03話 はじめての眷属生成
「お会いできて光栄です。ユウ様」
「こちらこそ! これからよろしくね。うーん。想像どうりだよ」
記念すべき最初の眷属生成を行った。
文明の差か、現代人を呼ぶと知識分で使う神気量がかなりのものになる。
つまり、歴史上の人物をイメージして呼び出すほうが地の能力的にかなりコスパがいい。
俺がネモに選ばれた理由にコレもあるのかね?
歴史ゲーしまくってるせいで、過去の英雄達の実態はともかく"俺の中のイメージ"はバッチリだからなぁ。
ちなみに消費神気量は23万。無事に普人族の進化形態であるハイヒューマンの生成となった。
眷属が辺りを見回してから俺に問いかける。
「ユウ様しかいないところを見るに、私が最初の眷属でしょうか?」
そうか。ある程度の事情は理解した状態で生成されるんだったな。説明減るのは助かるな。
かといって、まずはこれを言っておかないと話しにならない。
俺は真面目な表情を作り、未来を見通すような目で眷属に伝える。
「私がキミを得たことは、魚が水を得たようなものだよ」
「……ああ。どうやら有名な言葉のようですね。高く評価して頂きありがとうございます」
あれ? ことわざまでご存知? いい笑顔で軽く流されたよ?
くそう恥ずかしい。でもさ……言ってみたいじゃん!
仕方ないだろ。三国志好きならこの気持ち、わかってくれるはずだ!
「なんかすまん。気をつかわせちゃったね。さっきのはまぁ……冗談みたいなものだけど、まずは何事も戦略からでしょ? 相談相手がほしかったのさ」
「なるほど。それで私のようなものを最初の眷属に。光栄でございます」
歴史好きはもちろん、歴史系ゲーマーなら誰もが知っている三国志の天才軍師【諸葛亮 孔明】をイメージして生成した、コウメイ。
三国志を題材とした超有名ナンバリングタイトルでは、10作を軽く超える中 1作を除く全てでゲーム内最高の知力 100を持つ天才軍師。賢者の中の賢者である。
相談相手として、文句なしであろう。
ステータスはこうなっている。
コウメイ
神気量230000
種族・ハイヒューマン
身体 1
頭脳 7
特殊 2
・ユウの眷属
これで俺の神気量は770000となった。
「そのしゃべり方ってさ、なんとかならないかな? 硬くない?」
「なりませんね。私は眷属であり、貴方はご主君ですから」
想像はしてたけど、やっぱそうなるか。
俺ごときが天才軍師のご主君様ですよ。やりにくいよなぁ。ま、ゲームではお馴染みだし、できるだけ気にしないでおこう。
「わかった。とりあえず屋敷の調査をしようと思ってるんだけど、手伝ってもらっていい?」
「もちろんです」
その世界魔物いるんでしょ? まず安全確認しなくて大丈夫? とか思われそうだが、周囲一面の草原に目に見える魔物はいないんだ。
周囲360度、地平線の向こうまでの安全確認なんて時間かかりすぎるからね。
まずは拠点となりそうな屋敷の調査だよ。
さっそく外庭の門を開け、屋敷に向かう。外観は戦国時代の武家屋敷だな。
中に入り、各部屋を確認しながらぐるっと歩く。
「む? ご主君。これは一体?」
「……ディスプレイとマウスだな」
他の部屋はもうすべてはいった。
小部屋11に大部屋1、台所、中庭、中庭に井戸、厠(便所)といったところか。
そして最後の部屋に時代錯誤なPCテーブルと椅子、さらにディスプレイとマウス、マウスパッド。
パソコンあるなら助かるけど、インターネットなんてできるわけないよな。
そもそも本体が見当たらない。ディスプレイ一体型には見えない。
「意味わかんねえし、時代錯誤もいいとこだしなんだこれ?」
「ご主君でもわかりませんか。確認するしかなさそうですね」
「うん。確認しよう」
ディスプレイには空から見たこの屋敷が映っている。そして左側にメニューのようなもの。
・城改修
・領内開発
・宝物購入
・眷属
・情報
「信長の○望の内政メニュー!?」
「なにかおわかりですか?」
「いや、似たようなものに見覚えがあるだけで、これ自体はわからない……かな?」
「なるほど。私は初めて見ました。お力になれず申し訳ない」
宝物購入のメニューだけ文字が赤く光っている。
よくある目立たせ方であるが、嫌な予感がする。確認しないわけにもいかないが。
「うーん。こういうのは上から順番に確認していくのがセオリーかな」
「そうなのですね。定石は何を成すにも大切でしょう」
メニューを確認していった印象は、やはり信長の○望。
城改修メニューはどうやら神気をつかって天主の改修や石垣作りなんかができるようだ。
領内開発メニューは道や田畑、建造物もいろいろ作れるっぽい。
便利そうだなー。と思いながら確認をすすめ、赤光りしている宝物購入……をスルー。
「ご主君、定石はよいのですか?」
「コウメイよ。なにごとも臨機応変な対応が必要なのだよ」
「やはり、この光になにか問題が?」
「あるんじゃないかなぁー。なかったらいいけどあるだろうなー」
ここで俺は閃いた。押したらなにがあるかわからない。つまり、危険が存在する可能性がある。
それすなわち……家臣の仕事!!
「そうだ! コウメイも押してみる? ほらちょうどここに押して欲しそうに赤く光ってる項目が!」
「ご主君……いえ。そうですね。お任せください」
一瞬、冷たい目をしたように見えたが気のせいだろう。決意に満ちた表情をしている。
さすがコウメイ、そなたこそ天下一の忠義者よ!
願わくば、生きてクリックを完遂するのだ!
カチカチ……カチカチ……
「…………なにもおこりません。私の操作を受け付けないのでは?」
な!?
俺の操作しか受け付けないのか? 眷属だからだめなのか?
こうなれば仕方ない。
今やスルーという選択肢は、さすがにコウメイに呆れられそうで選べない。
それにこんなもん、ゲームではよくある。
新規情報あり。とか重要項目あり。とかそういう表現だ。
変なことが起こるとかありえないさ。
む…? これってフラグじゃね?俺こういう嫌な予感当たるんだよなぁ。嫌だなぁ。
いやいや、大丈夫だ落ち着け。生成してすぐに呆れられるとか流石に辛い。
気合を入れて……なにが起きても驚かないよう心の準備を済ませる。
よし! クリイイイック!!
『初回プレゼントを進呈』
ディスプレイから音が聞こえると同時に、テーブルの横から人が現れた。