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王都の門

 予定外の出来事で時間を食った私達は、日暮れまでに王都に到着出来ませんでした。


 王都の門は日が昇ると入退場の受付が開始され、日が沈むと閉鎖されます。

 これは少ないとはいえ魔物の驚異がある事と、敵対勢力の襲撃に備えての決まりなので余程の事がない限り変えられません。


 なので王都に向かう者達はその間に到着するよう時間を調整しています。

 もしもそれに失敗した場合、門前にて野宿をする羽目になります。


 それは高位貴族と言えども例外ではなく、辺境伯家たる私達もそれに当てはまります。


「本日は閉門した。辺境伯様には申し訳ないが、明日出直していただきたい」


 王都に着いた私達に投げ掛けられた言葉がこれでした。

 門を守る騎士さんの言い分は正しく、規則に則った返答です。でも、今回は話が違うのです。


「今日の当番は第三騎士団の者であったな。私は第一騎士団のカウアイだ」


「これはカウアイ隊長。あなたが居ようとも規則は規則。お通しする訳にはいきませんよ」


 この騎士さんは任務に忠実なようです。それは好ましい事なのですが、昼間の事を聞いていないのでしょうか。


「貴様は、辺境伯様について何も聞いていないのか?」


「昼頃、配下の騎士が到着して第一騎士団の騎士と出た話なら聞きました。それが何か?」


 うちの騎士は門衛が第三騎士団の者だったので、王城まで走り第一騎士団と連絡を取ったらしい。

 結果、行きも帰りも門は素通り状態で、門衛の第三騎士団員の人達に詳細は伝わらなかったようです。


「辺境伯様が門限に間に合わなかったのは、貴様ら第三騎士団の責任なのだが?」


「何ですと?我等に何の責任があるというのですか!」


 自分達に非があるといきなり言われて、門衛の騎士はいきりたった。

 カウアイ隊長は溜め息をつくと、冷静に話し出す。


「まず原因の一つは、辺境伯様が魔物の大群に襲われた事だ。魔物狩りの巡回は、第三騎士団の仕事であったな?」


「そうだが、全ての魔物を隈無く狩るなど不可能だ。よもや、狩から漏れた魔物がいたから我らが悪いとでも?」


 いくら巡回を密にしていても、自然発生する魔物を完全に狩り尽くすなんて無理です。

 それでも我が家は、ここよりも発生頻度が高い森の魔物を完全に封じ込めてますけどね!


「魔法で凍らされた魔物をこの目で見たが、軽く三桁はいっていたぞ。ちゃんと巡回をしていれば、到底集まらない数だ。それが何を意味しているか判るな?」


「そ、そんな!百を越える大群など、王都直轄領であるはずはない!」


「それがあったのだ。証拠は今でも草原で氷柱になっているぞ。そのあり得ない大群が現れた責は、どこが取るべきかな?」


 門衛の騎士は唇を噛み言葉を失いました。

 本人が言う通り、普通に巡回をしていれば魔物があそこまで大群になる事はありません。

 では、何故大群になったのか。その理由は、巡回を怠ったからと誰でも思い付きます。


「更にだ、遅れて現場に到着した騎士団員が、辺境伯様に無礼な対応をした挙げ句魔物退治の手柄を横取りしようとしたらしい」


 門衛さん、顔が真っ青になってます。

 この件に関しては彼はとばっちりですが、同じ第三騎士団の所属だった事を不幸だと思って下さい。


「おまけに……」


「まだあるんですか?」


 そう言いたい門衛さんの気持ちはわかります。

 でも、まだまだあるのですよ。御愁傷様です。


「それを断り、無礼を咎めた辺境伯家の方々に切りかかった。まあ、返り討ちにされて全員氷漬けだがな」


 青を通り越して、真っ白な顔の門衛さん。倒れるのではないかと、ちょっと心配です。


「そして辺境伯家の騎士の方が我等に連絡を取り、確認に赴いた訳だ。貴様らにも責任があると言った意味を理解したか?」


 真っ白な顔の門衛さんは、赤べこのように首を縦に振っています。

 余りに非常識な内容に、言葉を発せないようです。


「しかも辺境伯様は、寛大にも事後処理を我等第一騎士団が受け持つ事を許して下さった。直接王に言上されれば、良くて第三騎士団は兵団に降格。下手すると完全に解体だな」


 騎士団と兵団。その違いは構成する剣士が騎士か兵かの違いです。簡単に言うと騎士は騎士爵という貴族で、兵士は平民です。

 一代限りの騎士爵でも、平民とは天と地の差があります。


「我等は騎士団長様に報告し、善後策を練らねばならぬ。明日まで待つ余裕など無いのだ。分かったのなら、とっとと門を開かぬか!」


「は、はいっ!今すぐに!」


 怒鳴られた門衛さんは、弾かれたように詰所へと走って行きました。


「お見苦しい所をお見せしました。申し訳御座いません」


「常ならば門衛の言葉も正しい。気にはしておらん」


 凍らされた騎士と違い、門衛さんは職務に忠実なようなのでお父様は寛大な対応をしました。


 少しして、日没以降開かない筈の大門が開きました。

 カウアイ隊長に先導され、左右に第三騎士団の騎士が並ぶ中門を潜ります。


 ふう、やっと王都に入れました。随分長い一日でした。

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