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第5話 ゴブリンの夜盗が凶作を連れてくる?

家に着き、一通りの荷物を置いた俺とリィは食卓テーブルに通された。

「この度は遠路はるばる、大変ご苦労様でした。私は次期村長のアムスです。そちらの御二方は?」


「私はリィ。今回このクエストを受けてやってき者だ。隣にいるのがヌルク」


「こんにちは。初めまして、ヌルクです。今回はこのクエストの助けになれば、とリィが連れてきてくれたのです」


「そうでしたか。いやはや、手狭で申し訳ない。ちょうど夕餉どきですが、もうお食事はお済みで?」


「はい。私たち2人はもう食べてきてしまいました。どうぞお気になさらず」


「おお。なんと、ありがたい」


そうこぼしたアムスはこう続けた。


「大変心苦しいのですが、今年の村は数年に一度訪れる、奇妙な凶作の年なのです。この不作の年は少し特殊な年で、麦や畑のもの自体は例年通り収穫できるのですが、食べたあとに凶作かどうかがわかる、という年なのです」


「収穫はできるが、食べたあとに凶作とわかる、というのは少し妙に聞こえる。どういうことだ?」


「畑から収穫後、製粉ないしは調理し、食べたあとにある奇妙な症状を催すものが村に何人か出るのです」


「奇妙な症状とは一体なんでしょう?」


あまりに気になりすぎて、思わずクエストには直接関係ないことを聞いてしまった。一応生前医者の卵だったし。


「それが、その…なんというか説明しづらいのですが、皆違う様子なのです。あるものは息苦しさを、あるものは手足の痛みを、あるものは竃の中に聖神の光を見た…などなど、全く皆が皆別のことを言うのです」


「それは確かに、少し妙ですね。その症状が出てきたのはいつ頃からですか?」


「ついひと月前ほど、この村で収穫祭が行われたのですが、それから1週間後…あたり、ですかね」


「過去にもこういうことが起こったのでしょうか?」


「3年前…あたりのことでしたかね。すいません、記憶が曖昧で。その年も、今回と同じく、ゴブリンの夜盗に悩まされた年で、かなり村内が忙しかったのでよく憶えておらず…」


アムスのその言葉に俺は引っかかりを感じた。ゴブリンの夜盗のあった年と凶作は同じ年だという。ならばゴブリンの夜盗と凶作に何らかの関連があると考えるのが自然だ。

明日、村の畑と貯蔵庫を調査する必要があるな。


「その、ゴブリンの夜盗というのはどういう手口なのだ?」


「ゴブリンの夜盗は数年周期でやってきて、貯蔵庫から、作物の貯蓄を盗んでいくのです。前回の凶作の際には種類を問わず、作物を奪っていたのですが、ここ最近は特に麦が狙われているようです」


「ゴブリンの夜盗はいつ頃から始まったのですか?」


「収穫祭の前頃から、とは記憶しているのですが、すいません、全ての村民の被害状況を把握しているわけではないのです。詳細な被害状況はすいませんが他の村民にお聞きください」


これも明日の調査だな。


「アムス殿、このたびのクエストの詳細をもう一度教えていただきたい」


「あ、あぁ、そうでした。その件のゴブリンの夜盗から10日ほど、村を守っていただきたいのです。収穫祭も終わり、しばらくは貯蔵庫に潤沢にあるのでゴブリンはそれを狙ってやってきますので」


「もし、件のゴブリンを全て殲滅させた場合、報酬に上乗せされるのか?」


「それは勿論です。今回のクエストの報酬の倍額をお支払いいたしましょう」


「なら良い。ではこれより10日、夜盗に入るゴブリンの駆除、承った」


リィとアムスは固い握手を交わし、クエストを正式に受諾した。


「ありがとうございます。ところで、あの、すいません、話は変わるのですが、そのお2人同じ部屋と寝台でもよろしいでしょうか…?」


「ぅえっ!?」

リィが素っ頓狂な声をあげる。ふとリィの方を見れば首の方まで真っ赤になってきていた。

こいつ、もしかしなくても経験ないな?


「いや、押しかけてしまったのはこちらの方です。同じ部屋と寝台でも大丈夫ですよ」

俺はニンマリした。

これは翌朝『昨夜はお楽しみでしたね』とか言われるフラグではないか!!!


「そうでしたかそうでしたか。では、後ほど、湯浴み桶をそちらのお部屋にお運びしておきます。どうぞそれまでごゆっくり」


何かを察したのか、アムスもニヤニヤしてそれに答えた。ありがとうアムス。お前良い奴だな。


「じゃあ、リィ、部屋に行こうか」


「えっまっまっまだ心の準備が!」


更に上ずった声をあげるリィの手を引いて、俺は食卓テーブルを後にした。

次回の更新は1/9 21時です。

次回は(主に作者のための)お楽しみ回!!

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