085 マッチ に ついて
試合だとか、似合っているとか、炭酸飲料とか、とあるアイドルの話をするわけではない。こんなことを言わないでも、皆さんが最初に浮かんだものは、先端を擦って火をつけるマッチのことだろう。それとも、別のマッチを思い浮かんだりしているのだろうか? それならそれで、別に構わない。だが、今回はお手軽に火をつけることのできるマッチの話をしたい。幸いにして、いくつか話をできそうだから。まぁ、ゆっくり聞いてほしい。
マッチ(火をつける)で私が一番に思い浮かんだのが、アンデルセンの童話『マッチ売りの少女』だ。ちょっと前に、詩をつくるためアンデルセンの童話を読み始めたから、それで記憶に残っていたのかもしれない。ネタバレになるが、あれは結局、少女が死んでしまう話だ。心優しい紳士が手を差し伸べて彼女を救う、何てことはないまま、死が一つの魂を覆いつくす。マッチの火が描き出す幻影は、確かに少女を幸せにしたのだろう。だが、それも火が付いている間だけである。マッチの火が消えてしまえば、終わりを迎える。売り物がマッチである時点で、結末は暗示されていたのではないだろうか。火は命の灯火を連想させるから。
悲しい話の後に思い浮かんだのは、マッチ本体ではなく箱のことだった。マッチは、マッチ箱に詰め込まれている。気をつけないと湿気て火が付かなくなってしまうが、それは今関係ない。重要なのは、箱に描かれている絵である。あれをコレクションにしている人はいるだろうか。私は何故だか昨日、唐突に集めてみたくなってしまった。一過性のものだからすぐに興味をなくすかもしれない。しかし、思い返してみると、マッチ箱の絵は中々面白かった。結構な種類があるから、集めると面白いと思う。
一番最初にマッチを見たのがいつなのか、もう覚えていないけれど、場所は多分、仏壇の前だったと思う。蝋燭に火をつけるために使ったのを見たのが初めだろう。その時の箱の絵は、残念ながら覚えていない。象とかが描かれていたのかも。今はもう、チャッカマンが広まっているから、マッチを使う人は少ないのかもしれない。湿気てつかないなんてハプニングは起こらない。そう、ついついマッチはその存在を忘れてしまう。たまに確認しようとか思わない。でも、擦って火をつけるという行為は、中々楽しい。夢中になる。
小学生の頃だったかそれとも中学生の頃だったか、理科の実験でマッチを使うことがあった。アルコールランプに火をつけるためマッチを使うのだ。マッチの膨らんだ先端を、シュッと擦る瞬間がたまらなかった。一回で上手くつけられると、何だか嬉しかったことを覚えている(たまに何回も擦らないと火がつかなくてイラッとすることもあったけれど)。何故あんなに嬉しかったのだろう。ただ火がついただけなのに。そして、何故何度も火をつけたくなるのだろう。一度マッチを擦る度に、二、三回さらに火をつけたくなる。理由も無いのにね。
過去を思い出していると、次は最近の記憶が浮かんできた。『スカイ・クロラ』という物語に、マッチを使うシーンがある。それも何度か。主人公の函南が煙草を吸う時にマッチを使うからだろう。別に、マッチを使うこと自体は特別じゃない。いや、ライターではなくマッチであるところに、何か意味があるのだろうけれど。『マッチ売りの少女』と同じような感じかな。函南は煙草に火をつけた後、マッチを必ず折る。その行為も何だか、意味がありそうで、私の記憶に残っていた。
こうしてマッチのことを思い出しているが、そういえば最後にマッチを使った日はいつだろう。私は煙草を吸わないし、仏壇にはチャッカマンを使うから、そう考えると最近はマッチを使っていない。あの、シュッと擦る感覚を忘れかけている。忘れても不具合は起こらないだろうが、最近していないとなると、無性にやりたくなる。特に理由もなく、火をつけたくなる。放火したいとか、そんな犯罪めいたことに興味は無い。ただ、火をつけたいのだ。そして、じっと眺めていたい。消えるまで、ずっと。
昨日知った、ササノマリイ (sasanomaly) さんの曲である『戯言スピーカー』のPVにもマッチがいっぱい出てくるよ。曲と相まってノスタルジックな気分になった。




