051 煽り文句 に ついて
「煽り文句」で一語とみなすことにします。
「ピッチャーびびってる、へいへいへい」という煽り文句が頭の中をエンドレスで流れていた。鬱陶しくてかなわなかった。皆さんは聞いたことがあるだろうか? 別に聞いたことがなくてもいいんだけど。でも、言われるとついついカチンとくる言葉ってあるよね。神経を逆なでされるというか、何というか。
「煽り」という言葉も「文句」と言う言葉も、どちらも嫌な感じがするのは何故だろう。いや、「文句」は別に嫌な感じがそれほどしない。「文句」について真っ先に思い浮かぶのは、「誰かに不満を言う」ような状況だけど、しかし、ただ単に広告などに書かれている文などを「文句」と言うこともあるから、そこまで嫌と言うわけではない。「謳い文句」って言うし。
「文句」は言葉の後ろにあるってことから、ただ付き添っているだけみたいな感じだ。重要なのは前方にあるもので、今回は「煽り」がそれにあたる。「煽る」「煽動」「煽情」などなど、「煽」を使った言葉を三つ挙げてみたが、どことなく漂う、誰かを馬鹿にしているような雰囲気とエロティックな雰囲気。やっぱり、「煽り」という語句が私たちに与えるイメージの方が「文句」よりも強いようだ。
それぞれの語句を辞書で調べてみると以下のような結果になる。
※「煽り」に関しては「煽る」という動詞の連用形なので「煽る」の方を載せている。
※使用辞書は『新明解国語辞典 第六版』(三省堂)である。
◯あお・る【煽る】
㈠(他五)
㊀風を起こして、火の勢いを強める。「火を―」
㊁強い風が吹いて、物をぱたぱた言わせる。「強風に煽られる」
㊂〔むち打ったりして〕馬を急がせる。
㊃そそのかしたり、何らかの手段を用いたりして、ある状態が起こるように仕向ける。「△民衆(競争心・景気・危機感・世論)を―」
㊄〔自分に有利になるように〕低価格で大量に売買して、相場を狂わす。
㊅〔カメラを〕広角レンズで、下から上に向けて写す。
㈡(自五)
風を受けて揺れ動く。「風邪で戸があおっている」[→煽り㈡]
◯もんく【文句】
㊀幾つかの語が続いたもの。語句。「―を練る/謳い―・殺し―」
㊁不平・不満・不賛成などの言い分。「―があったら何なりと言いたまえ/―の言いよう(つけよう)が無い/―をつける」
運用)㊁は、「文句があるか」などの形で、相手の不平・不満や反駁などを封じようとする言葉としてもちいられることがある。例、「お前などの指図を受ける気はない。何か文句あるか」
私の場合、「煽る」は、㈠㊃のイメージが強いらしい。火の勢いを強めるために風を起こしたりしないし、馬も身近にいない。相場を狂わせるほど買い物をしないし、カメラを持っていない。携帯の機能でもあんまり使わない方だ。㈡㊁が結構身近なことかもしれないが、人間、良い事と悪い事の両方があったら、どうも悪い事を先に連想するようで、そそのかしたり仕向けたりする意味が真っ先に思い浮かんでしまうのである。まぁ、私の場合は、だが。
対して「文句」はと言うと、こちらにもマイナスイメージはあるけれども、㊀の方に、ただ単に”語句”だという説明がある。やはり、マイナスという色が付く前は、まっさらな状態なのだ。白だ、雪原だ。そこを通ろうとするから、足跡が残って土が混ざり、汚れていくのだろう。「不平・不満・不賛成などの言い分」って、面倒な物をまとめて大安売りというような感じだ。あくまで印象だが。それらが正の方向で使われているのなら、問題ないのだろうけれどね。
こんな風になったが、今回の用例は面白かった。辞書で見るまで思い出せなかったが、「殺し文句」というのもあったね。実際に命を奪うわけではないから、口に出しやすくはあるけれど、新ためて考えると凄い言葉だよね、「殺し文句」って。「煽り文句」よりインパクトあるよ。




