教師の相談
「お願いです、冷血姫様!哀れな我々にどうかお慈悲を!」
「もう後が無いのです。冷血姫様のお知恵のみが私達に残された唯一の希望なのです!」
授業が終了し、下校しようとした所を教師陣に拉致されました。
職員室に連行されてすぐ、学園長を始めとする全教師陣が土下座を敢行。
土下座といえば、あの門衛さん元気かしら。あの土下座が進化したか知りたいわ。
「このままでは、殿下の評価は最低レベル。どう足掻いても赤点を免れません。どうか、どうかお知恵をお貸しください!」
土下座したまま叫ぶ学園長。現実逃避さえ許してくれませんか。
「陛下と王妃様に判断をお願いしては如何です?」
「もうしました。学園の評価は学園がすべきとの仰せです」
国王夫妻に判断を擦り付けようとしましたが、既に回避されていたようです。
あれを産んで育てたのですから、責任とって欲しいと思うのは贅沢でしょうか?
「では、学園の評価通りで宜しいのでは?王家がそう判断をした以上、一介の辺境伯令嬢でしかない私に出来ることはありませんわ」
身分が最上位の王家が下した判断を、臣下である私が覆せるはずもありません。
「流石は学園首席の冷血姫様、模範的なお答えです。しかし、冷血姫様は殿下の婚約者であり、未来の王族ではありませんか」
「現在は辺境伯令嬢です。婚約者に地位や権限はございません。破棄される場合もありますのでね。」
そんな事はそれを教える立場の教師の方が詳しいはずです。ですが、それを敢えて無視してもすがる程に追い詰められているのでしょう。
「全く、教え導く立場のあなた方が、教えを乞う筈の生徒に頼ってどうするのですか?」
「面目次第も御座いません……」
大の大人が揃いも揃って情けない。教師への採点があるならば、皆さん赤点間違いなしですよ?
「幸いペーパーテストの類いはありませんから、フォローはききます。ですが、誉められる事ではありませんよ?」
「どのような手段でも構いません!どうかお聞かせ下さいませ!」
どんな内容でも盲目的に実行しそうな教師陣を見て、溜め息をつきながら話します。
「殿下のクラスメートに頼み、接触を多くして貰います。増えたやり取りから加点要素を抜き出し、赤点を回避させます」
百点満点中で三十点が赤点とします。殿下のみ問題数を増やし、四百点満点とすれば、二十点も八十点になる計算です。
こんな事をすれば大問題になること確実ですが、問題の種となる母数は教師しか知りません。
なので、教師の全員が口をつぐめば問題ないということになります。
「それは名案ですな!では、明日から殿下のクラスの生徒に協力を頼みましょう!」
「流石は冷血姫様!数々の実績は伊達ではありませんな!」
「この実績で、冷血姫様は進級決定ですな」
この相談も学園の評価に入るらしいです。そして、今後通学せずとも進級出来るそうです。
「高位貴族としての勉めもありますので、通学はいたします。今日はもうよろしいですか?」
道を示された教師陣は表情が明るくなり、停車場まで全員で見送りをされました。
「ユーリ様、一体何を成されたのですか?学園長以下の全教師が揃ってお見送りされてましたが」
「馬鹿の件で相談を受けて、解決策を提示しただけよ」
ミリーに答えつつ柔らかい耳をモフります。柔らかい中にも固さのある、この絶妙な触り心地が何とも言えません。
「上手くいってくれれば良いのだけれどね」
教師陣にひ言いませんでしたが、実行に当たっては問題もあります。
まず、殿下が赤点を脱するまでに必要な母数の数です。
五百なのか千なのか。極端な話、殿下の点が零ならば母数を幾ら増やしても得点は零のままになります。
次に、周囲の反応。取り巻きやレイナが余計な言動をして、殿下の加点を出せない事もあり得ます。
最後に、減点要素の増大。教師がそれを黙殺しても、相手をした生徒や見ていた生徒は気付くでしょう。
教師が減点要素を黙殺した事実を、生徒がどう見るでしょうね。
それがどんな結果を生もうとも、責任を取るのは学園側です。
私は提案はしましたが、実行を強要していません。あくまで相談されただけですからね。
「学園の教師が情けないのか、ユーリ様が凄すぎるのか、判断に迷いますね」
「馬鹿王子と取り巻きの馬鹿さ加減が酷すぎるだけよ」
あいつらがまともなら、教師もあんなに苦悩しなかったものね。
ゲームではまだマシだったような気もします。何でこうなったのでしょうね。




