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宰相子息の断罪

「ユーリ・マゼラン、お前は大罪を犯した」


「大罪……で御座いますか?全く覚えはありませんが」


 小首を傾げクスクスと笑う。王太子妃となるべく教育を受けた私は、感情を表に出すことをしない。

 すなわち、ここで笑うと言うことは彼等をバカにしているということ。

 頭の中身が非常に残念な彼等でもそれは理解できたみたい。あからさまに顔色を変えて睨み付ける。


「貴様、王太子である私にその態度、覚悟は出来ているのであろうな?」


「これは失礼いたしました。辺境伯令嬢の私を公の場で裁こうとする、あなた方の言動が余りにも可笑しかったものですから」


 力のある貴族を裁く場合、内密に事を運ぶのは基本中の基本。

 罪状や判決によっては内密に処理され、当主が病没し当主交代となるケースもある。


 しかし貴族だけとはいえこれだけの人の中で裁けば、全てを公表しない訳にはいかない。

 もしも裁かれる側が無罪となったなら、裁いた側が今度は裁かれる事となる。


 今まで政務に全く携わらず学舎で教わる机上の概念だけを覚えてきた王太子には、その辺りの機微を考える事は出来なかったのでしょう。


「まあ、今更不敬罪が一つ増えた所で貴様の極刑は変わらん。見逃してやろう」


「極刑ですか。また大それた事をしたのですね、私は」


 王太子も男爵令嬢も取り巻きも、余裕の笑みを浮かべている。普通の断罪劇と違い、物的証拠を揃えているという自信からでしょう。

 まず先鋒は宰相子息のサイファ・ボスポラスが務めるようです。


「ユーリ・マゼラン、あなたはお茶会に訪れたレイナ嬢を追い返しましたね?証人も確保してありますよ?」


「ええ、追い返しました。それがどうかしまして?」


 あっさりと認められると思わなかったのか、王太子達は次の言葉を出せないでいた。


「招待もしていない乱入者を処理したまでの事。それの何が問題だと言うのですか?」


「何故レイナ嬢を招待しなかったのだ、可哀想だとは思わないのか!」


「では、お茶会の度に国内全ての貴族の子女に招待状を送れと言われるのですね?そう仰るからには、ボスポラス家ではそう為されているのですね?」


「そっ、それは……」


 招待状を送らなかった事が罪と言うのなら、ボスポラス家はそれを守ってきたのでしょうか。

 常識的に考えて、そんな事はあり得ない。招待状を送る費用だけでも膨大な金額が必要となるし、もし全員が出席するとなったらどれだけの広さの会場が必要なのか。


「もしも他の全ての貴族家でそれが為されていない場合、マゼラン家にのみそのような無体を強いた事となります。」


 サイファの顔色が目に見えて青くなりました。この事が父親である宰相様に知られれば、良くても廃嫡です。

 もし我が家から問い合わせがいかなくとも、これだけの目撃者が居れば宰相様の耳に入るのは時間の問題。


「王国の重鎮たる宰相様の後継者候補のあなたが、上級貴族に落ち度を捏造する。それがどんな意味を持つかお分かりですか?」


 もしも彼が父親の後を継ぎ宰相となったら、気に入らない貴族は罪を被せて取り潰す。

 それが嫌ならボスポラス家の意向に逆らうような真似はするな。

 そう脅しているのと同義であり、到底見過ごせる状態ではない。


「サイファ様、最後位は潔くされる事をお勧めいたしますよ」


「ユーリ嬢、助言に従うとしよう。殿下、これにて失礼致します」


 サイファ・ボスポラスは王太子殿下に一礼するとパーティー会場を後にした。


 さて、次はどの罪で裁いて貰えるのかしらね。

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