093 林檎 に ついて
私は林檎が好きだ。あのさっぱりとした甘みと酸味が良い。硬めの果肉を歯で噛みながらその味をじっくりと味わうのだ。じっくりとは言っても、すぐに飲み込んでしまうことが多いが…。それでもなお、味は口内に残り続けて、私を幸せにする。一つ、また一つと食べているうちに、切り分けていた林檎が無くなってしまうことなど、何度起きたことか。もはや数え切れないほどだ。半ば無意識で口に運んでいるのかもしれない。
スーパーなどで売られている玉の林檎を買うと、その処理が一手間かかるが、その時間もまた良い。一手間というのは皮の処理のことだ。皮処理は、二通りの方法で行われているだろう。一つは、まず林檎を食べやすいサイズに切り分けてから皮を取る方法。もう一つは、玉の状態から皮を処理する方法。私の場合、はじめは切り分けてから皮を取っていたが、切ることに慣れてくると玉の状態から切るようになった。だが、最初は慣れていないので結構な時間がかかった。持ち方も効率化していなかったので、皮を切っているうちに、果肉は変色していた。処理に時間がかかると味が落ちる気がして、なるべく早く処理しようとしているうちに、処理速度は向上した。今では、さほど時間をかけずにできる。
玉から皮処理をした時は、大抵そのまま噛り付く。皿を使わないので洗う必要も無く、経済的だ。歯が丈夫でないと噛り付くことはできないが、たとえ丈夫でなくても噛り付くのはやめられない。たまに、歯の間に果肉が挟まってしまうこともあるが、まぁ、それも仕方のないことである。噛り付くためには、多少のリスクは必要なのだ。
噛り付き、歯で果肉の壁を削り取ると、甘い汁があふれ出る。同時に、口の中に広がる甘味と酸味。一噛みするほどにそれは湧き出てきて、食す者を幸せにする。柔らかい果肉だとすぐに口から消え去ってしまうが、林檎は硬めの果肉なので噛みごたえもあり、長く楽しめる。
そのまま食べるのも良いが、調理して食べるのもまた美味い。アップルパイにしても美味しいし、ヨーグルトの中に入れてしまうのも良い。単体でも美味しいが、他と組み合わせるとまた美味しいので、万能に近い気がする。気がするだけだが、本当に美味しいのだ。
ただ、一つだけ合わないなと思った組み合わせがある。小学生の頃の給食で、野菜類のカテゴリーで出された料理なのだが、あれは何和えだったか。ほうれん草と林檎を白い何かで和えていたのだが、あれはちょっと敬遠したいものだった。林檎を単独で楽しむと、残るほうれん草が苦痛でしかなくなるので仕方なく一緒に食べていたが、甘みと苦みが合わさって、何とも言えない感じになるのだ。ちょっと苦手だったので、あまり考えずに飲み込んでいた。本当にあれだけは、どうして組み合わせようと思ったのか分からない。
アダムとイブの楽園追放、その理由となった知恵の実が林檎だと言われているが、その実が美味しく調理されないなんて許されないとは思わないか? ないない言っているが、言いたいことは結局、美味しくできないのならそのまま出せば良いということだ。無理に調理しなくても良かったのに、栄養素がどうとか考えているからあのようなものが生まれるのだ。私以外がどう感じていたか覚えていないが、多分似たようなことを考えていたことだろう。林檎そのままで出せ、と。
ふじ、王林、紅玉、津軽、ジョナゴールド、印度、ゴールデンデリシャスなど、林檎の種類は色々あるけれど、私にはその違いがよく分からない。比べてみても、どれがどれだか、はっきりと分からない。きき林檎をしても、正解率は低いだろう。青森の人は、きき林檎をすると見事当てるらしい。私も彼等のように見分けることができるようになりたい。…なりたいが、できるだろうか。まぁ、とにかく、調理されたものは分からなくても、そのまま食べる際は分かるようになってみたいな。それで、「これは◯◯だな」っていうのをやりたい。何だか通ぶれるでしょう?
これからも林檎を食べ続けるし、その際に一番好きな品種を知っていれば、より豊かな林檎生活が送れるだろう。品種の違いが分かれば、自慢もできる。あの組み合わせが理解できない料理も、もしかすれば美味しくできるかもしれない。無謀な挑戦だが、ちょっと頑張ってみようかなと思った。




