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09話 異世界初の挫折


 おはようございます。


 あれから予定通り適当な洞窟を見つけてゲートで帰還。

 またお空からお届けしております。



 いやぁ昨晩は大変だった。

 帰還後すぐに怒られたんだよ。いや、俺は悪くないと思うんだ。


 神様システムの城改修メニューにさ。風呂があるんだよ。さらに領内開発メニューには銭湯もある。

 返り血も浴びたし、汗かいたし。当然作るよな?


 そりゃ作るだろ。なにを怒られることがあるんだ?と思うかもしれないが、実際コウメイが怒った。

 思いだしたくはないが……こんな感じだ。




「じゃあコウメイ。お風呂つくろっかー」

「ご主君、ご再考下さい。風呂は消費する神気と効果との釣り合いが良いとは言えません。クリーンで代用しましょう」


 クリーンは風呂や洗濯いらずの、綺麗にしてくれる便利魔法だ。


「いやいや、お風呂って綺麗にするだけの場所じゃないよ? 命の洗濯をする場所だよ?」

「あんたいいこと言ったわ。そのとおりよ! お風呂は大切なもの。まさに命の洗濯だわ!」


「だよなだよな! 石鹸とかのオマケもあるのかな?」

「石鹸なんて買えばいいじゃない! 明日にはティーラスよ!」


「おお! 普通に売ってるんだ。買うしかねえ。必要経費だ! シャンプーとかはないよなぁ?」

「しゃんぷー?なにそれ」


「やっぱないかー。髪の毛専用の石鹸みたいなもんかな。髪の毛石鹸で洗うとギシギシするからな」

「そんなのもあるのね! 興味はあるけど、まずはお風呂の設置よ! どんなお風呂なのか楽しみだわ!」


「そうだな! いやぁーほんとに楽しみだ。ん? コウメイどうした? なんか静かだけど」

「ほんとね。どうしたの? わかった。一番風呂とるための策を練ってるんでしょ。譲らないわよ!」


「は? 一番風呂は俺だろ? 俺の神気だぜ?」

「なによ。あたしにきまってんじゃない。レディーファーストよ」


「なんだとぉー!」

「なによ!」


 こんな風に俺たちはお風呂の話しで盛り上がってたんだ。

 そこに突然、コウメイの雷は落ちた。



「だまらっしゃい!!!」




 俺たちのハートは、生で聞く「だまらっしゃい!!!」の迫力にポッキリと折れた。

 こうして、コウメイにより異世界で初めての挫折を味わうこととなった。




 ちなみに風呂設置の神気は5万だ。


 昨日の戦闘で得た神気量は7000強。

 昨日殺害した魔物は高位の魔物を避けたといえども、数は軽く100を超える。

 一匹あたり60強ってところか。


 うん。たしかに5万はそう簡単に出せる神気量じゃない。そこは納得だ。

 しかしだ! それって逆に考えるとさ、それだけとてつもない風呂なんじゃないの?

 はいりたいよな! 必要経費だよな!


 そうは思えど、コウメイを説得する方法なんて俺にもサクラにも思いつかない。



 舌戦でコウメイに勝つ?

 無理だ。なみいる論客が沈黙した相手に、俺ごときでどうにかなるわけがない。


 こうして風呂は残念ながら……ひじょーーーーに残念ながら…………保留となった。





 街についたらどうするかってのも決めた。

 こっちはすんなり決まった。

 まずローブを買いたい。そのために冒険者ギルドに素材を売りにいく。以上。


 ここで、この世界の冒険者とは何か。をまとめておこう。


 簡単にいってしまえば、冒険者ギルドという派遣会社の労働力である。


 大きな街であれば複数の冒険者ギルドがあることも珍しくない。

 魔物がいて争いもある世界。一時的な労働力の需要は高いのだ。


 各ギルドは登録者の傾向や創業者の理念などにより、それぞれ得意なジャンルができていく。

 そのため登録のための試験の有無や内容は、ギルドによってまちまちである。


 例えば、魔物に特化しているギルドには戦闘能力のテストがあったりするわけだ。



 そもそも登録などなく誰でも利用できるギルドも多い。

 こういったところは、ただ依頼を掲載している酒場や飯屋と言ってもいい。


 この手の兼業ギルドの場合、仕事をしたい人間が直接依頼主に会いにいって交渉するのだ。

 田舎だとたいていこのスタイルである。


 どちらにせよ、素材なんかはほとんどのギルドが買い取りもしている。

 皮は皮屋に、魔石は魔石屋に。といっためんどうな部分の代行業も兼業しているわけだ。





 こうして異世界初めての夜はコウメイに怒られる以外は無事に終わり、今はティーラスを目指してお空のお散歩再開中である。


「なあそろそろティーラスだよな? 思ったんだけどさ、一番評価の高い魔物討伐系のギルドとか探して、登録しちゃうのもありじゃない?」

「神気のため? 高位の魔物退治したいならあたしの神気レーダーで探せばいいじゃない」


「それもあるけど。旅する以上、他にできそうなことも思いつかないしな。コウメイはどう考える?」

「必要性はないですが登録も一興かと。お仕事をされる気でしたら、選択肢としては有力候補でしょう」


「一興ねえ。仕事しなきゃいけないってこともないしなぁ。悩ましいな」

「ま、素材売るのにギルド行くんでしょ? どっちみち実際にどんなところか見てからでいいんじゃない?」


「そりゃそうか。実際行ってみたら想像と違う。なんてあるあるだしな」


 冒険者ギルドでの素材販売は、魔物討伐系のギルドに社会見学を兼ねて行く。に少し予定変更だな。





 ちなみに昨日戦った魔物達は、もうすでに素材になってる。

 サクラちゃんの便利道具パートスリー【剥ぎ取りナイフ】なるものでサクっとね。


 素材の剥ぎ取りとかしたことないし、魔物30匹分くらいあるから無茶苦茶助かった。

 ヘルプさん大活躍である。



 さあ、もうすぐティーラスだ。初めての人里。どんなとこかね。

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