瓢箪から駒
国内に住む獣人の保護は、スムーズに進みました。
リューイさんが各里を訪れ私の事を話していってくれたのです。
そのためどこの里でも私は歓迎され、到着した日に宴会。翌日は回復に充て私は子供たちをモフモフ。次の日に移動というパターンが確定しました。
隠れ里の場所も、リューイさんが次に訪れる場所を言い残して行った為それを辿るだけでした。
リューイさん、かなり獣人に肩入れする事になったけど大丈夫かしら?
世界を創造した神様もモフラーらしいし、大丈夫よね。
私が獣人を逃がした事はバレておらず、国内の獣人を一掃した功労者として称賛されています。
貴族達は冒険者ギルドの件と合わせて私に好意的で、表面上問題は起きていません。
冒険者ギルドは世界的に全滅し、光神教もその勢力を大きく落としました。
獣人排斥の教義を謳っていた光神教が衰退したので、獣人の排斥は収まった……のなら良いのですが。
現状でそれを確認することは出来ません。何故ならば、スエズ王国に獣人はほぼいないからです。
獣人がいない為、どんな扱いになるか判らないのです。
現在スエズ王国に残る獣人は二人きり。セティーとミリーです。
二人とも私の従者ということは、セティーにちょっかいを出した冒険者ギルドが消滅した事実と共に知れ渡っています。
手を出せば確実に破滅が訪れると分かっていながら手を出す馬鹿はいません。
王城には時々呼び出されています。内容は、王妃様とのお茶会。
婚約者である王子は始めのうちは同席を王妃様に命じられていましたが、すぐに来なくなりました。
初対面のお茶会で、お気に入りのメイドと離されたのが気に食わないらしいのです。
会う度に突っ掛かってきては、王妃様に叱責されました。それがまた気に食わず、突っ掛かって叱責。
この悪循環に王妃様が根を上げ、同席を禁じたのでした。
私としては、将来の婚約破棄に向けて順調に愛を破壊できて何よりです。
あっ、破壊も何も、元々愛なんてありませんでした。
ツガル領は復興に四苦八苦し、ツガル男爵家は貧乏に更に磨きがかかりました。
王城に来た伝令が、一部始終を正直に報告したらしいのです。
娘の我が儘が発端と知れ、ツガル領に対する国の援助は一切されない事に決まりました。
そのせいもあって、ツガル男爵は娘に対し玉の輿に乗るよう強く奨めているようです。
レイナにしてみれば、渡りに舟という奴でしょう。これも強制力ですかね。
そんなこんなで時は過ぎ、もうすぐ学園に入学する事になります。
森の中の館で正面にセティーとミリーが座り、背後には二人の騎士が付き従っています。
「セティー、ミリー、今日まで本当にありがとう。二人のお陰で随分と癒されたわ」
「そんな、お礼を言うのは私達の方です。同胞を救っていただき、言葉では言い尽くせません!」
それは私の望みでもあったのだから、恩義に感じる必要は無いのだけどね。
「私は学園に通わねばなりません。そうなれば、ここにはほぼ来れなくなるでしょう。二人とも、パナマにお帰りなさい」
セティーとミリーは一瞬大きく目を見開き、次いで悲しそうな表情になりました。
「私が居なくなる以上、この館にも領の館にもあなた達を置けないわ。王都の屋敷に連れていっても、学園に連れていく訳にはいかないの」
本音を言えば、一緒にいたい。でも、獣人は全員解放された現状、ゲームシナリオに彼女達を巻き込みたくない。
「ユーリ様、私達が居なくなったら王都屋敷の使用人が嘆きますよ?」
「私達はユーリ様のストレス解消道具として、重宝されていますから」
セティー、ミリー、それを狙ったとはいえ、道具扱いされているのを嬉しそうに言うのはどうかと思うわよ?
「ユーリ様が不在の時間は、我々がセティーとミリーを守ります。なので、どうかご安心を」
「セティーもミリーも、ユーリ様についていくと誓ったのです。それを無下になさるのですか?」
騎士二人がセティーとミリーの援護射撃を開始しました。ちょっとむきになっているような気がします。
「随分と熱心ね。……顔が赤いのは何故かしら?」
慌てて互いを見る騎士二人。セティーとミリーは天を仰いでいます。
「ふふっ、そう言う事ね。それならあと三年間、王都に付き合って貰うわよ」
「ユーリ様、私達は三年間といわず、ずっとユーリ様に仕えます」
「この命有る限り、ユーリ様のお側を離れません」
妙な方向に話が転がったけど、二人とも着いてきてくれる事になりました。
いよいよ始まるゲームシナリオ。私は生き残る事が出来るのでしょうか。




