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15話 変態事件~犯人の住処~

2018/2/15

全体的に改稿を計画してます。

次話は改稿後になります。



「リル、犯人はあそこにいるのか?」

「はい。あの中にいるはずなのです」


「サクラ、神気レーダーの反応は?」

「ばっちりよ。奥に強い反応が2つあるわ」


「やはり2人か。コウメイ。洞窟攻略になりそうだ」

「ですね。覚悟はしていましたが……頭が痛いところです。本当にあの策でいくのですか?」


「ああ。ネモは"認められてほしい"って言ったんだ。じゃあコウメイじゃなくて俺が考えた策を採用するほうがよさそうじゃない?」

「承知いたしました。ですがご主君、くれぐれもご無理はなさらぬよう」






 俺はこの世界に戻ってすぐ、コウメイとサクラにネモから聞いたことを伝えた。

 コウメイは不足した情報からも必死に推察し、サクラはちゃんと聞いてるのかすら怪しかった。

 サクラよ。少しはコウメイを見習え。


 その後、事件の犯人に会うためにリルに協力を依頼した。

「もちろん手伝うのです!」

 と即快諾。


 最初からそのつもりだったようで、犯人の情報もしっかり教えてくれた。


 眷属の数は一名か二名。

 一人はこの事件の直接的な犯人。精神操作の能力を持つ。名をイゴールという爺さん。

 二名の場合、もう一人はこの犯人と行動を共にする協力者で、罠生成の能力を持つ。名をタルタという婆さん。

 二人とも古株のネモの眷属である。


 深い洞窟を本拠地とし、複数の罠を設置していることが予想される。

 俺たちと相まみえた際には、まずは対話となる可能性が高いだろうとのこと。



 情報を得たのち、リルの案内で、イーストティルスの近くにある敵拠点前に到着。

 さっきは敵拠点となる洞窟を攻めるため、最後の作戦会議を済ませていたのだ。





「ではまずは洞窟を突破する。リルは予定どおりここまでだ。ありがとな」

「むぅ~。わかりました。おわったらちゃんと念話してくださいね!」

「ああ。約束だ」


 この戦いにリルは連れて行かない。

 ネモの眷属同士で争うことはないだろう。


 着いて来る気マンマンだったようだが、終わったらすぐに報告すると言ってなんとか納得させた。





「では、攻略にはいる。目標二名と対話となった場合、対話は俺がする。その際の援護は念話で頼む」

「はっ!」


「いきなり殺意をむき出しにしてくる可能性もある。攻撃してきた場合、作戦どおり即座に無力化だ!」

「はっ!」


 サクラが全く返事をしていないが、これは仕方ない。

 正直いって作戦中にサクラのやることはほとんど……いや、おそらくなにもない。

 やることのないサクラを連れて行くかには少し悩んだが、サクラ自身も行く気だったし、リルと違って置いていく理由も特にない。



 よし、ではダンジョンアタックだ。いやダンジョンって呼ぶのは大袈裟か。ただの罠の多い洞窟だな。


 隊列は俺が前衛をつとめ、後衛に近接戦闘が苦手なコウメイとサクラ。

 前衛が俺だけだが、今回はただ敵を倒せばいいってわけじゃない。認めさせるのだ。俺の力を示さなきゃならないだろう。





 俺は気合をいれ、二人を鼓舞する。


「行くぞ!俺についてこい!」


 そして俺は走り出す。コウメイとサクラもしっかり俺の後ろをついてくる。



 洞窟に入り通路を走る。最初の広間が見える。


 ふむ。おそらくあそこに最初の罠があるだろう。

 こういった罠は読みやすい。部屋の入り口、中央、出口このあたりが罠の定番だろうな。


 気をしき締め、颯爽と通路を駆け抜――。やっちまった。まさか通路に――……


 勢いよく床が競りあがる。天井には大量の杭。逃れようにも、もはやどうしようもない。

 このまま俺の体はあの大量の杭にむかって勢いよく打ち付けられるだろう。



 ドグシャアーー!



「ご主君!」



 俺は死んだ。






 フッあいつがやられたようだな。だが奴は捨て駒。


 あからさまに罠がありそうな場所が視界に入ると、素人はそこに罠があると思いこむ。

 罠師ってのはその裏をかくもんだ。こんなの常識だろうに。


 俺は気合をいれ、足を止めた仲間を鼓舞する。


「行くぞ!俺についてこい!」


 発動済みの通路の罠を回避し、颯爽と広間を駆け抜――やっちまった。通路だけでなく広間にもだと!?


 なにかが切れる音が聞こえた瞬間だった。

 天井にくくりつけられた鉄球が振り子のように放物線を描き、勢いよく俺に向かってくる。これは……もう避けられない。

 

 

 ドグシャアーー!



「ご主君!」



 俺は死んだ。







 おわかりいただけただろうか?


 ただただ全ての罠にはまり、その罠を味わいつくしながら進む伝説の罠解除方法。漢解除。その応用である。


 え? 死んだんじゃねえのかって?


 死んだよ。俺の分身がな!



 仙術の代表的な術のひとつ【分身の術】

 引き出しは多いほうがいい。事前に、仙術についてサクラに教えてもらっておいたんだ。



 分身といえば強力な能力を想像するが、この世界の分身の術はそう強くはない。


 歩く・走るなんかの基本的な動作は可能。視覚や嗅覚等の感覚すらも共有できる。

 しかし、神気を持てないので肉体や頭脳の強化はされない。特殊能力も使えない。さらに、魔素を取り込めないため魔術・仙術が使用できない。


 だが、今回のように使い方次第では化ける能力だ。


 俺たちに罠回避を得意とする者はいない。

 ならばどうするか? 分身で漢解除すればいいのだ。


 そう。単純に"俺の本体"の前方を"分身した俺"が走っただけ。

 この方法で俺たちは全ての罠を発動させ、変態事件の犯人イゴールとタルタの待つ広間の手前に到達した。




「オエエエエエェエ」

「ご主君! 大丈夫ですか?」


「ああ大丈夫。吐いてスッキリしたわ。

 覚悟はしてたけど、あー俺潰されてるーって感覚、やっぱきっついなぁ」


「だからあたしはコストの安い眷属つくって囮にしろって言ったのよ」

「いやかわいそうじゃん? それに、変なテンションで駆け抜ければ乗り切れる自信もあったし……」


「なによそれ。まあいいわ大丈夫そうだし。コウメイくんも顔色が戻ってきたわね」

「はい。もう落ち着きましたよ。やはり分身とは言え、ご主君が潰される光景は心臓に悪いですね」


 "分身は感覚すらも共有できる"つまり痛覚もちゃんと感じるんだ。

 ぶっちゃけ辛い。精神的に折れなかったのは変なテンションを維持したおかげだろう。 


 ま、無事罠だらけの洞窟を突破できたんだ。

 二度とやりたくないが、俺がゲロった以外の被害はない。

 気を引き締めなおしてボス戦といこうぜ。



「よし! 準備はいいか? さ、変態事件の犯人どものツラ、拝みにいこうか!」

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