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11話 最悪・最恐の特殊能力



「俺はここのギルド長をしているバウドだ。よろしく頼む」

「よろしくお願いします。俺はユウ。後ろの二人はコウメイとサクラといいます」


 買取り担当ってギルド長かよ。人材不足か?


 ふーむ。この迫力満点な大男がギルド長か。

 強いのかどうかステータスを見ようかと思ったが、自重する。

 勝手に見られて嬉しいもんではないだろう。




「ヘルバードの素材を持ち込んだのは君たちだな?」


 そう。俺はアイテムバッグからヘルバードのクチバシと爪を出した。


 ヘルバードとは一般的には充分に高位と言っていい魔物である。そしてそのクチバシと爪には高い需要がある。


 なぜそんな素材をいきなり出したかって?

 俺達が倒した魔物のサイズは全体的に大きい。アイテムバッグを隠すなら数を出すわけにはいかない。

 即急にある程度のお金が欲しいからね。出し惜しみはしない。




「そうです。買い取りお願いできますか?」

「ああ。喜んで買い取らせてもらおう。まずこれが代金だ」


 そういって銀板を1枚渡される。



 ちなみに、この国の貨幣の単位はイルっていう。

 鉄貨 1・鉄板10・銅貨 100・銅板 1000・銀貨 1万・銀板10万・金貨100万・金板1000万。

 わかりやすくてありがたい。





「で、これは南にある山で狩ったんだよな?」

「はい。そのとおりです」


 やはり聞かれるか。ギルドでの買い取りは詮索されないのが一般的だ。

 しかしあくまでも一般的には。なのだ。


 聞かれた場合の対応は、既にコウメイ大先生と相談してある。

 実力のありそうなギルドなら下手に隠さない。

 隠す必要性は無いし、隠さないほうがどんな組織なのか掴みやすいだろう。




「なるほど。応接室にきてもらえるか?」

「いいですよ。ただ、他にやることもありますので一時間まででいいですか?」

「充分だ。ついてきてくれ」


 話しの漏れない場所で俺たちの情報を聞き出す。そして勧誘という流れが本線かな。

 この流れも想定済みだ。コウメイ大先生を舐めてはいけない。


 情報が欲しいのは俺も一緒。

 かといって、ダラダラとしつこく勧誘なんかされると面倒臭い。

 なら最初に終了時間を決めとけばいいってわけだ。






 応接室に移動し、促されるままに着席する。


「まずは時間をとってくれたことに感謝する。君たちはこの国のものという認識でいいか?」

「いえ。まだ来たばかりのよそ者ですよ。ですので感謝もいりません。情報がほしいのはコチラも一緒です」


「む? どういうことだ? 国の関係者ではないのか?」

「え? どうしてそうなるんですか? 全く違いますよ。旅人みたいなもんですね」


 なんだ? このオヤジは何を勘違いしてんだ?



「あー……だいたいわかった。まあいい。サウスティルスには行ったのだろう?」

「そんな頭のおかしい街は、俺の記憶には一切ございません」


 俺はそんな変態の巣窟は知らない! 知らないぞ!


 サクラもサウスティルスって聞いた途端に嫌そうな表情になってる。

 コウメイは流石だな。こういう場で表情は変えない。




「行ったようだな。予定とは違ったが、単刀直入に言おう。君たちに協力してもらいたい仕事がある」


 ファッ!? 登録を促さず、いきなり仕事振られるだと? なんだなにが目的だ?


(ご主君。動揺が見えておりますよ。情報収集のための揺さぶりの可能性もありますが、本当に手助けを必要とする難題があるように見受けられますね)

(ありがとうコウメイ。初対面の俺たちに手助けを求める難題ねえ……厄介そうだね)


「安請け合いはできません。どんな仕事を?」


「うむ。この国は五つの大きな都市で構成されているのは知っているか?」

「はい。ティルスを中心とした東西南北ですね」


「そうだ。そのうちの南と東。サウスティルスとイーストティルスに問題が発生している」


 げ……サウスティルス関係かよ。あんな変態共の集い場、二度と関わりたくないぞ!




