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騒動

 予想もしていなかった事態で少々時間を取られたものの、無事にダーダネルスの領都に到着しました。

 宿泊は、行きと同じで伯爵の屋敷になります。

 今日は伯爵邸に行く前に少し寄り道を。


 街の中央の広場に馬車を止めさせ、騎士に護衛させて獣人一人を買い物に出します。

 買ってこさせたのは、パンと串焼きのお肉。


「伯爵邸にあなた逹を入れる訳にはいかないの。だから、これを食べて頂戴」


 伯爵家も人間至上主義なので、玩具と言い訳しても獣人を屋敷に入れる事には反対するでしょう。

 当然、彼女らの食事など期待出来ないので先に買ってこさせたのです。


 三人の食事も終わったので移動を開始します。

 私と騎士、馭者の食事は伯爵邸で出るでしょう。


 伯爵邸に到着しました。獣人に馬車に残る事と、危害を加えられたら殺さない程度に反撃するよう言い含めます。


「お待ちしていました。冷血姫様のお噂は、我が領にも伝わっておりますぞ」


 玄関前で、満面の笑みを浮かべたダーダネルス伯爵が出迎えてくれました。


「これはこれは、伯爵様自らのお出迎えとは畏れ入ります」


 家の格では辺境伯のうちが上ですが、私は長女で相手は当主。立場的には対等か少し下になります。

 なので丁寧な対応をしておきました。

 伯爵の先導で応接室に。出されたお茶で喉を潤します。


「ユーリ様、王子殿下とのご婚約、おめでとうございます」


「ありがとうございます。王子殿下の婚約者として、一層努力する所存ですわ」


 婚約の話から王宮内のゴシップを始めとする雑談に。私には苦痛でしかありません。

 お父様、これを何人もに何時間もしていたのですね。今更ながら同情します。

 きりが着いた所で食堂に移動し会食です。


「そうそう、馬車に玩具を載せたままにしてありますの」


「聞き及んでおります。必要な事はありますかな?」


「いいえ、ただ私の玩具が馬車にあることだけをご承知下さい」


 平たく言えば、馬車の獣人は私のだから手を出すなと言うことです。

 言っておかないと、危害を加えられても文句が言えませんから。


 会食の間、伯爵子息は始終不機嫌そうでした。

 私が王子殿下の婚約者に決まったので口説く事も出来なくなりましたからね。

 ロリコンの魔の手から逃れる事が出来たので、私は一安心です。


「ギャアアアッ!」


「痛てえ、痛てえよぉ!」


 真夜中、馬房から男の悲鳴があがりました。

 ガチャガチャと金属音が響きます。警備の騎士が向かったのでしょう。


「お嬢様、ご無事ですか?!」


 私の護衛騎士もフル装備で駆けつけました。


「私は大丈夫です。着替えますから、待機するように」


 騎士を扉の外に控えさせ、寝巻きから着替えます。

 騒ぎの原因は予想がつきます。収めに行かねばならないでしょう。


「馬房に向かいます。着いてきなさい」


 騎士二人を従え馬房に行くと、男二人が地面にのたうち回っていました。

 馬車の脇では獣人メイド二人とこの屋敷の騎士逹が睨み合っています。


 獣人が私の姿を認め、こちらを見ました。それを隙と見たのか、騎士の一人が切りかかります。


「ぶっ、な、何だぁ?」


 メイドに切りかかろうとした騎士は、いきなり足が凍りつき前方に顔からダイブしました。

 顔を打った衝撃で兜が脱げて転がり落ちます。


「これは何の騒ぎなのか、説明してもらえるかしら?誰の許可を得て私の玩具(もの)に手を出しているのかしら?」


 扇で口元を隠し、感情を殺して告げます。すると、とんでもない事を言われました。


「そ、その獣人がいきなり俺達を襲ったんだ!」


「そうだ、歩いていたらいきなり背後から!」


 転がっていた男の一人が叫び、もう一人が同調しました。


「我等が来た時には彼らが襲われていたので引き離し、取り押さえようとしていたのです」


 指揮官らしき騎士が続いて報告します。そこに、息をきらせて伯爵様が到着しました。


「これはどうした事だ!」

 伯爵は指揮官の所に行き、説明を受けます。話が進む程に渋い顔になっていくのが見てとれました。


「ユーリ様、玩具の管理はキチンとしていただきませんと困りますな」


 臣下の手前うやむやには出来ず、かと言って私に強く抗議も出来ないのでこんな言い方になったのでしょう。


 私とて、大切な獣人(モフモフ)に手を出されてこのままにはしません。


 今後の事もあります。しっかりと恐怖を植え付けてあげましょう!

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