089 はなし に ついて
まず最初に断っておきたいが、私は、話を作る上で重要だと思うこと、つまり「創作論」について語ろうというわけではない。お話を作る難しさは知っているけれど、人に話せるような創作の技術を、残念なことに(本当に残念なことに)身に付けていないという理由もある。それは、私が唯一投稿した短編小説を読んでくれた方なら分かっているだろう。近いうちに書き直そうと思う。いや、そういう話をしたいのではなく、今回は「話」という漢字について意見を述べたいのだ。
意見と言うか、気になったこと。なろうで読みたい作品を探している時に、タイトルやあらすじに「~の話し」と書かれているものを見かけたことがある(今日も見かけた)。皆さんはあるだろうか。そこで、「~というおはなし」と書く時に「お話し」と変換していると、私は違和感を感じずにはいられない。この場合は、「お話」が正しいのでは?
「話す」という動詞の終止形が「話す」だが、これとは別に名詞的な使い方として「話」があるのだと私は思っている。活用形を思い出してみると、「話さ・話し・話す・話す・話せ・話せ」となっていたと思うが、どうだったか。気になって調べると、大体のところ合っていたので、これで良しとする。お遊びで、例文のようなものも書いておこう。
<例文>
①未然形-「話さ」
結局、彼は私たちに何も 話さ ず部屋を出て行ってしまった。
②連用形-「話し」
ここでは静かに 話し てください。
③終止形-「話す」
彼が言ったことをそのまま 話す。
④連体形-「話す」
猫が人の言葉を 話す 時、天から雷が落ちるという。
⑤已然形-「話せ」
あの時、妻に対して正直に彼女のことを 話せ ば、私は終わっていただろう。
⑥命令形-「話せ」
おい。彼女って誰のことか、きっちり 話せ。
例文から話を戻すが、どうしてこのような「話し」と「話」をごちゃ混ぜにするような事態になっているのだろう。
理由としては、活用形を考えずにパソコンの予測変換に任せているということが挙げられる。ついつい面倒になって、一番最初に出てきた「話し」が正しいと思い込んでしまうのかもしれない。私も結構やりがちだ。しかし、「~というおはなし」とする時の「はなし」は、名詞(体言)であるので、連用形の「話し」は使えないと思う。辞書には、動詞の意味である「話す」と、名詞の意味である「話」の二つがあった(『新漢語林』)。字義のみ抜粋すると、以下のように書かれている。
◯話
<字義>
①はなし。
㋐会話。談話。㋑ものがたり(物語)。「神話」「実話」
②はな-す。かたる(語)。つげる(告)。「電話」「対話」
③ことば。よいことば。「話言」
(国)はなし。
㋐うわさ。評判。㋑わけ。事情。㋒おとしばなし。落語。
今回の場合、「~というおはなし」は「~という物語」という意味なので、名詞的な「話」を使う方が妥当かなと思う。使い分けずにしておくと、「話し」が動詞の活用なのか名詞なのか、一目で分からない。そういう意味でも、名詞は「話」、動詞は「話し」と書きわけるべきかもしれない。
ところで、方言で「~というハナスがあって」というのをどっかで聞いた気がするが、これは終止形をそのまま使っているのだろうか? それとも名詞的な「話」の「し」が訛って「ス」となったのだろうか? もとからそうなのか訛ったのか、私には真相が分からない。ので、知っている方がいたら連絡を下さい。
「話」と「話し」の違いについて考えたが、「し」があるかどうかでここまで気になってしまうのも何だかなと思ったり思わなかったり…。この辺は、個人の性格も関係していそうだ。思い返してみると、適当に言葉を、文字を使っていそうな気がしてきた。というか、絶対している。推敲の時間をきちんと取るべきだな、そう思いました。
以上、今回は「話」の話でした(これが言いたかっただけだろうと言われても反論できない)。




