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言い掛かり

 入学して一週間、話せるお友だちも出来て、充実した学園生活を送っております。


 馬鹿王子は取り巻きの男子三人を従え、レイナとイチャイチャしているようです。

 当然の事ながら、レイナには批判が集まります。


「男爵の娘が殿下に馴れ馴れしい」


「礼節という物を知らないのかしら?」


 極当たり前の批判ですが、中には近付きたくても近付けない馬鹿王子と仲の良いレイナに対するやっかみもありそうです。


 私的にはそんな連中に近付きたくもないので無視しています。

 馬鹿王子に話し掛けられた場合は挨拶してますが。身分的にせざるを得ないですからね。


「おい、ユーリ!」


 お昼休み、仲の良い令嬢たちと食堂で昼食をいただいていた所に聞きたくもない声が響きました。


「これは殿下。何か御用でしょうか?」


 食べていた中辛納豆カレーの匙を置き、立ち上がって礼をとります。


「御用でしょうか?ではない!貴様は本当に見下げた奴だな!」


 このところ馬鹿王子との接触はありませんし、馬鹿が激昂する理由が分かりません。


「何をお怒りになっているので?主語が抜けていたら何も伝わりませんことよ」


「ツガル領都のワイバーンの件だ!レイナに聞いたぞ!」


 はて、ワイバーンを倒してツガル領都を救いはしましたが、責められるような事は無かった筈ですが。

 墜落したワイバーンは領都外に落ちましたし、魔法の誤射も無かった筈です。


「ワイバーンって、冷血姫様が倒したって奴だろ?」


「当時まだ八歳だったとか。流石は冷血姫様、憧れますわ」


 昼時で人が多い食堂内です。周囲の生徒も話を聞いています。


「貴様、倒したワイバーンを独り占めしたそうじゃないか!」


「………はい?」


 もしかして、倒したワイバーンを持って帰った事に怒っているのでしょうか?


「三頭も倒しておきながら、ツガル領には一頭も渡さなかったそうだな。その後のツガル領がどれだけ苦労をしたかわかっているのか!」


 この馬鹿は、自分が何を言っているのか理解しているのでしょうか。

 いえ、理解していないのでしょう。理解していたのなら、到底そんな事を言えませんから。


「復興に必要な資金を、ツガル領の者は必死で捻出したそうだ。貴様が一頭でもワイバーンを置いて行けば、そんな苦労はせずに済んだのにだ!」


 私も周囲も呆れて絶句していましたが、馬鹿はそれを感じ入ったと勘違いしたのか調子を上げて語り出しました。


「貴様が贅沢をする費用をツガル領に使っていれば、罪なき民は苦労しなかった。貴様は心が痛まないのか!」


 レイナは悲しげにうつむき、取り巻きの三人は滝のように涙を流しています。

 それを見る生徒の顔は皆同じで、ジト目で非難しています。

 心の内を言うならば、「お前、何言ってんだ?」でしょうか。


「……殿下、倒した魔物の所有権は、倒した者にあるという事はご存じですか?」


「当然だろう!だから、貴様がワイバーンを置いていくべきだったんだ!」


 確かに所有権は私にありますから、置いていく選択も私の一存で出来ました。


「私にはワイバーンを置いていく義務も義理もありません。何故そのような事をせねばならないので?」


「貴様は二つ名の通りに冷血だな。困った者に慈悲を与えるのは、高貴な者の務めであろう!」


「それは領主や国の仕事です。成人もしていない、一介の辺境伯令嬢のする事ではございません」


 だからこそツガル男爵は王都に援軍を求め、知らせを聞いた重鎮の方々は対策を論じたのです。

 もっとも、重鎮の方々はすぐに対策をしなくなったという話ですけどね。

 何故対策を投げたのかは、闇の中です。政治的な判断でもあったのでしょう。


「それはそうだが、貴様は復興の支援を無くすよう圧力を掛けたそうだな。そのせいでツガル領都の復興に支援金が出なかったそうじゃないか!」


「その話し合いは王城で重鎮の方々が為された筈です。ツガル領都でワイバーンを倒し、その後獣人の殲滅を行っていた私がどうやって王城に行くのですか?」


 時系列的に不可能である。ワイバーンを倒してすぐに王城に向かえばまだ可能性はありますが、私は三日という時間で獣人の殲滅をしていたのです。

 帰りに領都に顔を出しているので、アリバイは完璧です。

 獣人狩をしに行った振りをして王城に向かったという邪推も出来ません。


 完全なアリバイを提示され、馬鹿の追求が止まりました。

 生徒の馬鹿を見る目の温度が、一段と下がったような気がします。


 さて、また言い掛かりを付けられても面倒です。一部始終を話しておきましょうか。

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