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少女憑  作者: こえがなう
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幕開け

(れい)は先を歩く主人に問いかける。

「でも、華純(かすみ)さんの仇を探すと言っても手がかりが無いと難しいですよね。」


顔に陰りを出しながら(あおい)が言う。

永富(とみなが)宗司(そうじ)。」


「永富、宗司?誰ですかそれ?」


澪の当然の疑問に葬が答える。

「華純の記憶で聞いた名だ。私はその名に覚えがある。今や世界の軍事兵器開発の7割を担い、各地の戦場へ実際に派兵も行っている日本の暗部。永富重工の会長だよ。」


「え、待ってください。もしその永富重工の会長が華純さんを殺した張本人だとして、彼は明治時代の人間ですよ?平成の今を生きているわけが...」


「そうだな。私もそこだけが疑問だ。同姓同名の人物である可能性は否定出来ない。しかし永富宗司にはある噂があるんだ。」


「噂?」


「永富重工の設立者、永富宗司は不老の存在であるという噂だ。永富重工設立から今まで会長が代替わりしたという話を聞かない為にそんな噂が流れている。しかし永富重工で働く者は実際に永富宗司を見たことのない者が多い。本当に永富宗司が生きているのかは不明だ。」


葬と澪の隣を歩いていた華純が言う。

『 その噂の真偽をこれから確かめに行こうという訳じゃな?』


「ああ、永富重工には参叡(さんえい)と呼ばれる三人の側近がいるらしい。その内の一人に接触出来れば、永富宗司について何か分かるかもしれない。」


不安気な澪が言葉を漏らす。

「でもどうやってそんな偉い人に接触するんですか?永富重工の知り合いなんて一人もいませんよ?」


葬は得意げに返す。

「式神を使うのさ。」


「式神なんて使えるんですか!?葬さん一体何者...」


「私の実家は代々陰陽師の家系でね。華純をこの世に顕現させられているのも式神を器にしているからなのさ。」


不満げに華純は言う。

『 確かに便利な力ではあるが、妾にとってこの器は些か窮屈じゃ...やはり人間の体が1番良いのう。』


そんな華純を無視して葬は続ける。

「作戦を説明するぞ。これから帰宅途中の永富重工の社員に式神を憑け、翌日会社に潜入する。そして平社員から重役へと式神を移動させ、参叡まで辿り着かせる。式神の見たもの聞いたものは私達も共有出来るから永富(とみなが)宗司(そうじ)について、会社内で何か情報を掴ませるんだ。」


「なるほど〜!で、この目の前の大きなビルと隣のこれまた大きな工場が永富重工の本社ですか...」


『 宗司め、ずいぶんと偉くなったものよ。必ずこの手で殺してやるからの...』


葬は式神を用意する。

「出てきたな、あの男にこの式神を付けるぞ。」

葬の放った式神は男の背にくっつき消える。


「これで式神から情報が来るまで待てばいいんですね?」


「ああ、上手く行けば永富宗司の情報を得られるだろう。さて、今日はこのまま帰ろう。バカンスに行ってた馬鹿共も帰ってくるみたいだしな。」


澪はまた不安気な顔をする。

「襲さん達とは別の憑人の人達ですか?憑議の日に勝手にバカンスに行っちゃうような人達と仲良く出来るかなぁ...うぅ、緊張する...」


葬は優しく言う。

「大丈夫だ澪。言っただろう?憑人は家族みたいなものさ。それに襲達とは違ってまた楽しい奴らだよ。」


『 わ、妾も緊張してきたぞ...大丈夫か?除霊とかされぬか?妾は盛り塩とかされたら鳥肌で死んでしまうタイプじゃぞ?』


苦笑しながら葬は答える。

「そんな事しないよ。ていうか盛り塩嫌いなのか...」


決意の澪が言う。

「か、華純さんが除霊されそうになったら、わ、私が守ってあげるからね!」


「まったく、馬鹿な事言ってないで早く帰るぞ。」


「はーい!」


『うむ。』


家路につく。

これが世界の命運を左右する仕事になるとも知らず。

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