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明かりをつけましょ

 メイドさんに寝かされた私は、情報を整理することにした。出来る事と、やらなければならない事を考えなくてはならない。


 まず、この世界はカミアイの世界で、私は悪役令嬢のユーリ・マゼラン。

 この体には膨大な魔力が流れていて、火・水・土・風の魔法を使えるようになる。

 このままでは母は死んでしまう。衰弱による病没なので、ポーションや治癒魔法は効かない。


 以上を踏まえた上で、母を助ける方法を考えなくてはならない。

 最初に考え付くのは衰弱からの回復。

 小説の通りなら既に父が手掛けていて、見境なしにと言って良いほどの試行錯誤を行っている。

 我がマゼラン辺境伯家の領地には深い森があり、それを隔てて獣人達の国であるパナマ王国と接している。


 森と出現する魔物は、薬草等の素材や食材をもたらしてくれる。

 そのふんだんに取れる素材や食材を惜し気もなく使い、父は母の回復を試みていた。


 なので私が出来るのは大量の魔力を使い、病気を癒す魔法を開発する事だけ。


 掛けられた毛布の下に手を隠し魔力を集める。余り多くならない内に光へと変わるようイメージする。

 仄かな光が掌に灯り、光魔法が成功したことを教えてくれた。

 まずは第一段階成功。治癒の魔法と言ったら、やっぱり光魔法のイメージが強いもんね。


 次は、もう少し魔力を溜めてから光に変換する。

 ……むぅ、変わらない。風ならこの位の魔力を変える事が出来るのだけど。


 光魔法の方が難易度が高いのか、風魔法は慣れているからなのか。

 理由は分からないけど、解決の為に光魔法を鍛練しましょう。

 掌の魔力を継続して光に変換。消してはまた灯し、また光らせる。


 そんな訓練を続けて数日、掌に灯した光を体の他の場所に動かせるようになりました。

 発動場所も任意で選べるようになり、拳が光を放ち目が煌めく赤子になりました。


 ……これ、他人に見られたら怪しまれるよね。バレないように気を付けよう。


 更に鍛練を重ねて、空中に光の珠を浮かせる事に成功しました。

 これこそ光魔法って感じで、テンション上がりまくりです。


「お嬢様、起きてらっしゃ……キャァァァ!」


「な、どうした?出合え、出合え!」


 ノックをせずに入ってきたメイドさんに目撃されました。

 ドアが開く音に気付いてすぐに消したんだけど、間に合わず光の珠を見られ絶叫。

 それを聞いた騎士が駆けつけ厳戒体制が敷かれました。


 流石は武を尊ぶ辺境伯家、騎士さんたちの対応が早くて的確です。

 現在室内にはメイドさんと二名の騎士が常駐し、ドアの外にも二名の騎士が警備を担当しているみたいです。


 父は今王都に滞在しているため、帰ってくるまでこの態勢が続くとか。

 怪しまれる事は避けたかったのですが、これは私の不注意が招いた事態。

 騎士さんやメイドさんに余計な負担や心配を掛けたくないので、誤解を解いておきましょう。


「あぅー、だぁー!」


 再び光の珠が宙に浮き、私の顔の上で回ります。


「お嬢様!危ない!」


「くっ、魔法攻撃か!」


 メイドさんが私を抱き抱え守り、騎士さんが剣を抜き構えます。

 廊下に居た騎士さん二名も部屋に入り剣を構えました。


「ぶぅぁー、だぁー!」


 そんな緊迫した空気をまるっと無視して、機嫌の良い声を出し腕を振ります。

 光の珠は私の腕の動きに同調して飛び回りますが、他に変化はありません。


「こ、これは、お嬢様が魔法を発動しているの?」


「まだ産まれて一年も経っていないのにか?ありえんだろう!」


 正解を呟いたメイドさんを騎士さんが否定します。

 非常識な赤子でごめんなさい、私が犯人なのです。


 ここが切り立った崖の上ならば犯人が全てを探偵役に喋るのでしょうが、生憎ここは屋敷の中で私は喋れません。

 なので引き続き光の珠を操作して事実を受け入れるよう促します。


 日本の殺人犯は、何故崖に行くと全てを自白するのでしょう?

 犯罪者用の教本があって、崖に行ったら自白するよう教育されるのですかね。


「……信じられんが、お嬢様が魔法を使っておられるようだ」


「そうとしか考えられないな。お嬢様は魔法の天才だな」


 どうやら納得してくれたみたいです。騎士さん一名とメイドさんは残りましたが、二人の騎士さんは持ち場に戻りました。


 負担をかけまいと魔法を使える事をばらしたのに、警護体制は変わりませんでした。

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