「すみませんがお断り――」

「わかるぜ。あそこに関わりたくないんだろう?」


「当然です。無理です。不可能です。奴らと同じ空気を吸いたくありません」

「共感はする。しかし情報は持っておけ。話しを聞くくらいはいいだろ?」


 そのとおりではある。サウスティルスに行くことはないだろうが、拠点から一番近い人里だ。

 行かない……違うな。行けないからこそ、外部から得られる情報の価値は高い。


「そうですね。念は押しておきますが、仕事を請けるとは限らない。いえ、断ることが前提ですよ」

「当然それでいい。質問は後で聞く。まずは話しを聞いてくれ」





「まず異変がおこったのは東の街イーストティルスだ。突然頭のおかしな事を言う奴が増えだしたとの報告があがった」


 頭のおかしな事を言う? 確かに俺も頭のおかしな事を言われた。

 あれってあの街が元々変態だらけなんじゃなく、最近になってなのか。で、それが問題になっていると。


 おっさんABCよスマン。素だと思ってたぜ。



「国は扇動者にでも影響されたのかと考えて捜索隊を派遣。が、扇動者の情報は見つからなかった」


 ふーむ。扇動活動が行われているなら、調べれば情報なんてすぐ上がるわな。

 原因は扇動じゃないと見ていいだろう。



「この捜査で更なる問題が起こった。帰還した者によれば、捜査員のうちの7割以上が意味のわからない発言を繰り返した上、命令を聞かなくなる。ティルスに帰還すらしなかったそうだ」


 ほう。精神操作的ななにかが行われていて、捜査員も被害にあったとか? うーんわからん。



「国は何者かの特殊能力の可能性を考えた。まず捜査隊のうち無事に帰還した者の傾向から、戦闘経験の多いものは被害を受けない。もしくは受けにくいという仮説を立てた。」


 戦闘経験が多ければ大丈夫? それって……神気量か?

 神気量が多いと精神操作が効かない。もしくは効きにくい。その可能性はありそうだな。



「そこで国は精鋭兵と優秀な魔術師の派遣を決定した。しかしそれでも原因は全く掴めなかった。更に、サウスティルスからも同じような問題が起こっているとの報告があがる」


 ふむ。国の抱える優秀な人材でも解決どころか原因すら掴めないと。かなり厄介だな。



「そこで俺たちのような知名度と実力のあるギルドに協力要請がでた。俺のギルドは戦闘経験の多い奴なら揃ってる。俺も確かな実力を持った信頼できる奴らを送り込んだ。結果は……被害も無いが収穫も無しだ」


 そりゃな。国が調べてわからないんだ。ギルドが簡単にわかるなんて考えづらいわ。

 いくら信頼と実績があっても、ギルドって人材派遣会社みたいなもんだしな。




「と、まあこういうわけだな。お前たちはサウスティルスに行って、被害を受けずにここに来た。つまり捜査員として調査に乗り込んでも大丈夫な奴らってことだ」


 筋は通っている。か。


(コウメイ、原因の予想はつくか?)

(何者かが精神操作でもしているのでしょうか? しかし情報が少なすぎます。目的すら読めません)

(なるほどな。コウメイがわからなきゃどうしようもないだろ。断ろう)



「情報には感謝します。が、協力といっても何も思いつきませんし、仕事を請けることはできませんね」

「そうか。残念だが無理強いはできん。自分で言うのもなんだが、俺は頭には自信がない。もしなにか情報を掴んだら、是非ここにまた来てくれ」



「わかりました。今日持ってこれなかった魔物素材がまだまだあるので、数日はここに通わせて頂くつもりです。情報があればその際に」

「ああそれで頼む。……俺はな、サウスティルス出身なんだ。故郷を変態の街にされては……な」


 ひえぇー想像するだけで恐ろしいわ。

 ある日いきなり古い知り合いが全員変態になってるとか最悪だわ。

 そりゃそんな悲しい顔にもなるってもんだろう。


 同窓会なんてしようもんならえらいこっちゃだ。

 わかる。わかるよバウドさん。そりゃ全力で解決したいよな。





「はい。では時間もありませんし、失礼しますね」

「ああ、素材の買い取りはまかせてくれ」


 もし、変態化する特殊能力が存在するのなら……想像するだけで恐ろしい。最悪・最恐の能力だろう。

 頭には置いとこう。がんばれ国!がんばれバウドさん!

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