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01話 俺は半神になるらしい



「ん……なにここ真っ白」


 本当に何もない真っ白な空間。明るく視界は良好なのだが……天井も壁も、床すらも見えない。


 ああなるほど。これが明晰夢ってやつか。

 夢を夢だと自覚するってホントにあるんだな。



『よく来てくれたね! 待ちわびたよ!』


 突然、後ろから弾むような声がした。人がいたのか?


 振り返ってみると、白い髪の美少年がいた。

 10歳くらいかな? ショタコンならたまらんようなルックスだ。



 まあ夢だしな……とりあえず会話してみるか。


「こんにちは……でいいのかな?」

『うん! こんにちは! ここには朝とか夜とかないからなんでもいいよ!』


 俺の夢の中やべえ。昼夜もないらしい。

 いや? ゲーマーの夢なんてそんなもんかもな。徹夜でゲームとかザラだしな。


「そっか。不思議な場所だね。ここはどこなの?」

『ここは僕の世界だよ』


 僕の世界……ね。神様てきなやつか?


「君は?」

『はじめましてだね! 僕はネモ。ネモと呼んでね』


 うん。よくわかった。なにもわからないってことがよくわかった。



 ま、どうせ夢だ。普通に会話を続けてみるとしよう。


「わかったよネモ君。俺のことはユウと呼んでくれ。で、なんで俺はここにいるんだい?」

『うん。いい名前だよね! ユウにはこれから僕の管理する世界にいってもらいたいんだ』


「ネモ君の世界?」

『僕が管理してる世界! きっと楽しいよ!』


 なるほど。"異世界転移モノ"か。

 ラノベで読んだことはあるが。まさか夢で見るとはなぁ。



 異世界転移なら魔法とか使えちゃったりするのかな。

 夢の中だけでもいいから、不思議能力つかってみたいな。


「もしかしてその世界って魔法とかある?」

『うん。魔法はあるよ! 説明書に書いてあったでしょ?』


「説明書? ああ。あのゲームのやつか。あのゲームの世界に行くの?」

『そうだよ! そこに行って欲しいんだ!』



 どうやら転移先は、あの謎のゲームの世界らしい。


 夢にでるほど印象深いゲームだったっけ?


 記憶にないな。あの謎のゲーム起動してから、俺プレイしたっけか?

 まあいいか。起きたらちゃんとプレイすればいいだけだ。




「オッケー説明頼むよ」

『うん。ユウにはその世界を見てほしいんだ。命の危険も眷族を作ればそうそうないよ!』


「眷属をつくる? 神様にでもなるの?」

『デミゴッドだね。神様ではないかな』


 デミゴッド……亜神とか半神ってことか?

 夢には願望が現れるってのがホントなら、俺ってとんでもない願望もってんだなぁ。



 しっかし俺をそんなご大層な存在にしてさ、世界を見てほしい。ってどういうことだよ。

 俺の夢とはいえ設定むちゃくちゃすぎるだろう。


 で、命の危険を回避するためには眷属を作れと。どうやって作るんだ?


「ネモ君。眷属ってどうやって作るの?」

『作り方は後で"渡す"ね。ま、神気を使って作るんだよ』


 神気? またよくわからん言葉がでてきたな。


 眷属の材料って認識でいいんだよな?

 そもそも神気ってのの作り方も知らんぞ。


「神気はどうやって作るのかな?」

『作るというか、集める? 力を渡さなきゃいけないし、知識も今から一緒に渡すね。ちょっと痛いかもしれないけど、ユウなら大丈夫だよ』




 俺にそう告げると、ネモは目をつむって集中を始めた。


 ネモの周りを、強い光を放つ細かな粒がユラユラと漂う。

 それはまるで、明るさなんて関係ないほどの光量を放つホタルたちが、ネモを祝福するかのような光景。


 光が織り成す芸術に息を呑む。光の粒から目が離せない。


 それはどんどん数を増やしながら、ネモから離れ俺に近づく。

 どれくらいの時間がたったのだろう。

 数え切れないほどの光の粒が俺を包み込んだかと思うと、俺の中に一斉に飛び込んだ。




 俺は理解した。してしまった。これは明晰夢なんかじゃない。

 "痛み"をしっかり感じてる。体中が痛い。

 もしこれが夢だとしたら、俺の体はたぶんいまごろボロボロのズタズタだ。




 痛みが落ち着いて、もらった知識を覗く。

 これはダメだ。夢ではないと理解したからこそ、余計にダメだ。


 俺が行くのであろう世界は……最初から詰んでる。


『渡せたみたいだね。なんとなくわかったかな?』

「ああ……俺は君をイイ子そうだと思ってたけど、間違いだったみたいだな」

『僕がイイ子か。うんイイ子ではないよね』


「"既に詰んでる世界"に人を送り込むいい子なんていないよな」

『やっぱりわかっちゃう? でもそれは大丈夫! そんなことには絶対させないよ!』



 うーん。まあ今は信じるか。なんか決心したような表情してるしな。

 見た目は少年なんだぜ? 少年相手に俺もぐちぐち文句ばかりは言えんわ。



「ところでなんで俺なんだ? 俺なんか飛ばしたところでどうにもならんぞ」

『そんなことないよ? ユウじゃなきゃだめ。ほんとに気にせずに世界を楽しんでよ』


「はぁ……そんなことでいいのか? 手伝えるってか時間稼ぎくらいなら俺もできるよな?」

『ありがと! その気持ちだけでも嬉しいよ。』



「で、知識はこれで限界か? できればできうる限り、ネモの持ってる知識が欲しいんだが」

『ごめん。今はこれ以上は無理なんだ。』


 今は……ね。

 またネモに会えるってことかな。その時に教えるつもりなんだろうな。


「了解。できるだけ時間稼ぎする方法でも考えるわ」

『うん。無理はしないでね! それと……ごめんなさい』


「いいってもう。ほれ。そんな顔してないで飛ばせよ」

『……うん! ほんとうに…………ごめんなさい』



 俺はまた意識を失った。

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