ケモ耳にメイド服
屋敷に帰ると、騎士二人が三人の獣人を連れて玄関の前で待っていました。
勝手に獣人を屋敷に入れて良いかどうか、判断が付かなかったのでしょう。
「部屋に戻ります。三人を連れて来なさい」
屋敷に入れる許可を出し、玄関を潜ります。屋敷の使用人達は、何故私が獣人を連れ帰ったのか知らないので不安げにしています。
「彼女らに合いそうなメイド服を。桶と水、布もお願いね」
メイドに指示し部屋に入ります。私だけソファーに座り、すかさず置かれた紅茶を飲み休みます。
「失礼します。服と桶をお持ち致しました」
メイドさんが水を入れた桶と清潔な布、メイド服を置きます。
「ありがとう。呼ぶまで外で控えていなさい。それと、その子は使用人の部屋で賄いでも与えておいて。勝手に危害を加えちゃダメよ」
指を鳴らし、子供を拘束する氷を昇華させます。
騎士とメイドは一礼して子供を連れ部屋を出ました。
もう一度指を鳴らして二人の獣人の氷も消し、ついでに風の魔法でこの部屋の音が漏れないようにします。
「あなた達、服を脱ぎなさい」
子供を質に取られた二人に逆らう余地はなく、淡々と服を脱ぎます。
白い肌に見事なプロポーション、男だったら狼に変身しているでしょう。
「結構傷ついてるわね。氷の止血が効いたから出血は大丈夫だわ。ならば傷口を……」
一つ一つの傷を指でなぞりながら魔力を送り治していきます。
指がなぞった後には、切られた跡など欠片もありません。
人族至上主義の国の大貴族令嬢であり、自分達を実験台にしか思わない女。
そんな少女から治癒を施され、二人は混乱し為されるがままになっていました。
「これで最後ね。汗をかいたでしょうから、これでお拭きなさい。水はぬるま湯にしておいたわ」
メイドが持ってきた布を渡され、我に帰る獣人の二人。
「これは一体?何故こんな事を?」
「先に言った通り、あなた達にもあの子にも危害は加えないわ。まずは体を拭いて服を着なさい」
そう言われては従うしかなく、二人はメイド服を着用しました。
狼耳と尻尾装備の美人メイドさん。現実に見ると凄い破壊力です。
「少し触らせてもらうわよ」
一応断りを入れましたが、彼女らに拒否権はありません。頭の天辺でフルフルと震える耳に手を伸ばします。
柔らかい耳は私が触れるとピクッと動きます。
フニフニな感触にフワフワな毛が気持ちよく、何時間でも触っていられそうです。
これから、少なくとも三日間はこの耳を触り放題です。とうとう念願が叶いました!
私は前世から動物好きでした。でも、子役をやっていたので家で動物を飼うなんて持っての他。
両親は仕事で忙しかったし、私も仕事と学校で手一杯だったからです。
たまに動物と絡む仕事もありましたが、本当に僅かなんです。
動物は人間の思う通りに動いてくれないので、下手にドラマに組み込むと動物の機嫌で撮影がストップなんていう事も。
だからこの世界に転生した私は思ったのです。いかなる手段を使っても、今世では満足するまでモフり倒すと!
でも、この世界に家畜は居てもペットという概念はありません。殆どが魔物なので、家庭で飼うという概念が無いのです。
それなら手段はただ一つ。獣人さんにモフらせてもらうしかない!
そんな野望が今、達成出来ました。
「ふう……堪能したわ。あなた達、ここでの事は他言無用よ。と言うより私の許可なく家の者と話す事を禁じます。わかりましたね?」
「「はい、わかりました」」
二人とも、訳がわからなくても同意はしてくれました。
まあ、子供を人質にしている以上同意するしか無いのだけどね。
二人を連れて、子供がいる使用人用の食堂に行くとパンとスープを食べていました。
小さい狐っ子が一生懸命食べている様には癒されます。
しかし綻びそうな口許を表情筋で抑え、感情を殺します。
「この二人にも賄いを。その後私の部屋に連れて来るように」
それだけ言い置き部屋に戻ろうとすると、メイドさんが一人着いて来ました。
「お嬢様、獣人をお手元にお置きになるのですか?」
「今回の事で思ったのです。人に対する魔法の効果は、人に撃たないと把握出来ないと。我が領の領民や騎士で試す訳にはいかないでしょう?」
理由を話すとメイドは納得したのか、ほっと息を吐いて安堵したようです。
私が獣人を保護したと思っていたのでしょう。
「側に置いて、獣人を狩る様を見せつけるのも良いかと迷ってるのですけどね。近くに居ながら同胞を救えない、中々に面白そうじゃない?」
「そ、そうで御座いますね」
楽しそうに言うと、メイドさんは顔をひきつらせ肯定してくれました。
この世界、身体的な責めはあっても、精神的な責めは珍しいのですかね。
私を恐がってくれた方がやり易いので、この調子で悪役令嬢を演じましょう。




