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プロローグ
「この世界は素晴らしいだろ?」
彼女はいつもの不敵な笑みを浮かべていた。
思えば一貫してこの笑みを崩した所を僕はまだ見ていない。
絶対的に強烈で、絶望的に優しい。
絶対的に虚弱で、絶望的に強靭。
絶望的に平和で、絶対的に混沌。
絶望的に甘くて。絶対的に厳しい。
どうしたって僕は普通の人間であり、
強靭な肉体も、天才的な頭脳も、
妖艶な魅力も、健全な精神もない。
ただ、神様には愛されていないだけの人間だ。
そんなのは珍しくもない。
憤怒に焼かれた傭兵は復讐で人を殺す。
慈悲に満ちた狂信者は救いの為に人を殺す。
国を想う軍人は自国の為と偽善を抱えて人を殺す。
街人を震撼させた殺人鬼はただ快楽を求めて人を殺す。
では、僕は何の為に人を殺すのだろうか?
……いや、考えるまでもないか。
僕は観察者であり、自分のために人を殺さない。
その不敵な笑みを見て、僕は口を開く。
「そこそこです。ところで僕は何でベッドでねてたんでしたっけ?」
自分の事ながら他人事のように思い出そうとする。