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お話(物理)再び

 冒険者ギルドを閉鎖させた翌朝、面倒な来客を迎える羽目になりました。

 呼んでもいないのに朝イチで来るなんて、人の迷惑を考えろと説教したくなります。


 しかし、相手が相手なので、身仕度をして応接室へと向かいます。早く済ませて朝御飯食べたいです。


「お待たせいたしました。初めまして、お継母様」


 応接室で待っていたのは、十代後半の女性と小太りなオッサン。

 女性の方は、お父様の再婚相手。血の繋がりはありませんが、母親ということになります。


「こちらは領都の商業ギルドを纏めるギルドマスターよ」


 ギルドマスターは頭を下げて挨拶しますが、私は無視します。

 こちらは上位貴族の令嬢で、あちらは平民です。身分的には正しい対応ですが、紹介した継母の顔を潰す行為だったりします。


 私は彼女の部下に殺されかけた訳ですから、継母の顔が潰れようと知ったことではありません。

 あれが騎士の暴走で、彼女の預かり知らぬ事であったとしても責任は主である彼女に帰結します。


「商人の方は朝が早いのですね。ご苦労様です」


 訳:こんな朝早くから押し掛けるんじゃないよ。さっさと用件を言いなさい!


 継母の顔が引き吊ってますね。この程度の煽りで感情を露にするなんて、高位貴族失格ですよ?


「礼儀もなってないのね。これがあの人の娘なんて、母親の血かしら」


「それは申し訳ありません。何せまだ未熟で勉強中の身ですから。『交渉は相手の怒りを誘い失言を引き出せ』との教えも、この程度しか実践出来ないのです」


 扇を広げて口許を隠し、目を細めて言ってやればトマトのように真っ赤になりました。

 この人、ジブラルタルやカテガットの令嬢よりも教育が足りないんじゃないの?


「本当に不愉快な。あなたが捕らえた冒険者ギルドの者達を早く釈放しなさい、早くよ!」


 継母は言いたい事だけ言うと席を立とうとしました。商業ギルドのギルドマスターも同様です。


「お断りします」


 スッパリ言ってあげたら、二人揃ってコケてソファーに倒れ込みました。

 息が揃ってますね。コンビを組んでお笑い芸人としてデビューしたらそこそこウケるのでは?


「子供の我が儘で、罪のない民を拘束するなんて、許される事ではないのよ」


「これは領主様に忠言した方が良さそうですな」


 我が儘な子供の相手などしていられないと言いたげな二人にギルドでの出来事を説明したのですが……


「たかがそれくらいの事で……武門のマゼランも名ばかりなのですね」


「そんな小さな理由で冒険者ギルドに害を成すとは、信じられませんな」


 と嘲笑してきました。口で言って分からぬなら、体に言ってあげましょう。


「ちょっと訓練場までお付き合い願えますか?」


「そんな場所に何故行かないと…」


「お・付・き・合・い・願・え・ま・す・か?」


 文句を言おうとした継母の言葉に被せ、無理やり騎士団が使用する訓練場に同行させます。


 訓練場では騎士が模擬戦や走り込みをして体を鍛えていました。

 申し訳ないですが、中断してもらいましょう。巻き込むのは気が引けますから。

 手を叩き注意を集めると、皆訓練を止めて私に注目しました。


「少し訓練場を借ります。騎士は私の背後に集まって下さい」


 騎士達は私が魔法を使うと予想したのか、慌てて私の背後に集まります。

 巻き添えで氷漬けにされるのは嫌みたいですね。私だって嫌です。


「な、何をする気なの!」


「私がギルドでされた事の再現をしようと思いまして」


 まずは直径一メートル程の氷の玉を五つ頭上に作成します。それを見た騎士の方々が、訓練場の端まで避難しました。

 後ろには影響が無いから大丈夫ですよ、多分。


「ゲートキーパー、斉射」


 五つの氷の玉が、直径七ミリの椎の実状の弾丸を射出します。

 しかし、その弾丸を目で追える者は居ないでしょう。音速を越える飛翔物体を余裕で迎撃出来る代物なのですから。


 弾丸は二人を避けて周囲に着弾します。当たりはしませんが、自分の周囲に途切れなく氷の弾丸が弾け地面が凍結していくのは恐ろしいでしょう。

 立っていられなくなり、尻餅をついています。


 「あら、お二人ともどうしました?」


「どうしましたじゃないわよ!」


「こ、殺すつもりですか!」


 顔面蒼白で文句を言ってくる二人。


「殺すなどとんでもない。言いましたよね、ギルドでの事を再現すると」


 表情を表に出さず、淡々と続きを告げてあげましょう。


「私は昨日ギルド員に殴りかかられ、大勢に武器で攻撃され、ギルドマスターに魔法を使われました。それに比べたら、五歳の幼児が使う魔法では威力も迫力も足りません。その点、力不足で申し訳なく思います」


「「「「「「充分足りてるから!それどころか過剰だから!」」」」」」


 傍観者の騎士達から、一斉に突っ込みが入りました。君達、少し黙っていて下さいな。

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