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13話 ネモの眷属



 サクっと素材の換金をすませ、俺たちはシモーナ兄妹にオススメされた宿屋に向かった。



「宿屋なら【ゴリラの宿】に行けば間違いないよ!」


 結論から言おう。兄妹のオススメに間違いはなかった。

 名前のせいか客は多くはない。しかし飯も旨いし部屋も綺麗。レベルの高い宿なんだろう。

 コウメイもサクラも満足していたようだ。

 

 名前については……店主に会えばすぐにわかる。とだけ言っておこう。




 3人部屋をとったが、決めなければいけないことがある。


「なあ、今日はここで寝るか? もし部屋に誰か来たらゲート見られるよな?」

「全員で戻る必要はないでしょ。あたしが屋敷に戻るわよ」


「そっか。一人向こうに行った後に回収して、朝にまたゲートで迎えにいけばいいのか」

「そーいうこと。ないとは思うけど、もしなにかあれば念話するわ」


「ワンコの餌だけは俺が魔力あげにいくか。ユユたちも大変だったんだし。その後交代しよう」

「それがいいわね。あんたの魔力があの子たちにとって一番のご褒美だもの」



 今後、宿屋に泊まる時はこうすればいいな。

 明日の予定をある程度たてて、俺達は異世界二度目の夜を越えた。






 異世界3日目の朝、予定どおりにサクラを迎えにいく。

 サクラを連れて宿屋に戻った途端、驚きの発言が飛び出した。


「変態を増産した犯人がわかったわ」

「まじで? すげえな。どうやったんだ?」


「知人に念話しただけよ。落ち着いて聞いてね。犯人は……ネモくんの眷属よ」


 は? なんでだ? あのネモの眷属がそんなことするか?


「ネモと連絡はとれるか?」

「あたしはできないけど、できる子をティルスの近くに呼んだわ。詳しくはその子に聞いたほうがいいわね」


 ネモと連絡をとれる子だって?

 すぐにでも会いたいな。変態量産事件もそうだけど、ネモに聞きたいことは山ほどあるぞ。


「いつ到着するんだ?」

「もう来てるわ。すぐ出るわよ!」





 急いでティルスをでてサクラを先頭に走る。


 10分ほど走っただろうか。

 森の中にある石造りの小屋の前でサクラが止まった。

 手入れをされているようには見えない。扉もなく出入り口であろう穴があるだけだ。


 この中に、ネモと連絡が可能な人が待っているんだよな。

 逸る気持ちを抑え、慎重に中に入る。



 ここに入ったのは運命だったのだろう。

 俺は運命の出会いをしてしまった。





「はじめましてです!ネモ様の眷属のリルっていいます!」


 俺は猛烈に感動している。なんだこの愛らしい生物は。


 ピクピク動くケモ耳とフワッフワそうな尻尾。そしてそれを携える超絶美少女。

 これが天使か? いや女神様かもしれん!


「ははぁ! 私はユウと申します。お目にかかれて光栄に存じます!」


「ええーっ!? サクラおねえちゃん。助けて……」

「はぁ……あんたなにしてんのよ。この子もネモくんの眷属よ? なにいきなり畏まってんの?」




 この子がネモの眷属だと!?

 ネモのセンスはんぱない。リスペクト。圧倒的リスペクトだ。

 ネモと同い年くらいかな? 10歳手前くらいの獣人……狐か?


「すまん。圧倒的な可愛さに取り乱した。ごめんねリルちゃん」


「可愛いって言ってもらって嬉しいです! それと、リルって呼んでください!」

「リル。いいから説明しなさい。このロリコンはほっといていいわ」





 ロリコンじゃねえよ!

 20代後半くらいのシモーナを綺麗だと思ったし……ってあいつ男だったな。俺に男色の気はない!


 問題はリルだ。こんな可愛い子を目の前に平常心でいられる男がいるわけがない!

 ほら見ろよコウメイだってデレデレに……まったく表情かわってねえな。


 別枠だ別枠! コウメイはポーカーフェイスなんてお手の物の大軍師なんだ。

 そんなことは関係ない。俺はロリコンじゃない――……のか?


