終焉(レイナ視点)
本日二本目の更新です。
終焉のレイナ視点です。
「くの一役をやった時、殺陣指導の先生がぼやいていたけれど、まさか身を持って体験するとはね」
くの一?さっき女優がどうとか言ってたけど、この女は女優だったの?
ちょっと気になるけど、前世なんか関係ないわ。
大事なのは、この女が死んで私が幸せになること。
「ぐっ、がはっ!」
「ふん、漸くか。かなり時間が掛かったな」
やっと父親が死んだみたい。たった二人にここまで時間を掛けるなんて、この国の兵士って弱いのね。
王太子様に言って強くする必要があるわ。私や王太子様に何かあったら大変だもの。
あっ、ノキーンが用意した兵士だからかしら。やっぱりノキーンは使えないわ。
「手間を掛けさせやがって。娘も直ぐに後を追わせてやる。安心して地獄に落ちな」
後ろを守っていた父親が居なくなったんだから、もう終わりよね。
疲れてきたし、お城に行ってお風呂に入りたいわ。
お城に行かないとお風呂に入れないなんて、本当に不便。
「ガハッ……グフッ、バカな」
「……くはっ、た、只では…し…なん…」
父親を倒した兵士が後ろから刺されて死んだ。死に損ないに殺されるなんて、弱い兵士だったのね。
残りの兵士は大丈夫かしら。まあ、これだけ人数が居て負けはしないでしょう。
「死んだふりをして後ろから刺すとは、何と卑怯な!」
「ケント様、卑怯な男の娘だから極悪非道になったのですわ」
私は下らない父親に育てられても立派になったけど、所詮悪役令嬢ね。
父親も本人も卑怯で残酷、死んで当たり前の人間。
私の優しさや寛大さが引き立つから、役に立ったと言えば役に立ったわね。
「父親が死んだというのに、涙も流さんか」
「血も涙もない極悪令嬢ですもの。あっ、ケント様、ユーリは殺してはいけませんわ。公の場で処刑して、パナマ王国との関係を修復しませんと」
ちょっと疲れたから、王太子様の肩に体を預ける。
王妃になっても戦争する国は嫌だから、ユーリには生け贄になってもらわないと。 こんな事まで考え付く私って、マジで天才。
こんなに立派な妃を貰えるんだから、その代償に沢山贅沢させてもらわなくちゃ。
「貴様は獣人を死なないように傷付け、ポーションで治してまた傷付けていたそうだな。そんな自分が死なないように傷付けられる気分はどうだ?」
「何事も経験してみるものね。あなたも如何かしら?」
これだけ傷つけても、まだ命乞いをしないの?いっそ手か足を切り落としてもらう?
そうすれば自分の立場と言うものを弁えるわ。
「思ったより余裕があるな。もう少し切ってみるか?」
「殿下、あれは虚勢です。もう動けるはずがありません!」
私達を守る兵士が言った。平気そうだけど、本当に我慢してるのかしら?
「おい、何の騒ぎだ!」
廊下の方が騒がしくなって、兵士が一人駆け込んできた。
もうすぐ決着がつくのに、空気読みなさいよ!
兵士が王太子様の耳元で何かを伝えた。
「獣人だと?何でこんな時に。まずい、こいつを差し出して帰らせるか」
兵士が報告したのと前後して、扉から沢山の兵士が入ってきた。
頭には獣の耳が生えてるから、人間じゃなく獣人?何でパーティーに乱入なんかするのよ!
獣人は兵士達を押し退けて入ってきた。その中央には、鎧を着てない人の姿が。
耳と尻尾があるから獣人みたいだけど、かなりの美形じゃない。
あれなら飼って側に置くのもいいわね。停戦の条件にしてもらおうかしら。
「……最後にモフリたかったなぁ」
あの女が何か呟いた。まだ生きてたのね。
ちよっと、何でイケメン獣人があの悪女の方に行くのよ。
ああ、恨みを晴らすためね。でも、何で剣を抜かないのかしら?
「死ぬな、死なないでくれ!尻尾なら幾らでもモフらせてやるから!」
ちょっと、訳が分からないわよ!
何でイケメン獣人が悪女を抱き締めて、尻尾でくるむのよ!
誰か、この状況を説明してよ!
明日からはユーリの過去のお話になります。




