三度王宮へ
「ユーリ、もう王都に住んだ方が良くないか?」
「絶対に嫌です。王宮なんて伏魔殿、近寄りたくもないんですから!」
「俺より適応出来ると思うんだが……」
王宮からの招聘により、またしても王都屋敷に来ました。
到着するなりリビングへと連れてこられ、ソファーに座りお茶を出されました。
目の前には申し訳無さそうなお父様が座っています。
「招聘状によると、また冒険者ギルド絡みだそうですね」
「冒険者ギルド総本部から、冒険者ギルドを潰すとは何事だと総統が乗り込んで来た」
総統は全世界の冒険者ギルドを纏める人間です。一国の王と同等の扱いをうけていますが、その影響力は下手な国の王を凌ぎます。
「他国の冒険者ギルドまで潰せと言っている訳ではありません。国内の問題なのですから、放置で宜しいのでは?」
「他国の王からの書状を持参されたのだよ。パナマなどは無視すれば良いが、オタルやキールは無視出来ない」
スエズ周辺国からの執り成しの書状を持参されては、国交の問題から無視も出来ません。
「要求は冒険者ギルド取り潰しの撤回とギルド関係者の釈放、ギルド財産の返還ですか?」
「その通りだ。盗賊として摘発した以上、取り潰しと財産の返還は出来ない。それで苦慮しているのだ」
発端は私とはいえ、外交を含んだ問題の解決を五歳児に頼るというのは為政者としてはどうなんでしょう。
「そもそも、こちらの言い分を捏造だと言い張ってな。五歳でギルド員を倒すなんて不可能だと言うのだ。それに反論出来なくてな」
後ろに控えたメイドが、無理もないと言わんばかりに頷きます。
自分でも規格外だと認識していますから、異論を挟むつもりはありません。
「終いにはユーリと対面させろと言うので招聘となった訳だ」
「冒険者ギルド関係はこれで最後でしょうし、断れるものでは無いからいいですけどね」
モフモフの対価だと言うのなら、それくらい我慢してみせましょう。
「王妃様からくれぐれも頼むとの伝言を頼まれた。頑張ってくれ」
「出来る限りの事はいたしますわ」
その夜は予想されるストレスに耐える為にミリーとセティーをモフりまくった。
心体共に万全の体制で臨まなくてはね。
翌朝私が王宮へと出掛けた後発見された二人は、げっそりと消耗し尽くし見る影も無かったとか。
そして、供される食事の質が更に上がり、使用人一同の待遇がとても獣人と思えない物となりました。
その理由が獣人蔑視を改めた物なら最高だったのですが、二人が居なくなれば館の誰かが代わりを勤める事になる。それを恐れての事らしい。
取り敢えず二人にとっては悪い事ではないので、放置する事にしました。
「ユーリ・マゼラン、招聘に応じての出仕大儀である」
「それが臣下の勤めに御座います」
謁見の間には、前回と同じく文官武官が勢揃い。それに加え、オッサンが三人控えていました。
一人は高級な礼服に身を包み、二人は高価そうな軽鎧を着込んでいます。
恐らく、礼服の人物が冒険者ギルドの総統で二人が護衛の冒険者でしょう。
「ユーリ嬢、そちらが冒険者ギルドの総統だ」
「お初にお目にかかります。ユーリ・マゼランと申します」
足を引きスカートの裾を摘まみ、非の打ち所のないカーテシーを披露します。
「このガキが現役の冒険者を打ちのめしたと?嘘をつくにももう少しリアリティーのある嘘をつくべきなんじゃないですか?」
呆れたようにほざく総統。自己紹介もせずに相手をディスるとは、なんたる無礼。こいつ相手に容赦はいらないみたいですね。
「こんなガキの我が儘で冒険者ギルドを潰すなど、冒険者ギルドと全ての国を敵に回すおつもりか?正気の沙汰とは思えませんな」
護衛その一が尊大な態度で言い放ちます。
「我が儘ではない。犯罪行為を確認し、組織ぐるみだと認識されたからだ」
「では、本当にこのガキが現役の冒険者を倒したと?しかもギルドマスターまで?」
「吟遊詩人の物語の方がまだマシですな。この国の貴族の頭の中はお花畑のようだ」
反論した文官に対し、バカにしたように言い返す護衛の二人。脳内お花畑はどちらでしょうね。
総統は国王相当の扱いを受けるため、多少の無礼や暴言は見逃されます。
しかし、その護衛はその限りではありません。場合によっては無礼討ちの対象にもなります。
その態度に、居並ぶ貴族たちは青筋たててキレる寸前。これなら私が多少過激な言動をしても咎めはしないでしょう。
それどころか、もっとやれと煽るかもしれませんね。
これでかなりやり易くなりました。どんな風に料理してあげましょうかね。




