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付け届け

 再婚を果たした父は、王都の屋敷と領都の新しい屋敷を往復する生活を始めました。

 私は産まれたこの家で、メイドさんに世話をされて暮らしています。

 父は時々様子を見に来る程度です。物分かりの良い赤子の私は、文句の一つも言いません。


 新婚で妻を放置し前妻の子にかまけるなんて、ダメな男の代表みたいなものですからね。


 生活は母が亡くなる前と変わりません。ひたすら魔法の訓練あるのみです。

 ゲームと違う世界だと判明した以上、ゲームで強力な魔法を扱えたからと胡座を掻く訳にはいきません。


 周囲を騙して望みを叶えるには、強い力が必要です。

 強力な魔法で獣人を狩る、冷血無情な悪役令嬢になるためなら努力は惜しみません。


 魔法の訓練は楽しいので、好きでやっているというのもありますが。

 映画のCGではなく、本物の火や氷、光の玉を自由自在に動かせるのですよ?

 エルフ役を演じたあの時にこの能力があれば、もっと迫力のあるシーンが撮れたのに!


 まあ、言っても仕方ないのですけどね。


 更に時間は進み、一年が経ちました。漸く喋れるようになり、騎士さんやメイドさんとのコミニケーションを取れるようになりました。


 館の方々は、甲斐甲斐しく私の世話をしてくれます。

 身分もあるのでしょうけど、賄賂を贈った成果もあると思います。


 赤子の私に贈れるような物はないとお思いでしょう。しかし、うってつけの物があったのです。

 渡しても私には損はなく、彼らには感謝されるという都合の良い物が。

 それは魔法訓練の副産物、氷とお湯です。


 氷魔法の訓練で産み出した氷は、そのまま放置すれば溶けて部屋の中が水浸しになります。

 なのでメイドさんか騎士さんが大きな桶に入れて運びだし、廃棄しなければなりません。

 では、その氷はどこにどうやって廃棄されるのでしょう?

 それは廃棄担当者の胸先三寸で決まります。

 細かく砕いて口に含もうとも、たらいに入れた水に浮かべて涼を取ろうとも、誰も咎めないのです。


 私は言葉も話せない、何も知らない赤子ですから。偶々氷魔法を多用して、偶々その処理が頻発しただけですとも。

 それで夏の暑い時期に涼を取れるようになり、新しい屋敷のメイドさんや騎士さんがこの屋敷勤務を希望するようになったとか知りません。


 冬は逆に、火と水の混合魔法の訓練でお湯の玉を多く産み出した位です。

 私は適度な温度に熱せられたお湯に毎日浸かりますが、メイドさんや騎士さんはそうはいきません。


 王族と上級貴族以外の者は、水で濡らしたタオルで体を拭くのが一般的です。

 お湯は薪を使う贅沢品なので、寒かろうが問答無用で水を使います。


 因みに貴族でも、湯に浸かるのは体の小さな幼子のみです。大人が入る浴槽に湯を満たすなんて、王族だけの贅沢な行為になります。


 私のように魔法で湯を作り出せば楽に入浴出来ますが、火と水の混合魔法は難しく、使用する魔力も跳ね上がる為殆ど無理だとか。


 そんな世界で、豊富にお湯を使えるとなったら。

 この屋敷の女性全員の要望で、私のお湯魔法は厳重に秘匿されました。

 向こうの屋敷に知れたら、競争率がまた高くなるからだそうです。

 騎士さんや調理師の方々は、メイドさん達の圧力に無条件に屈したそうです。


 世界が変わろうとも、男性は女性の尻に敷かれるのが常識なんですね。


「お嬢様、明日からお勉強を始めます。貴族として覚えておかなくてはならない事をお教えします。頑張りましょう」


「あい。よろしくおねあいしましゅ」


 屈辱的な事に、舌が上手く回らず幼児語になってしまいます。

 セリフの上手さでは定評のあったこの私が……

 早く大きくなって、ちゃんと話せるようになりたいです。


 因みに教育係りは父が優秀な教師を探してくれる手筈になっています。

 しかし、明日から暫くは貴族の初歩知識なので専門の人でなくとも良いということになり、産まれた時からお世話になっているメイドさんが担当してくれます。


 私が覚えているカミアイの設定はどこまで通用するのか。

 それにより行動が変わってくるので、転生者だからと手を抜く事は出来ません。


 ゲームでは成績上位だから、何もしなくても成績上位になれる。

 そんな慢心で身を滅ぼす主人公や悪役令嬢の例は山程あります。

 ……まあ、ゲームや小説の中でですけど。


 でも、悪役転生なんて小説みたいな出来事が起こった以上、小説の鉄板ネタは注意すべきです。


 気を抜かないで頑張りましょう。目指せ、モフモフ天国!

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