再び王都へ
ストレスの元を撃退した私は魔物狩りや、ミリーへのモフモフや、セティーへのモフモフや、ミリーへのモフやセティーへのモフモフと忙しい日を送りました。
冒険者ギルドはどうしたかって?後はお父様の決裁待ちなので放置です。
潰すにしても残すにしても、お父様の判断を仰ぐ必要がありますから。
ただ、お父様には継母が泣き付いたでしょうから、ある事無い事吹き込まれた恐れはあります。
その時は理路整然と論破すれば良いだけの話ですから、問題は無いのですけどね。
「お嬢様、王都よりお手紙が二通届いております」
メイド長より渡された二通の手紙。一通は見慣れた我が家の家紋。お父様からでしょう。
もう一通は、王家の家紋。冒険者ギルドの件ですかね。
継母と商業ギルドマスターを撃退してから五日、往復にかかる時間を考えたらかなりの早さです。
手紙の内容は両方同じ。今回の件について説明せよとの事でした。
下手すれば超国家な組織を敵に回すのですから、当然と言えば当然です。
「王都に向かいます。護衛は例の二人で。セティーとミリーも連れていきます、当事者でもありますからね」
メイド長に命じて、王都に向かう準備をさせます。
セティーとミリーは迷いましたが、最低六日もモフれないのは大きな問題です。
二日もモフらなければ、禁断症状が出るでしょう。あの耳と尻尾には、間違いなく中毒性があります。
翌朝早くに領都を出た私達は、夕方中継の街に着き一泊。翌日はダーダネルスの領都の宿に泊まりました。
伯爵の屋敷には連絡すらしていません。あんな屋敷に泊まるより、街の宿屋に泊まりモフる方が快適です。
ダーダネルスと王都の境には、簡易な村が出来ていました。完全に観光地と化しています。
名物は氷を利用した冷たい果物や菓子、ジュースやお酒だとか。
私の氷を砕く事は出来ないようですが、放たれている冷気を使って商売のネタにしていました。商人の逞しさには脱帽ですね。
王都の屋敷に着くと、使用人一同が並んで出迎えてくれました。
「お待ちしていました、お嬢様。その獣人は……」
「ストレス解消用に側に置いているのよ。結構役立っているわよ」
セティーとミリーの顔には、青アザが幾つもありました。それを見た使用人達は、疑問を抱かず納得してくれたようです。
部屋に入りお茶を飲んでいると、派手な足音と共に扉が開きお父様が突っ込んできました。
「ユーリ、無事だったか?怪我などしていないか?怖くなかったか?」
「私はこの通り無事です。少し落ち着いて下さい」
迫るお父様を宥めましたが、心配してもらえるのは嬉しいものです。
気合いを入れて緩みそうになる頬を引き締めました。
「奥から妙な事が書かれた手紙も来たのだが、説明してくれるな」
「はい、勿論です」
やはり継母から手紙が行っていたのですね。私は冒険者ギルドからの出来事を、一部始終話しました。
「ユーリに危害を加えようとした冒険者ギルドは潰すの確定だが、奥がそんな事を……」
「お父様の奥ですから、私は関与するつもりはありませんよ」
私には血縁でも何でもないですから、お父様がどうしようと関わるつもりはありません。
ちょっかいを掛けられたら反撃はしますけどね。
泣き寝入りは絶対にしませんよ。
「そっちは後で考えるとして、まずは王城からの呼び出しだ。他の貴族連中が騒いでる」
「冒険者ギルドを敵に回すのですから当然です、喜んで伺います」
国に従順な貴族令嬢を演じつつ、操って差し上げましょうか。伊達に魑魅魍魎が蔓延る芸能界を生き抜いてきてません。
「まあ、ユーリなら大丈夫だとは思うが、やり過ぎるなよ?」
「心配いりません。これまでの教育の成果、ご覧にいれてみせます」
口先だけの宮廷雀なんか目じゃありません。もしもの時には、ちょっと強引にお話(物理)をするという手もあります。
「ユーリ、頼むから王城を氷漬けにするのは止めてくれ!」
「お父様、そんな事はしませんわ……多分」
穏便に話すつもりですが、相手があるのです。絶対にとは言い切れません。
「何故か不安が残るのだが……」
「気のせいですわ、深く考えてはいけません」
どうせなるようにしかならないのです。思うがままに、後悔の無いように生きましょう。
後悔が残る人生なんて、一度経験すればもう十分ですから。




