる為ではありません。
王都屋敷に着くと、ミリーが抱く白虎を目にした使用人が驚いていました。
「この子は、王都の獣人を炙り出す人質にするのよ。道具にする虎族の人質だから、逃がさないように。私の許可なく危害を加えちゃダメよ」
説明すると、一応納得されました。
「お嬢様、もう一人の獣人はいかがなされたのですか?」
「領地で手先にする虎族を見張らせてるわ。根回しが終わったら虎族を連れてくる手筈よ」
逃げていないし、殺してもいないと伝えると使用人一同がほっとしていました。
そんなに彼女らの後釜になるのが嫌ですか。心配しなくても、あなた達じゃ後釜になれませんよ。
メイドを一人王城に走らせ、王妃様への面会を求めます。一番上に話を通しておけば、後はスムーズに動けますから。
翌日の午前中にお城に伺う事になりました。普通はもっと待たされるのですが、やけに早いですね。
王城に伺うと、王妃様の私室に通されました。余人に話を聞かれないのは助かります。
「ユーリちゃんから来てくれるとは嬉しいわ。何があったの?」
「面白い物が手に入りまして、それを使って王都の獣人を一掃したく思います」
私はお茶で喉を湿らしながら、虎族を手に入れた事、白虎の子を人質に言いなりに出来る事、彼らを使い王都の獣人を一網打尽にしようと考えた事を話しました。
「それは試す価値がありますね、成功すればスラムの治安が良くなります。出来る限りの便宜を諮りましょう」
「では道具となる虎族を、極秘利に夜中に王都へ入れたく思います。彼等がこちらのモノだと漏れると失敗いたします。それと、第一騎士団の協力をお願いします」
やろうと思えば虎族とうちの騎士でも作戦は完遂出来ますが、騎士団を巻き込み手柄を分ける事で、妬みや面倒を分散させたいのです。
「……本当にユーリちゃんは気の利く良い子だわ。うちのバカ息子と交換したい位だわ」
止めて下さい、王妃様。毎日貴女と顔を合わせる事になったら、胃に穴が開きます。
ついでに、アレが息子になったらお父様はキレて文字通り切り捨てます。
なんて思いを口に出す事も出来ず、黙って愛想笑いを浮かべます。
「これを騎士団長に渡しなさい。ユーリちゃんの指示に従うよう書いておいたけど、四の五の言うようなら私に言いなさい」
「お気遣いありがとうございます。王妃様の期待に応えられるよう、全力を尽くします」
書状を受け取り、御前を辞した私は、その足で騎士団長の執務室を訪ねました。
執務室の机は、前回程ではありませんが書類の山が鎮座しています。
「これは冷血姫様、ようこそいらっしゃいました。おい、お茶と茶菓子を!」
執務室の傍らにある応接セットのソファーに座り、王妃様の書状を渡します。
「ふむ、面白いですな。我々には思い付かない作戦です。しかし、反発する者も出るでしょうな」
「卑怯だ、騎士道に反する、ですか?」
無言で頷く騎士団長さん。彼も内心では快く思っていないのでしょう。
「そんな騎士団に相応しくない者が居るのなら、私が説き伏せます」
「そこまで言いますか?騎士でないあなたが」
誇りを傷つけれたと思ったのか、僅かに怒気を放つ騎士団長さん。
「騎士団は、王族に仕え王族と国を守るのが存在意義の筈。王妃様が決定なされた、スラムの治安回復の為の作戦を拒むのは、騎士団の存在意義を否定するのでは?」
王族の命令が正しいのか、治安は本当に回復するのかとのツッコミ所はあるのですが、表面上は正論に聞こえます。
騎士団長さんは反論出来ず言葉を失いました。
「騎士団の存在意義を否定する騎士は、騎士と言えるのですか?騎士の本分を忘れ、私情で発言する者を立派な騎士と言えますか?」
勢いに任せて畳み込めば、騎士団長さんは項垂れました。
「騎士でない五歳の小娘ですら分かることを、栄えある王国の騎士が分からないとは」
「団長たる私の不徳。ユーリ嬢の仰る通りです」
騎士団長さんの撃破に成功しました。後は文句を言う騎士を個別に叩きます。
頭と口で社交界という戦場を戦い抜く貴族に、武器でしか戦わない騎士が勝てる筈はないのです。
早いとこ仕事を終わらせて、帰って白虎をモフりたいんです!




