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王太子の断罪

「辺境伯令嬢ユーリ・マゼラン。貴様の言に従うならば、王族である俺の言葉は絶対だな?」


「法の範囲内であるならば、との制限はかかりますが。罪のない者に罪を負わせたり、国王陛下の御命令に反するような言葉は論外ですわよ?」


 今現在あなた達が行っているような行為が、それにあたると当て擦る。


「ユーリ・マゼランよ、俺の婚約者たるレイナ・ツガルに対する無礼、万死に値する。大人しく縛につくように」


 王太子、そんな理論で来ましたか。ここまでお馬鹿だと、同情してしまうわね。


「な、何だその憐れみの目は!貴様は額を地につけて許しを乞えば良いのだ!」


「説明するのも馬鹿馬鹿しいですが、お気付きにならないようですので説明させていただきます」


 無礼な物言いではあるけれど、この馬鹿に気を使うのがアホらしくなりました。

 この程度、私に行った無法に比べれば小さな物ですしね。


「まず、国王陛下のお認めになった王太子殿下の婚約者はこの私です。そこの男爵令嬢ではありません」


「だから、貴様との婚約者は破棄だと言っただろう!もう忘れたのか!」


 怒りを隠そうともせずに怒鳴る王太子に、溜め息を殺し説明を続ける。


「それは王太子殿下の意思であり、王家の正式な決定ではありません。婚約は王家と我がマゼラン辺境伯家との契約であり、当事者と言えども勝手に破棄など出来ません」


「勝手ではない。王太子たる私の意思であり、決定だ!」


 もっと簡単に分かりやすく説明しなければダメかしら。もう面倒だから放置したいわ。

 でも、そうはいかないわよねぇ。


「この国の最高権力者である国王陛下の許可を頂きましたか?まだですよね。それが勝手にと言うことです。それとも、王太子殿下は国王陛下を蔑ろになさると?」


 これでも黙らなければ、いかに王太子といえ反逆罪が適応されるでしょう。

 そうなればこのパーティー会場を護衛していると衛兵に王太子を捕縛させる事も出来るわ。


 ……残念、王太子は黙ってしまた。まだ説明を続けないとならないようですね。


「ご理解頂けたようですので続けます。例え婚約破棄が認められたとしても、それまでは私が婚約者です。王太子殿下の婚約者に非礼云々は言われる筋合いがありません」


 反論する事が思い付かないのか、王太子は私を睨むのみ。視線で人を射殺せるなら、殺せる位強いわね。

 でもそんな事は出来ないし、そんな程度で怯むようなら魑魅魍魎揃いの社交界なんて渡って行けませんから。


「次に、王太子殿下の婚約者という地位も身分も御座いません。王太子殿下の婚約者は、所属する家の身分が適用されます」

 私なら辺境伯令嬢、レイナなら男爵令嬢ね。これも貴族の常識で、貴族教育の初歩な筈なんだけど。王太子もレイナも、教わっていないのかしら。


「なので例え婚約破棄が認められツガル男爵令嬢が王太子殿下の婚約者とみとめられようとも、私の方が上爵であり無礼と咎められる謂れはありません」


 実際はレイナが王太子妃になり、王妃になれば辺境伯家の力を削ぐ事も可能。今は私が上爵でも、立場がひっくり返る可能性もある。

 でも王太子はその座から引き摺り下ろす予定だし、それに失敗しても今後の身分を心配する必要はない。


「くっ、悪知恵だけはある奴だ。詭弁を弄して罪から逃れるつもりか!」


「私は法に基づく正論を語ったまでです。よもや、王太子という身分を使って私を罪人に仕立てる等とは言われませんよね?」


 私が身分を盾に好き放題していると断罪しようとしているのに、その本人が身分を盾に罪を仕立てるなど本末転倒。


「もうお話はお済みですね。私達は登城しなければなりません。失礼させていただきますね」


 国王陛下への報告など、やらねばならない事が山積みなのです。

 あなたたちのような暇人とは違うのです。解放してくれませんかね?


「……私への仕打ちだけでは、あなたを罪に問えないかもしれません。でも、あなたは国を滅ぼしかねない大罪を犯しています!」


 やっぱり解放してはくれませんか。ではツガル男爵令嬢を返り討ちにして差し上げましょう。

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