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レイナの断罪

「面白い事を言うわね。国境を守り、国を守護する一族の直系たる私が大罪を犯している?男爵令嬢風情が、軽々しく口にして良い事ではありませんよ?」


 確たる証拠があり、処罰が確実な状況だとしても時と場所を選ぶべき。

 自分達が正しく、絶対に私を断罪出来るという自信があるのでしょうね。


 ある意味、それは正しい。「神の愛をあなたに」というゲームの中であれば、彼女が告発するであろう罪で私は断罪されるのだから。

 でも、ここはゲームの世界じゃない。似てはいるけど、私達にとっては現実の世界。


「あなたは罪のない獣人達を虐殺して、彼らの怒りを買ったわ。今は何とか持ちこたえているけど、パナマ王国との戦争になるかもしれない」


 レイナは言葉をきり、沈痛な面持ちで俯く。少しして私が何も言い返さないと判断し、続きを語り出した。


「私もケント様達も、それを止めようと必死で頑張った。でも、あなたが権力と強い魔力で獣人達を沢山殺してしまった!そのせいで戦争に……更に多くの人達が犠牲になるのよ!」


 涙を拭こうともせず、私を睨むレイナ。王太子は私が何も言い返せないと思い、笑みを浮かべている。


「貴様が獣人達を虐殺したのは紛れもない事実。国へ多大な損害を与えた罪で処刑する。ノキーン、やれ!」


「はっ、畏まりました。ユーリ・マゼラン、王太子殿下の命により拘束する。抵抗しても無駄だぞ、この会場には魔法を封じる結界が張られている」


 勝利を確信し、笑みを浮かべる王太子とレイナ。

 騎士候補である大男のノキーン・スカゲラクに対し、私は普通の貴族の令嬢。

 強い魔力で高い戦闘力を誇るけど、魔法が使えなければ鍛え上げた騎士候補に勝てる筈はない。


「本当に……本当に愚かですわね。あなた達は何を口にしたのか理解していますの?」


「悪逆非道な令嬢の罪を暴いただけよ。私達は正しいわ!」


 ゲームなら、私はノキーンに拘束され投獄。裁判もなしにお父様と処刑される事になる。


「ここはゲームの中ではないのよ。悪役令嬢が悪役令嬢の行動を取ったからと言って、ゲームと同じ歴史になるとは限らなくてよ?」


 私を捕まえる為に伸ばされたノキーンの腕をかわし、一歩横にずれて扇でノキーンの眉間を叩く。

 怯んだ隙に足を掛けてバランスを崩し、掴む物を無くし宙に浮いていた腕を引っ張った。


「なっ、ノキーン!」


 不意を突かれ、ノキーンは為す術もなく床に叩きつけられる。私は閉じた扇を再び開き、口許を隠す。


「未婚の女性に触れようとするとは、はしたない騎士候補もいたものですわ」


 空中で一回転し背中を強か打って呻くノキーンを見下ろす。パーティー会場に居るものは皆、絶句してただ立ち尽くす。

 お父様も硬直してますわね。お父様の前では近接戦闘は見せていませんでしたか。


「な、な、何なのよ!何でそんな事が出来るのよ!」


「女優をやる以上、殺陣も出来なければ出演する作品に制限が出るわ。だから武術も一通り修めた、それだけよ」


 アクションシーンを代役無しで演じる事が出来れば、出演のオファーを増やす要素になる。役を貰える女優になるには、多大な努力が必要なのよ。

 それでもコネで仕事を横取りされる事もあったけどね。それをはね除ける力と根性がないと、弱小プロの女優なんてやってられないわ。


「あなたも転生者だったの?でも、シナリオ通りに動いてたのに!」

「ネット小説では、悪役令嬢のざまあも主人公のざまあ返しも定番よね。だからシナリオ通りに事を進めて油断させてたの。上手くいったと勝利を確信したのに、ひっくり返された気分は如何?」


「まだよ!あなたが大罪人である事は変わりないわ。ノキーンを退けても国中の騎士や魔法使いを相手に出来るかしら?」


 まだ自分達が勝つと思っているみたいね。ならば引導を渡してあげましょうか。


「私が大罪人?何の冗談かしら?私が獣人を狩っていたのは、国の方針に従っていたから。つまり、獣人を狩る事は罪じゃないのよ。それを罪だと言うのであれば今代は勿論、歴代の国王様を罪に問う事になるのよ?」


 これまでの国の方針を過ちと断ずるならば、それは国の歴史を否定するのに等しい。

 それが必要な場合もあるけど、こんな衆人環視の元で出来る事じゃない。


「これで、私には何ら罪咎は無い事がご理解頂けたと思います。異論は御座いませんね?」


 王太子一派の手持ちのネタは全て砕いた。レイナ嬢も、ゲームで断罪されていた内容が実は罪じゃないなんて思いもしなかったでしょうね。

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