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少女憑  作者: こえがなう
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憑議

(れい)には、まず憑議(びょうぎ)について教えるべきだな。」

(あおい)の言葉に澪がコクリと頷いて返す。


憑議(びょうぎ)とは、分かりやすく説明すると憑人(びょうと)の定例報告会のようなものだ。皆で集まる機会を設けておけば、誰が、今、どのような状態か、を知ることが出来るし、コミュニケーションを取っておけば仕事で万が一のことがあった時の連携などもしやすいからな。」


葬の説明を聞き、澪が疑問を投げかける。

「なるほど、憑議(びょうぎ)については分かりました。でも仕事って、私達 憑人(びょうと)は誰かから雇われているんですか?」


葬が答える。

「いや、便宜上仕事と言っているだけで雇われている訳では無い。憑人(びょうと)にクライアントはほとんどいないんだ。」


「じゃあ私達がどんなに頑張っても報酬は無いんですか!?」

金の話に目の色を変えて澪が叫ぶ。


「そうだ。生きる金が欲しければ俺のように社会に貢献するんだな。」

スーツに着けた弁護士バッチを見せびらかすように手で弄りながら(かさね)が言う。


「俺は襲先輩の家に居候させてもらってるから何もしなくても生きていけるけどね~。」


「私も葬さんの家にお世話になってるから働かなくてもいいもん!」

余裕を見せるリーゼに張り合うかのように澪がそう返す。


「そこは大きな声で自慢出来ることでは無いけどな~。」

苦笑いをしながら懐芽(なつめ)が言う。


「...話を元に戻すが、襲。何か新しい仕事はあったか?」


「ああ、ちょうど昨日。人間の娯楽のために親と共に殺された哀れな魂の復讐をしてきたぐらいだな。派手さは無いが、完遂したよ。」

葬の問いかけに、そう簡潔に答えた襲が何かを思い出したかのように続けた。


「そういえば、仕事を終えて家に帰ってくる途中に妙な魂を見かけたぞ。」


「妙な魂...?」

澪が興味津々という様子で聞き返す。


「お前は未練の魂が何色か知っているか?」


「はい、普通の魂が白。私達 憑人(びょうと)が憑かせられる未練の魂が黒ですよね?葬さんに習いました。」


「そうだ。そして俺が見た妙な魂の色は血のような(あか)だった。見た感じだと少女の魂のようだが、あんな色の魂を俺は見たことがない。」


襲の言葉を聞き、葬の顔つきが変わる。

(あか)...私もその魂には興味がある。今夜にでも接触してみるか...」


「俺は家でゴロゴロしてたから今回は仕事なーしー!」


「うちも今回はお休みしてたわ〜。襲はんは働き者やな~。」

リーゼと懐芽は揃ってサボリを白状した。


「...お前達は前回もサボっていただろう。まったく、懐芽は良いとしてリーゼ。お前は通算五連続欠勤だ。お前が大学生だと必修科目落単留年コースまっしぐらだぞ。」


「なんだよ葬ぃ!なんで懐芽は良くて俺だけそんなに怒られなくちゃいけないんだよ〜!!横暴だ!パワハラだ!!」


「サボり癖がついてるからちゃうか~?葬ちゃん、ごめんなぁ。」


喚くリーゼを見ながら葬は厳しく言う。

「いいか、憑人の仕事は私達しか出来ない大切な仕事であり、内容によっては死と隣り合わせのものなんだ。それにな...」


「わ〜かってるよ~!もうそれ百万回は聞いた!!」

葬の言葉をうんざりした顔でリーゼが遮る。


「うちからも厳し〜く言うとくから、葬ちゃん、堪忍したってや~。」


「俺からもキツくお仕置きをしておこう。」


「…はぁ、分かった。しっかり言い聞かせておいてくれ。では、妙な魂の件もあるし、今回の憑議はこれで終わろう。」

懐芽と襲に諭される形で葬は憑議の閉会を宣言した。


「帰るぞリーゼ、今夜の風呂掃除とトイレ掃除はお前だ。」


「えぇ!?待って待ってそれは辛い!」

襲に引っ張られるようにリーゼは慌ただしく外へ出る。


「うちも帰ってご飯食べるわ〜。澪ちゃん、改めてこれからよろしくな~。」


「はい!懐芽さん、よろしくお願いします!...私達も家に戻りますか?葬さん。」


「いや、今日はこのまま残業だ。」

少しの笑みを浮かばせ、葬はそう答えた。

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