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父の懸念

 部屋に帰り、お茶を飲みながらゆったりと獣人の三人を待ちます。

 すると派手な足音が響き、予想外の人物が部屋へと飛び込んで来ました。


「ユーリ、ユーリは無事か!」


「お父様、落ち着いて下さい。私はこの通り無事ですわ」


 何をそんなに慌てているのか知りませんが、立ち上がり怪我一つ無い事を見せ付けます。


「良かった、ユーリが獣人の取り締まりに巻き込まれたと聞いて、急いで帰ってきたのだ」


「逃走していた獣人を魔法で捕らえただけですわ。ああ、その三人です。別室に待機させておいて」


 食事を取り終えた三人が騎士に連れられて来たので、別の部屋に待機させるよう指示を出す。

 落ち着いた父も席につき、メイドに淹れさせた紅茶を飲む。


「魔法の的にしようと思ったのですが、見た目も良いので側に置こうか迷っています」


「側に置くメイドなら、幾らでも手配する。態々獣人など置かずとも」


「王子様の婚約者になりましたので、ストレスが溜まる事もあると思うのです。それを解消する手段が近くにあると便利かと」


 イラついた時人間のメイドに手をあげるのは良くないけど、獣人のメイドならやりたい放題に出来る。

 そのために側に置くと言えば反対されないでしょう。


「勿論、領に連れ帰り王都には連れて来ません。飽きたら魔法の的にすれば無駄なく使えますわ」


 淡々と話し紅茶を飲む。私は人を側に置くのではない。ストレス発散の玩具を置くだけ。

 嘘はついていないわよ。ストレス発散の方法が危害を加える事ではなく、モフるという違いがあるだけ。


「それと、居合わせた騎士団の隊長に生け捕りをお願いしました。魔法の加減を学ぶには、生きた的に当てないとわかりませんから」


「それはそうだな、ユーリの言う事にも一理ある。お前の思う通りにしなさい。森の館も好きに使うが良い」


 父は私の要求を全面的に認めてくれました。

 これで夢のモフモフ生活にまた一歩近付きました。


「ありがとうございます。これで魔法に磨きをかける事が出来ますわ」


「それは良いのだが、私は教育を間違えただろうか……」


 頭を抱えて悩み出すお父様。私だって四歳の娘が嬉々として獣人の虐殺を語ったら、同様の反応をするでしょう。


「私はパナマへの抑えであるマゼラン家の長女として、魔法の腕を上げて獣人を狩りたいだけですわ」


 獣人と敵対している国家の、獣人国家と領土が接している家の長女なのです。

 獣人を冷酷に狩っても王家や他の貴族から文句は出ないでしょう。


「それはそうだが、四歳でそこまで苛烈で無くとも……」


「王子様のように、危機管理が甘いよりましだと思います。女は男より精神的な成長が早いのです」

 実は園遊会に他の高位貴族の子息らしいのも居たのだけれど、下級貴族の子息と大差無かった。

 同い年でも女子の方が落ち着いていたので、この世界でも女子の方が成長は早いようです。


「領地ではお前を構ってやる事も出来ない。済まないな」


「後継者の件もありますし。私の王家への嫁入りが決まった以上、マゼランの後継ぎをお願いします」


 本来後継ぎが私しか居ないので婿を取るのが妥当なのですが、王家の意向には逆らえません。

 ゲーム通りの歴史なら、この後弟が出来るのですがこの世界では未定です。


「理解があるのは助かるのだが……」


 複雑そうですね。我が儘を言われないのは助かるけど、四歳児に政治的な理解をされて気を使われるのが違和感あると。

 私は中身が二十歳を越えていますから、諦めて下さい。


 私よりも、純粋な四歳児で社交の場に相応しい行動をとったジブラルタルとカテガットのお嬢様にはビックリです。

 他人からは、私もああいう風に見られているのでしょうね。


「私は暫く領地に帰れそうにない、領地では好きにしなさい。宮廷雀どもも魔物のように切り捨てられたら楽なのだが……」


 どうやら、私が王子の婚約者に決定したことで王城に引き留められたようです。

 私は先に領地に帰らせてもらいましょう。お父様の崇高な犠牲はいつまでも忘れません。


「では、私付きの騎士二人と先に領地に戻ります。玩具も持ち帰ります」


「くっ、ユーリが羨ましい。私も出来るだけ早く領地に戻るが、次第を向こうに知らせておいてくれ」


 予定では私と領地に戻る予定でした。領地の使用人や代官に、お父様の帰還が遅れる事を伝えなければなりません。


「わかりました。代官への指示の書類をお願いしますね」


「煩く囀ずる雀から逃れたと思ったら、書類仕事だと……」


 御愁傷様です。でも、それが辺境伯家当主の義務です。

 肩を落としたお父様が退出しました。癒しの三人を呼びましょう。


 魅惑のモフモフが私を待っています。自重?それ美味しいのですか?

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