発見!おれの天使!
俺は今日から高校生だ。
まずは、おれの自己紹介から始めよう。
名前は、鷲崎和也
見た目は普通の男子高生。イケメンでもなければブサイクでもない。
中学のときの部活は陸上部だ。
趣味は走ること、あと、アイドルが好きだ。
うわ、こいつアイドルヲタクかよ、って思った人もいるのではないかもしれないがよく考えてみよう。日本を動かしてるのは政治家ではヲタクだ。
さて、その話はおいておいて、今日から高校生になる俺は校門に立って写真を撮っている。
開共学園と言う、学校だ。
入学式とかかれた看板のようなものの前には少し大きめの制服を着た入学生の行列ができている。
定番ってやつだ。
ここで親子で立って写真を撮るのが定番になっている。
そして、このまま、講堂へとむかい、入学式がいよいよ始まる。
起立、礼、国歌斉唱。着席。
校歌紹介なるものもあった。校内合唱コンクールの昨年度の優勝クラスが歌っていた。
そして、校長先生の話だ。
校長先生の話というのは長いのが定番だ。とにかく長い。もしかしたらそんなに長くは話していないのかもしれないがとてもとても長く感じるのが校長の話だ。
俺たちは起立し、礼をし、着席する。
校長が話を始める
「えー、入学生な皆さん。三年間頑張ってください。以上」
えっ
みじか。
俺たちは起立、とかをする。
そして、入学式が終わり、それぞれの教室へと向かう。
この入学式くらいからおれの安定した定番通りに過ごすはずの高校生活は狂っていった。
断言する。
こんな生活を送ってるのは俺だけだ。
教室にはいると出席番号順に座らされる。
そして、俺達の担任である佐々木先生(男性、独身。俗に言う、熱血)が明日までに自己紹介を考えてくるようにと説明して、今日の学校は終わった。
俺は、早々と家に帰り、自己紹介を考えた。
自己紹介とは今後の後攻生活を決める重要な運命のわけ目だ。
特に俺にとってはアイドルヲタクということを隠すか晒すかで大分変わってくる。
幸い、出席番号は後ろから三番目。
ならば前の人の言ってることをきいて、あの教室の雰囲気を感じとり、その場で変えればいいさ。
よし。AとBの二つを考えていこう。
まず、A
「神山中学出身の鷲崎和也です。カズヤって読んでください。趣味は走ること、あと、アイドルグループのsweet berryのゆいちゃんが好きです!よろしくお願いします!」
続いてB
「神山中学出身の鷲崎和也です。カズヤって読んでください!趣味は走ることで土日は土手を走ってます!陸上部にはいるつもりです!よろしくお願いします!」
よし!これで完璧だ。
じゃ、sweet berryのライブのDVD見て、寝ますか。
ゆいちゃんの天使の笑顔と歌声を聴いた。
ちなみにゆいちゃんは同い年。sweet berry自体は日本でもそこそこ有名なアイドルグループで、今度、ツアーが決まっている。
ゆいちゃんはそこのセンターを飾っていて、ゆいちゃんだけなら知ってるという人もいる。
ライブのときのあの揺れる長い黒髪が僕のお気に入りであった。
ストレートヘアー。素晴らしい。
そして僕は寝た。
翌日を迎える。
この日が人生を変える日になるとは思いもよらなかった。
僕は見つけたのだ。僕の天使を。
宿題でいわれた通り、自己紹介をしていく。
定番通りに出席番号の最初から自己紹介をしていく。
僕は29番だからそんなにはやくない。
みんなの自己紹介を聞いて、プランAかBかを考えている。
この教室にはオタクがいなさそうなので自分のキャラを深めにいくか、それとも周りに馴染むかのどちらかだ。
しかし、次の自己紹介でこの悩みはなくなる。
僕はプランBを強制的に選ばされるのだ。
27番の人の自己紹介がはじまった。
「山川結愛。趣味はダンス、歌とかです。部活はまだ考え中です。よろしくお願いします」
僕は耳を疑った。
どこかで聞き覚えのある、澄んだ声。
僕の席の二つ前にいるから顔までは見えなかったがあの後ろ姿。あの長い黒髪のストレートヘアー。
間違いない。あれは、僕が昨日DVDで見たやつだ。
山川結愛。
ほぼ決定だろう。
彼女は僕の天使。ゆいちゃんだ。
「おい、鷲崎!」
「あ、はい!」
「はやく、自己紹介しろ」
佐々木先生が大きめの声を出した。
考え事をしているうちに自己紹介は進んでいた。
そして僕はプランBを選択した。
そのとき、彼女はこっちを振り向いた。
顔を確認できるチャンスだ。
自己紹介をしながら、チラリと顔を確認する。
メガネをかけていた。黒縁の。僕の知ってるゆいちゃんは裸眼だ。まさか、伊達眼鏡か?
そんなことを考えながらおれの自己紹介は終わり、佐々木先生が校則の説明を始める。
間違いない。彼女は僕の天使だ。