 このケモ耳美少女が好みと聞かれればどうか。

 凄まじく愛らしい。目に入れても痛くないレベル。


 うむ。だめだロリコンかもしれん。

 やばいよケモ耳。なでたい。もふりたい。尻尾だってやばい。

 そうか! 人生27年、今ようやくわかった!



「ロリコンでもいい! さあリル様、その愛らしい肉球で是非! 我が顔面をお殴り下さい!」



 ――――ボゴォッ!!




 俺は殴られた。


 想像していた肉球パンチとは全然違う感触。

 肉球とは思えないほど硬く、小さな子のパンチとは思えないほど鋭い。



 当然だ。俺には腕を振りぬいたサクラが見えている。


「痛ってえ! サクラおまえマジ殴りすることないだろ!」

「ご希望どおり殴ってあげたわよ! 感謝することね!」


「グーパンとかアホじゃねーの! せめてパーだろパー!」

「うっさいわね。そもそもリルちゃんに肉球なんてないわよ!」

「あわわわ。ごめんなさい私肉球ついてないです。ごめんなさい!」


 くっ。だめだ全く落ち着いてなかった。

 これがケモ耳の恐ろしさか!



 ふぅ。認めたくはないが、サクラに殴られて落ち着いたかな。

 今度こそ大丈夫だ。聞きたいことは山ほどある。


「ゴホンゴホンッ! 場を和ませるギャグさ。さあ説明を頼む」

「まさか真性のロリコンだとは思ってなかったわ。リル、頼むわ」


 なんとでも言え。俺は場を和ませるために体をはっただけだ!





「はい。じゃあ説明するです。その前に、ユウさんは眷属についてどこまで知ってますか?」

「そうだな。デミゴッド以上の者が作り出した存在。創造主への忠誠が揺らぐことは無く、創造主の意思を遂行しようとする。こんなとこか?」


「だいたいそれで合ってるです。でも、私たち眷属がする事が全部主様のお考えどおりかっていうと……そうじゃないんです」


 なるほどな。よくある話しだ。


 例えばそうだな。

 俺が悪女に騙されて、貢がされながらも大事にしていたとする。その悪女の思惑をコウメイが看破して、俺への忠誠心から俺と悪女を引き離す。

 こんな感じか。


「創造主への忠義をベースに物事を考えるけど、出した結論が創造主の意思と反する場合がある。ってことだな」

「そうなのです。主様のためを思ってなにかしても、それがホントに主様のしてほしい事なのかはわからないです」




 今この話しをするってことはつまり……

 犯人はネモのために変態を量産。しかしそれはネモの意思には反している。

 なんだそれ? 意味がわからんにも程がある。


「ネモの意思に反した行動をとる眷属がいる。そしてそいつが犯人ってことで……いいんだよな?」

「です。主様がこんなことを望むはずがないです」


 謎は増すばかりだ。

 まあネモがこの世界に変態を増やしたいとかじゃなかったからいいか。

 もうこれ解決したようなもんじゃないか。




「犯人が何考えてんのかサッパリわからんけど、でもまあこれで解決だな。リルかネモがその眷属に注意すれば終わりだろ?」

「それが、これが主様の眷属としてやるべきことだって言ってて……リルの言うことなんて聞いてくれません」


「変態を量産する頑固者? なにそれ怖い。ネモからの注意でもだめ?」

「主様は……混乱してます。主様に届いている情報が入り混じってるんです」


 ネモの眷属がネモに嘘をついている?

 ありえなくはないのか。その嘘がネモのために必要ならば、嘘をつくのもまた忠義か。




 でも……なぜ確認しない?

 この世界はネモが管理してるんだろ? 自分でどうなっているのかを見ればいい話しだ。


「ならさ、なんでネモはこの世界に来て確認しないんだ?」

「主様は……この世界にはこれません」


 この世界にこれない? まさか……

 俺の感情がリルに伝わったのか、リルが少し怯えているように見える。


「リル。それはいつからの話しになる?」

「500年前……くらいになります」

「今すぐに"俺をネモの世界に呼べ"と伝えてくれ。できるんだろ?」




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